50代からの女性のための人生相談・41

人生相談:病気の夫が亡くなった後が不安です

公開日:2021/10/12

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「50代からの女性のための人生相談」は専門家がハルメク読者のお悩みに答えるQ&A連載。今回は56歳女性の「病気の夫が亡くなった後が不安」というお悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く住職・名取芳彦さんが回答します。

人生相談:病気の夫が亡くなった後が不安です

56歳女性の「病気の夫が亡くなった後が不安」というお悩み

主人が脳梗塞で倒れて以来、主人の体が心配で「主人がこの世からいなくなってしまったら」と思うと、恐怖心がとてつもなく心を覆ってきます。

年の差婚なので先立たれることも考えなければいけないのですが、考えると悲しみと怖さ、そして一人で生きていけるのだろうかと心配になります。
 
子どももいないため、どうしたら前向きに考えられるのかがわかりません。 今は主人の存在が私を生かし、支えになっています。(56歳女性)

名取芳彦さんの回答:生きているうちにできることをする

生きているうちにできることをする

人生で初めての経験は対処した経験がないので、戸惑い・心配・不安になるのは当然のことです。

そこで、現在の状況で前向きになるために、参考になりそうな話を一つご紹介します。 

がんセンターに40代の男性が入院しました。余命が長くないことを知った彼は途方にくれ、来る日も来る日も輝きのない目で検査の日々を送っていたそうです。

ある日、主治医が回診すると、彼が顔をあげてニコニコしていました。

「何かいいことがありましたか?」と聞くと「オヤジから手紙がきたんですよ。中身はこれ一枚」と封筒から紙を一枚取りだしました。

そこには大きな文字で「生きている間は、生きているぞ」とだけ書かれていました。彼はうれしそうに続けます。

「がんとわかってから、私は自分が死んだ後のことばかり考えていたんです。

私が死んだら親や妻や子どもはどうなるだろう。仲良くやってくれるだろうか。暮らしていくお金は大丈夫だろうか。やりかけの仕事はどうなるだろう。引き継いだ人に迷惑をかけないだろうかって。

でもね、先生、僕はまだ生きているんですよ。死んでない。

オヤジの言葉は、死んだ後のことなんか考えないで、生きているうちにできることをしておけって意味ですよ。そうしたら、今できること・しなくてはいけないことが、たくさんあるってわかったんです」

この話は、現在ほどがん治療が発達していなかった30年前、私が僧侶と同時に、がん患者の家族の立場で参加していた『癌患者、家族の集い』で、そのドクターから直接聞いた話です。まったくその患者さんの言う通りだと思いました。

まだ死んでいないのに自分が死んだ後のことを心配していた彼と、まだ亡くなっていないのにご主人が亡くなった後のことを心配している今のあなたは、似ている気がします。

ご主人の隣にいる「あなたにしかできないこと」がある

ご主人の隣りにいる「あなたにしかできないこと」がある

ご主人が生きている間に、やれることはたくさんあるでしょう。「この人と一緒になって良かった」「最期まで面倒をみられて良かった」と思える時間を丁寧に、大切に紡いでいくことを最優先にされることをおすすめします。

また、ご主人にあなたの心境を素直にお伝えするのも大切だと思います。

「あなたが死んだら、私は悲しくて一人で生きていけないかもしれない。それを考えると怖くて仕方がない」と伝えたら、長年連れ添ったご主人なら、きっと励みになるアドバイスをしてくれるでしょう。

これもご主人が存命中にあなたができることです。こうしたことは、「ちゃんとやっておけば良かった……」と後悔しないために、とても大切だと思います。

それでも「亡くなってしまったら、どうしよう……」と心細く、心配になるでしょう。そんなときはオロオロするのではなく、「もし亡くなったら、こう対処しよう」と具体的に考えておくことをおすすめします。

精いっぱい生きることが、亡くなった人への恩返しになる


ご主人からもらった、たくさんの“おかげ(恩)”を胸に、感謝の多い一日一日を大切に生きていこうと覚悟することもできるかもしれません(私はお世話になった先輩が亡くなるたびに、そう思います)。

ご主人が生きられなかった、笑い足りなかった分まで、自分は笑顔で生きていこうと決意することもできるかもしれません(私は友人が亡くなると、いつもそう思います)。

あなたがあの世へ行ったとき、ご主人に「あれから私はこんな生き方をしたのよ」と堂々と報告するのを楽しみに生きていくこともできるかもしれません(私は亡き父母にあの世で報告するのを楽しみにしています)。

ご主人にできなくなってしまったことを(ご主人へのご恩返しとして)他人にしてあげようと、ボランティアに精を出すこともできるでしょう(私は62歳まで生きてこられた恩返しのつもりで、いろいろなことをさせてもらっています)。

「亡き人が自分の心の中に生きている」のを実感するまで

「亡き人が自分の心の中に生きている」のを実感するまで

死後の現場にいる坊主として感じるのは、伴侶の死を受け入れるには、2年(三回忌)くらいかかるということです。

去年いた人が今はいない。一昨年(おととし)一緒だった人がいない。

切なくも悲しい中、そんなことを一人で感じながら、紅葉の秋・クリスマス・正月・満開の桜・入道雲の夏……これらを2度経験するだけの時間がたたないと「亡き人が自分の心の中に生きている」ことを実感できないかもしれません。

こんなことを申し上げても何の慰めにもなりませんが、夫婦仲が良かった人ほど、伴侶の死から立ち直りが早いというのもよく感じることです。

「亡くなった主人なら、こういうときはどう言うか、どうするかわかるんですよ。まるで隣にいるみたいですよ」と笑顔で語る方は多いのです。

どうぞ今は、ご主人との時間を、精いっぱい大切に過ごしてください。

回答者プロフィール:名取芳彦さん

名取芳彦さん

なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)など、著書多数。

構成=竹下沙弥香(ハルメクWEB)

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