あなたのお話しお聴きします・2
僧侶・前田宥全さん「自死・自殺に向き合っていく」
僧侶・前田宥全さん「自死・自殺に向き合っていく」
更新日:2024年08月31日
公開日:2020年12月30日
遺族の小さな男の子に、将来何を話してあげられるだろう?

私が自死(自殺)という、いのちの問題にかかわるようになったのは、ある自死遺族との出会いがきっかけでした。
あれは住職になって何年かたった頃、檀家さんから「息子が……」と連絡が入ったのです。当時の私と同い年の30代の息子さんが自死した、という知らせでした。すぐにお経をあげに駆けつけると、枕元には、ご両親と二人のお兄さん、それに奥さんとまだ3歳の息子さんが座っていました。
ご家族はみなさん力を落とし悲しげな表情でしたが、とても気丈に振る舞っていました。お通夜でもお葬式でも、号泣するどころか、涙を見せることもない。恥ずかしい話ですが、私は自死遺族と接するのはそのときが初めてで、「こういうものなのかな」と勝手に思っていました。
ところが、いよいよ火葬場で窯に棺(ひつぎ)が収められようとした、そのときです。
それまで毅然としていたお母さんが急に取り乱し、息子が骨になるのを拒んで棺に必死にしがみついて泣き叫び、他のご家族も声にならない声で泣き始めたのです。その周りを、3歳の息子さんがきゃっきゃと走り回っていました。きっと、たくさんの人が集まって、いつもとは違う雰囲気が楽しかったのでしょう。
その光景をただ見守ることしかできなくて、私は今まで何をしてきたのだろうと思いました。
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