母の過去と消えない後悔、
子を拒絶し続けた理由
私の父は昔、教師をしていました。記憶に残っているのは、よく私を連れて歩いてくれた優しい父の笑顔。幼い頃の写真を見ると、全部父が抱っこしているんです。いつも私を受け入れて、愛してくれる存在でした。
人を裏切ったら、同じ形で自分に返ってくる。
やっぱり人間は因縁から逃れることはできないのです
結婚、出産、離婚を経て、女優としての仕事にまい進し始めた風吹さん。50代になり、母の最晩年、隠された母の過去や苦悩を初めて知り、改めて女の一生について考えましたと話します。今だから語れる、風吹ジュン特別インタビュー第4回。
私の父は昔、教師をしていました。記憶に残っているのは、よく私を連れて歩いてくれた優しい父の笑顔。幼い頃の写真を見ると、全部父が抱っこしているんです。いつも私を受け入れて、愛してくれる存在でした。
一方、母は厳しい人で、なぜか私や兄を拒絶していました。忘れられないのは、寒い日に、母のきものの袖口に手を入れようとすると、そのたびにバシッと叩かれたこと。どうして受け入れてくれないのか、ずっとわからずにいました。
ようやく母の事情が理解できたのは、20歳になったとき。二人きりの時間に、「実はね」と母がぽつりぽつりと語り出したんです。
母にはもともと子どもが二人いました。ところが父と出会ったことで、家族を捨てる決心をして家を飛び出した。そして生まれたのが兄と私でした。おそらく母は心の中で捨ててきた家族のことをずっと引きずって、深い苦しみを抱えていたのだと思います。私が成人したことでやっと胸の内を話せたのでしょうね。