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- 人生にイエスと言い続けたレニ・リーフェンシュタール
「ハルメク」でエッセイ講座などを担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、映画監督・写真家の「レニ・リーフェンシュタール」さん。時代に翻弄されても、やるべきことを見つめ、自分にイエスと言う生き方とは…。
好きな先輩「レニ・リーフェンシュタール」さん
1902-2003年 映画監督・写真家
ベルリン生まれ。舞踊家、女優を経て映画監督に。ヒトラーに見込まれ、「意志の勝利」で名声を確立。戦後はナチス協力者として批判を浴び、新天地を求めてアフリカへ。71歳でダイビングを始め、水中写真家に。
自分のすべきことだけを見つける強い眼差し
自分のエネルギー不足を突きつけられるようなとき、ふと目の前にレニ・リーフェンシュタールの面影があらわれ、何も云(い)わずにこちらを見ます。自分がするべきことだけをみつめる、つよい目で。
「人生に『イエス!』と云う」これこそは、1902年ベルリンに生まれ、2003年101歳で死去するまでの生涯を通じてこの女の内に燃えつづけた信念です。
第一次世界大戦、ヒトラーの台頭、ベルリン・オリンピック、第二次世界大戦、ニュルンベルク裁判を身近に目撃したレニ・リーフェンシュタール(以下レニ)とは何者か。
ダンサー。映画女優。記録映画の監督。芸術のために最善の道を突き進んだと自ら云いきり、世間をもそれにちがいない、と納得させるだけの女性です。
しかしその納得のなかには、いまだ激しい批判が含まれています。ヒトラーからナチ党大会の記録映画の製作を依頼され「意志の勝利」を完成させることとなったレニ。結果としてユダヤ人迫害や武力による独裁という悪魔の手をとることとなったのが彼女の最大の不幸であり、罪でした。
戦後、軍事裁判の法廷において、レニもヒトラーや宣伝相ゲッペルスとの関係について追及されます。レニについては、「特定の犯罪としては無罪だが、同調者」とされました。こうして同調者はその後、ふたたび自らの芸術活動に戻ることができたのです。
重荷を背負いながら自分にイエス!と言い続ける人生
わたし自身がレニを認識したのは1995年、記録映画「レニ」(1993年/監督レイ・ミュラー)が日本で公開されたときのこと。当時90歳だったレニが監督の問いかけに淡々と、いや時に落ち着きを失いながら答える姿、映画撮影のため海にもぐるブルーの潜水服姿が脳裏に刻みこまれました。
ですから、第三帝国と関わりを持ち同調者となったという過去の出来事より、年齢を超えてエネルギッシュに活動をつづける生き方が印象に残っています。
人生には、時として何かにからめとられ、どうすることもできなくなる宿命的なめぐり合わせがもたらされます。
死後なお、改悛(かいしゅん)しない女との評価からのがれられないレニを庇(かば)うのではありません。そうではないけれど、重荷を背負いながらも、自分の人生にイエス!と云うひとの面影をわたしは胸に抱いています。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2017年10月号を再編集し、掲載しています。
>>「レニ・リーフェンシュタール」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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