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すっぴん
常に美しさを気にしている方、こまめにお肌のお手入れをされている方、そういう方が多いと思いますが、私は若い頃からいつもすっぴん。
夫がプロポーズをした時のセリフ「化粧をしていないのでそこが気に入った」と。
若い頃からどうにも顔に何かを塗ることが耐えられない、おでこに前髪がかかっても我慢ができない性分です。
もちろん季節ごとに日焼け止めやらクリームを購入するのです、とりあえず人並みに。しかし、顔に塗ったら不快感が増してきて、せいぜい20分もすると洗面所に直行し、石鹸で顔をごしごし洗ってしまいます。毎年、使いもしないスキンケア商品を捨てる羽目になります。
すっぴんで暮らすと当然シミはできますが、あまり気にもせずに暮らしています。
そして何より便利なのは、すっぴん暮らしでは顔を洗っても、冬でも夏でも顔がつっぱるということはまるでありません。
洗顔後少し経つと、自然にクリームっぽく潤ってくるのです。人間の体は良くできているもので、与えられなければ自ら再生して潤ってくるのですね。そのためか、顔に日焼けによるシミはあってもしわはほとんどありません。
母の鏡台
小さな母の鏡台の中にはいつも、〇〇堂の化粧水とクリームの瓶が入っていました。子供の頃、時折気まぐれでおねだりして、それを少し顔に塗ってもらうと急に大人になったような気がして、ほんわかと香りをクンクン鼻の前で吸い込んだものでした。
空になった緑の空き瓶を窓辺に置いて日に透かして、映る影を指でなぞって楽しんだ思い出があります。
今になって考えると、現代のように化粧品の種類も多くはなかったのではないでしょうか。
覚えているものは、ももの花というピンクのクリーム、鏡付きのコンパクトに入ったおしろい、そして化粧水、乳液、クリーム類……それくらいだったのではないでしょうか。
そういえば、ももの花も鏡台の引き出しに入っていました。冬の寒い日の朝、登校前の私の手にすり込んでくれたのを覚えています。
化粧水を買ってみる
数年前に買った、北海道の温泉水からできているという化粧水の瓶がやっと空になりました。顔につけることはほとんどなかったのですが、足のすねなどに使っていました。
化粧品売り場などにはあまり縁がない私ですが、○○堂の化粧水を手に取ってみました。母の使っていたあの緑色の瓶です。しかし、現在は瓶ではなく同じ色のプラステック容器になっていましたが。
この化粧水を購入した際に、売り場レジの方が小首をかしげて「いつもこれをお使いですか」と聞いてきました。「いいえ、そうではないですけど、つい昔からあるから懐かしくて」と答えました。
するとその方は、「少しお待ちください、とても良いものがあるので」とブルーの細長いボトルを2つ手に戻ってきました。私の手の甲に少し垂らして「いかがですか、たっぷり潤いますよ」と言うのですが、私は「たっぷり潤っては困るのです」と答え、すっぴんでいることを話しました。
怪訝な顔で「冬もですか」と言います。事情を話すと「へぇ~、そういう方は初めてですと」言いつつ、やっとレジを打ってくれました。
今朝は洗顔後に、緑の瓶を開けて顔につけてみました。その時、ふとこれは母の香りだと気が付きました。
今はもういない母が、隣で笑っているような気がしました。
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