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- 落合恵子さん「する・しない」選択で人生を豊かにする
人生100年時代、50代はまだまだ折り返し地点です。人生の先輩はどう今を生きているのでしょうか。1976年に子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を開設し、70代後半になる作家の落合恵子さん。人生後半で“すること”“しないこと”とは?
落合恵子(おちあい・けいこ)さん
1945(昭和20)年、栃木県生まれ。67年、文化放送に入社。74年に退社し、本格的な執筆活動を開始。76年、東京に子どもの本の専門店「クレヨンハウス」開設。女性の本、安全安心な玩具なども扱うようになり、オーガニックレストランを併設。91年、大阪店開設。
著書に『決定版 母に歌う子守唄 介護、そして見送ったあとに』『泣きかたを忘れていた』他。昨年、クレヨンハウス45周年記念に絵本『あの湖あの家におきたこと』『悲しみのゴリラ』を刊行。
人生後半を豊かにする「自前の生き方」
※インタビューは2021年1月に行いました。
2020年から続くコロナ禍で、私たちはあらためて、昨日が今日になり、今日が明日につながることが、なんてかけがえのないことなのか気付いたのではないでしょうか。
そして、こうした切迫した時代においては、考え方も生き方も“自前”でなきゃいけないと、なおさら感じるようになりました。私の好きな言葉に「I can’t live your life」があります。「あなたを生きられるのはあなただけ」という意味ですが、少し深めると、一人一人が自前の生き方をしましょうという意味にも解釈できます。
特に50代60代の大人世代は、年を重ねて失っていくことが多い一方で、限られた日々をどう生きるかを自分に問いかけ、ある意味、生きる本質に素手で触れることのできる年代です。だからこそ、何かを積極的に「する」という選択と同時に、積極的に「しない」という選択を自前でどれだけできるか……それがこの先の豊かさに結びつくのではないかと思うのです。
私自身は、“多くはいらない”という選択をするようになりました。深く丁寧に暮らすために、むしろ少ない方がいいと考えるようになったのです。ここから紹介する私の「すること・しないこと」の選択が、何か少しでもあなたのヒントになればうれしいです。
すること1:手仕事をする
小さな庭で土いじりをしたり、料理をしたり……。手仕事をしているときは、私にとって一番楽しい時間であり、いい意味で頭を真っ白にできる時間です。
このコロナ禍で、クレヨンハウスのスタッフたちのことや先のことをあれこれ考えると、なかなか肩の力を抜くことができません。そんなとき、空豆をさやから出したり、庭に種をまいたり、花殻を摘んだりしていると、頭の中に気持ちよく風の通り道ができて、“まあ、いいや。がんばってみよう”という気持ちになれるんです。
すること2:元旦に遺書を書く
毎年1月1日は、書き初めとして遺書を書きます。きっかけは30代後半と40代後半に大事な友人を亡くしたことでした。
彼女たちから“最期はこうありたい”という話を私はいろいろ聞いていました。にもかかわらず、文章として残っていなかったため、親族でもない私は、彼女たちの意志をご家族にうまく伝えることができず、苦しい思いをしたのです。だから、せめて私はという思いで遺書を書いています。彼女たちからの宿題ですね。
いざというとき、周りの人を苦しめたくないので、「こういう状況になったら延命治療はお断りします」といったことを明文化しています。やはり現代医学というのは、治療して回復させることを目的としていますから、医療従事者に向けても、「回復の見込みがないとしたら無理をしないでください。これは私の選択ですから、どうか悩まないでください」という一文を添えています。
すること3:悲しみを抱きしめる
母の死に、私はとても苦しみました。医療に怒りを感じたり、介護で疲れてしまったりいろいろあって、大好きな母が亡くなったとき、優しい悲しみに出合いたかったのに、怒りや無念の悲しみが湧いて苦しかったのです。
そんなとき大先輩の女性が「それだけ愛する人と出会えて、母と呼べたことは幸せなのよ」とおっしゃいました。その言葉が私の中にすーっと入っていき、やがて“悲しんでいいんだ。この悲しみをちゃんと抱きしめてあげよう”と思うようになりました。今は悲しみすらも、いとおしいという気持ちです。
しないこと1:物を増やさない
私は可能な限り物を増やさないように心掛けています。でも残念なことに、暮らしを営んでいると、どうしても物は増えてしまうんですね。掃除はまとめてやる、と決め込んでいるずぼらな私は、年に1回、思い切って物を処分します。
写真や書類は迷わずシュレッダーに。服やアクセサリー類は、知人や若い人たちに差し上げたりしています。自分でも笑ってしまうんですが、プレゼントした服を若い人が着てくれると、私よりはるかに似合っていて悔しいなと思います(笑)。
しないこと2:白髪を染めない
白髪染めをやめたのは、今から20年くらい前。まだグレイヘアという言葉もない時代でした。当時、私は母の介護をしていて、染めるのが面倒だったというのが理由の一つ。もう一つは、自然に逆らってもしょうがないじゃないって思ったんですね。やっぱり人間よりも自然の方が強いわけですから。
その当時は「あなたの白髪が、お母さまの介護が大変だということをいかにも物語っているから、染めなさい」と、ずいぶん周りの人に言われました。知らない美容師さんから「染めてあげます」と手紙をいただいたこともあります。それでも、“私はもう染めない、白髪でいこう”と決めたわけです。
髪が白くなると、黒い服でも軽やかに見えるし、白い服はより明るく見えるという発見もあり、面白いですね。ある年代になり、ある状況にたどり着かないとわからないことが確かにあって、それは獲得なのだと思います。
しないこと3:電話番号を消さない
2020年、いよいよ私も携帯電話をガラケーからスマホに変えました。そのとき、大事な電話帳データは全部スマホに移してもらいました。データの中には、すでに亡くなった方の電話番号がたくさんありますが、私は消しません。その番号を押すと、その人の声が返ってくるような気がして消せないんです。
この年齢になると、残された時間はそんなに多くありません。それに私は人と付き合うとなったら、最後までしっかり付き合いたいと思うので、自分のキャパシティを考えると、これ以上、人間関係を広げられないなと思うようになりました。
人ってとても複雑でありつつ、とてもシンプルで、やっぱり温かいものがほしいし、誠実なもの、確かなものに出会いたいのだと思います。そう考えたとき、新たに知り合って、温かく誠実な人間関係をまた一からつくる余白のようなものが、私に残されているのかわかりません。
だから、スマホの電話帳からすでにいない人の番号を消せない一方で、新しく知った番号を登録することはもうないかもしれないと思うのです。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部) 撮影=島崎信一
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年3月号を再編集、掲載しています。
落合恵子さんの近著2冊
『明るい覚悟 こんな時代に』
エッセイ『明るい覚悟 こんな時代に』(朝日新聞出版刊/1650円)。「老い」は大きな喪失をもたらすけれど、時にこの上ない獲得も運んでくる……。年齢を重ねた落合さんが辿りついた「明るい覚悟」を、とびきりの絵本22冊とともに紹介するエッセー集です。
『わたしたち』
長編小説『わたしたち』(河出書房新社/1870円)。1958年4月、中高一貫教育の女子校・希美(のぞみ)学園で出会った「わたしたち」。13歳になる年から彼女たちが人生の最終ステージを迎える2021年まで、それぞれの人生を果敢に生き抜こうとする「わたし」の物語。
人生を生き抜くヒントを読む!折れない心の作り方
50代は人生の折り返し地点。特に女性は更年期や子どもの独立、会社での立場の変化など、“人生の変化”が訪れる時期です。これまで雑誌ハルメクで掲載したインタビューの中から、樹木希林さんや瀬戸内寂聴さん、元NHKアナウンサーの内多勝康さんなどの、特に「生きるヒント」が詰まったインタビューを厳選してお届けします。
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40歳で終活
いやいやまだまだ人生半ばですよ。一方不意の事故など ゼロではないですからね。病気とかならある程度 覚悟は出来ますけど、事故とか突然ですから。 40歳で終活って早くないですか。自分史とか 半分も書けないです。 https://syukatsulabo.jp/article/6277
締切済み ベストアンサー2020.02.21 -
終活ってどれくらいかかりますか
それこそ生活保護レベルの葬式なら20万を切ります。 高額医療費制度も上限は8万くらいです。 身元保証だって数十万です。 厚生年金の範疇で入れる老人ホームだってあります。 100万あれば御の字じゃないですか。 https://www.osohshiki.jp/
締切済み ベストアンサー2019.05.06 -
親の面倒
ごめんなさい。長文です。 私の両親はまだ元気で経済的にも、身体的にも自立しています。父もとある会社の会社役員として未だに子供達よりも沢山の年収があります。しかしもう70代で、段々と家の事が回らなくなってきました。 2人姉妹の姉は婿養子を取るということで実家の近くに住み、私は高速で3時間位離れた所に住んでいます。私は年に数回しか実家に帰省出来ませんが、その度に(昔の家なのでかなり広いです)家の中や倉庫やプレハブの物置、ベランダに建てられた物置(バーベキュースペースを潰してまで建てたので広いです。)地下の物置と整理していますが追いつきません…。今は掃除や庭の手入れは業者に入ってもらっていますが、一時はワックス掛け等も私がやっていました。しかも両親は私が帰省したら、色んな所に昼夜問わず食事や飲みに連れて行く事を楽しみにしていて、無下に断れません。勿論両親の奢りですし、帰省の毎に私にも子供にもお小遣いをくれます。だから変な話損は無いです。ただ私はそんなもの欲しくてやっている訳ではありません。母が終活の事等、気にしているし、昔の人だから物を捨てられないので、私がやってあげています。ただとても時間が足りないし、その後2、3日何とも言われぬ疲れで私は寝込んでしまいます。 先日母は週に1~2度はお手伝いさんに入ってもらう事を受け入れました。勿論全く要介護等ついてないので、お金は掛かりますが。ただやっぱり常に他人が入る事が嫌で、知り合いの人が今やってる仕事が終わったら、家に来てもらう。て事で何時のことやら分かりません。そこで私は少しは姉にもやって欲しいのですが、全くやらないどころか実家に顔も見せません。子供か小さい頃はしょっちゅう預けに来ていましたがもう大きくなったので、実家には2~3ヶ月に1回電話してくるくらいです。両親は「あの子はそんな子だから。子供を見てもらう時しか実家には用事の無い子だから。」と諦めていますが、それなら私はこんなに遠くにお嫁に来なかったし、財産を放棄して姉に養子を取らせる必要も無かったようにも思うのです。 1度姉に「お母さんも最近年取ってきたよ。たまには帰ってあげて欲しい。面倒見るて言っても、寝たきりになった時だけでは無いよ。」て言ったら、激怒されて、その後何年も私が電話をしない限り向こうから連絡は有りませんし、こちらの名物や季節の物を送っても、母を通して「もう、送って要らない。迷惑なんだって。」て言われました。私は姉と喧嘩する気は有りません。もし私が病気になったら、両親を見てあげる事が出来なくなるから、両親が死ぬまでは姉の機嫌を取っておきたいです。ただ今からどんどん年老いていく両親をどうしたら良いのか?姉にどうやったら上手く伝わるのか分かりません。 今すぐに介護が必要では無い両親、死ぬまで経済的なお世話をする事は絶対に有りません。しかしより穏やかな不自由の無い老後を送る為に、姉にどういう風に伝えれば上手くいくでしょうか?教えてください。
締切済み ベストアンサー2019.04.17 -
父親の身の始末
父親の身の始末をどうすべきか、悩んでいます。このように書くと親不孝者のようですが、今から親の終活に備え準備しておくのは、重要な事だと思っています。 現在、男性の平均寿命は80.98歳、男性の健康寿命は72.14歳、平均介護期間は8.84年だそうです。あくまで概算です。 父方の祖父は、当時の平均寿命より11年ほど長生きしていますが、介護施設で6年ほど過ごしてこの世を去りました。父も祖父と同じように長生きしてくれるのであれば、90歳近くあるいはそれ以上まで生きるようになりますが、人の寿命や先々の事は分かりません。 父親には幾つかの持病はありますが、比較的元気です。しかし、ここ最近は体力の低下と若干の痴呆傾向が出てきており、年齢的な衰えを感じています。 現在健康寿命は男女とも70代で、その後約10年は、誰しも体の不調を抱えながら生活していると言います。という事は、亡くなる10年ほど前から体に不調が出てくるという話になります。 私は父親と一緒に生活していますが、以前よりも明らかに出来ない事が増え、出来ない事への不満を周囲に当たり散らすようになりました。痴呆も進んでおり、認識力、判断力、思考力のいずれも低下しています。 そうした事を鑑みた場合、父親の介護施設入所は幾つくらいが妥当だと判断できますか? 父方の祖父は、80歳をだいぶ過ぎてからの入所でした。90歳を過ぎてからや100歳近くになってから入所する人もいるようですが、人それぞれ介護度や家庭の事情も違ってくるでしょうから、一概には言えません。 父親の場合、幾つくらいが妥当なのか判断が付きかね悩んでいます。 長くなりましたが、介護経験者の皆様、どうかお知恵をお貸し下さい。お願い致します。
締切済み ベストアンサー2019.03.18
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