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- 僧侶・前田宥全さん「自死・自殺に向き合っていく」
「自殺大国」といわれて久しい日本――。都内の小さな寺の住職である前田宥全さんは、そんな状況を何とかしたいと、仲間の僧侶と一緒に手紙による相談活動も行っています。相談者との直筆の手紙のやりとりは数十回に及ぶこともざらだといいます。
遺族の小さな男の子に、将来何を話してあげられるだろう?
私が自死(自殺)という、いのちの問題にかかわるようになったのは、ある自死遺族との出会いがきっかけでした。
あれは住職になって何年かたった頃、檀家さんから「息子が……」と連絡が入ったのです。当時の私と同い年の30代の息子さんが自死した、という知らせでした。すぐにお経をあげに駆けつけると、枕元には、ご両親と二人のお兄さん、それに奥さんとまだ3歳の息子さんが座っていました。
ご家族はみなさん力を落とし悲しげな表情でしたが、とても気丈に振る舞っていました。お通夜でもお葬式でも、号泣するどころか、涙を見せることもない。恥ずかしい話ですが、私は自死遺族と接するのはそのときが初めてで、「こういうものなのかな」と勝手に思っていました。
ところが、いよいよ火葬場で窯に棺(ひつぎ)が収められようとした、そのときです。
それまで毅然としていたお母さんが急に取り乱し、息子が骨になるのを拒んで棺に必死にしがみついて泣き叫び、他のご家族も声にならない声で泣き始めたのです。その周りを、3歳の息子さんがきゃっきゃと走り回っていました。きっと、たくさんの人が集まって、いつもとは違う雰囲気が楽しかったのでしょう。
その光景をただ見守ることしかできなくて、私は今まで何をしてきたのだろうと思いました。
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