2018年10月31日

菅沼薫さんに聞く、今の自分に合う美容法(13)

オーガニック化粧品だから「いい」は間違い

今回は、前回の「無添加」に引き続き、近年の安心・安全志向で注目が高まっている「オーガニック化粧品」がテーマです。2018年につくられたオーガニック化粧品の基準とともに、菅沼薫さんが解説します。

オーガニック化粧品って、どんな化粧品?

前回の「無添加化粧品なら敏感肌でも安心、これ本当?」と同様に、なんとなく肌にやさしそうなイメージのオーガニック化粧品。ですがその根拠や、オーガニック化粧品の定義を聞かれて答えられる人はいないのではないでしょうか。

そもそもオーガニック(organic)とは、「有機体の」あるいは「有機」という意味。一般的には、化学合成農薬や化学肥料に頼らず有機肥料を用いた栽培農法のことを意味し、この栽培農法でつくられた農作物を、オーガニックといっています。

この農作物うち、農林水産省が定めた規格に合った栽培農法でつくられた農作物は「有機JAS認定」され、「有機JASマーク」をつけることができます。野菜などに貼ってあるこのマークをご覧になったことがある方も多いでしょう。

JASマーク

ですがこれはあくまでも食品の認定の話。

化粧品におけるオーガニックには、法的に明確な定義や統一基準が定められていません。

そのため、オーガニックで栽培された原料を使用した化粧品はすべてオーガニック化粧品ということができます。オーガニックで栽培された原料以外に、たとえば石油由来の成分などが入っていても、オーガニック化粧品と表現できるのです。

食品のイメージのせいか、オーガニック化粧品も安心・安全と思っている人が多いようですが、安全性や使用効果が一般的な化粧品より優れているか、その品質や程度は定かではありません。
また、一般的な化粧品との違いも明確ではなく、オーガニック化粧品といっても製品ごとにその内容は異なっているのが現状です。

つまり、オーガニック栽培した植物から抽出したエキスや、自然・天然の原料を使用している化粧品だからといって、安全性や効果などが担保されているという考えは間違い。そのオーガニック化粧品が自分の肌に安全かどうかは、一般的な化粧品と同じように、自分の肌で試して確認するしかないのです。
 

オーガニック化粧品の基準

「よさそう」というイメージだけが先行してしまい、実際のところ、製品にどのようなオーガニックの成分がどの程度含まれているかわかりにくかったオーガニック化粧品。その商品に記されたオーガニックの信憑性をどのように判断するかは、消費者に委ねられていました。

ですが、その商品選びの参考になる日本初の基準が今年の4月に発表されました。それが「ISO 16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」

日本化粧品工業連合会が定めた業界基準ではありますが、国際標準化機構ISO( International Organization for Standardization、以下ISO)が制定した、ナチュラルおよびオーガニック化粧品に関する日本で初めてのガイドラインで、公的な国際基準「ISO 16128」(*)に準じたものになっています。

このガイドラインに則ると、自然・オーガニック化粧品は、使用原料の由来や処理方法(化学合成過程の有無等)によって、自然指数、自然由来指数、オーガニック指数、オーガニック由来指数次の4つに分類され、その原料の含有量が表示されるようになります。

たとえば、
「自然指数 92%(水80%を含む) ISO 16128準拠」
「オーガニック指数 20%(水を含まない) ISO 16128準拠」
という表示です。

一目で自然・オーガニックの成分がどの程度含まれているかがわかり、便利ですよね。また、この表示があれば、オーガニック=天然植物100%というような誤解もなくなるでしょう。

法律で義務付けられた表示ではないので、すべてのオーガニック化粧品にこの表示がされるとは限りませんが、商品選びの参考にするとよいでしょう。

ただし、この表示は日本化粧品工業連合会やISOが認証や保証するものではなく、表記の有無とその信憑性(本当に基準に合ったものか)は、メーカーのモラルに委ねられています。また、この表示はあくまでも自然やオーガニックの成分がどの程度含まれているかを示したもの。その化粧品が自然化粧品またはオーガニック化粧品かどうかを判断するものでも、製品の安全性や効果効能を示すものでもないので、誤解しないでくださいね。

ドイツやイギリス、フランスなど諸外国では、民間団体の認証機関がオーガニック化粧品の認定を行っていました。日本のガイドラインも公的なものではありません。

ですが、各国が公的な国際基準「ISO 16128」に準じた基準を設けて表示を行うことで、世界中のオーガニック化粧品を同一基準で比較できるようになります。まだ制定されて日が浅い基準ですが、今後の普及に期待したいですね。
 

天然・自然素材が肌に低刺激とは限らない

オーガニック化粧品に限らず、化粧品に配合された自然および由来成分すべてが、肌に低刺激とは限らないことも忘れないでください。人によっては、特定の植物に触れることでカブレなどの皮膚トラブルを生じることがあるように、素材によっては肌に刺激となるものもあります。特にアレルギーなどのある人は、天然・自然素材が何なのかを確認するようにしましょう。

オーガニックだから肌によさそうで安心、というイメージで化粧品を選ぶのはちょっと危険。自然・植物だから、有機だからといった言葉や印象に惑わされてはいけません。

商品の中身をしっかり確認し、肌に合うか試してから使うようにしてくださいね。

次回、(14)エイジングケアには、年齢化粧品を使うべき

取材・文=田中優子


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菅沼 薫
菅沼 薫

ビューティ&ライフ サイエンティスト、武庫川女子大学客員教授、sukai美科学研究所代表。日本顔学会会長をはじめ、化粧品成分検定協会理事、日本香粧品学会学術委員などを務める。美容雑誌「VOCE」における化粧品比較実験を長年手掛ける。化粧品と肌のスペシャリストとしてメディアでも活躍中。

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