トラブルを未然に防ぐ最善策は遺言書

相続トホホ体験談!争続トラブルになる判断ミスとは

公開日:2021/12/30

更新日:2022/02/24

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相続では、遺族間でトラブルが発生するケースも珍しくありません。これは、資産家だけでなく、一般的な家庭でも起こり得ること。自分の死後、遺族が“争続”に巻き込まれないよう、気を付けておくべきポイントについて、4つの体験談をもとに解説します。

相続トホホ体験談!争続トラブルになる判断ミスとは

自筆証書遺言が法的に無効で、相続人に不穏な空気が…

自筆証書遺言が法的に無効で、相続人に不穏な空気が…

70歳の父親が突然他界したという、井上里美さん(仮名)の体験談です。

「父は自分で会社を興して事業を営んでいました。リーマンショックで経営が傾いたこともありましたが、どうにか乗り越えて元気に働いてきました。ですが先日、何の前触れもなく突然死してしまったのです」

ショックの中で葬儀を済ませた遺族は、遺品の中から自筆で欠かれた遺言書を発見しました。その内容を見て、里美さんをはじめ、母親、兄、弟の、いわゆる相続人たちは大きなショックを受けます。

「自分の会社や遺産のかなりの割合を、リーマンショックの際に援助してくれた父の知人に譲り渡すと書かれていたのです。私たちはきょうだい3人とも父の事業を手伝っていませんでしたし、故人の意思なのだから尊重すべきという話にまとまりかけたのですが……」

実はこの遺言書には、作成した日付が記されていないという不備がありました。法的に認められる「自筆証書遺言」においては、自書で日付が記されていることが大前提となっているのです。

「知人の弁護士に遺言書を見せてそのことがわかった弟は、遺言書の内容は無効だと言い出しました。私と母は父の意思を尊重するのが望ましいと考える一方、兄は両方の意見に振り回されてうろたえるばかり。家族関係がギクシャクしてしまいました」

■相続アドバイス
「自筆証書遺言」は手軽に作成できる反面、記載上の不備があると無効になってしまう恐れがあります。その点、「公正証書遺言」は法律の専門家が作成するので確実ですし、公証役場で保管してもらえ、紛失や盗難といったトラブルの恐れもありません。

死後、“争続”を避けつつ自分の意思を確実に実行してもらいたいなら、「公正証書遺言」を選択しましょう。

のこされた不動産を共有名義にしたら、兄妹関係が崩壊

のこされた不動産を共有名義にしたら、兄妹関係が崩壊

相続がきっかけで、兄との仲がすっかり険悪になってしまったという今井恵子さん(仮)の体験談です。すでに父親は他界しており、母親が亡くなった際の相続が揉め事の発端となりました。

「母がのこした遺産は預貯金と実家。私たち兄妹2人はすでに別の場所に自宅を建てて暮らしていました。とりあえず預貯金を半分に分け、実家は2人の共有名義として相続し、空き家の状態で管理することに。ところが何年かたってから兄が、賃貸住宅への建て替えを提案してきました」

「空き家のままだと老朽化が進みコストがかかるので、家賃が得られる賃貸住宅に建て替えた方が有益だ」というのが兄の主張。確かに一理あるものの、建て替えにも相応の費用がかかります。だとしたら売ってまった方がいい、と恵子さんは考えたそうです。

「兄は売却には応じず、話は平行線を辿りました。兄妹の関係もすっかり冷えてしまって……。実家は今なお空き家のまま放置されています。今後またトラブルの種になりそうで憂鬱です」

■相続アドバイス
不動産を共有名義で相続することは争いの種になりがち。極力避けるべきでしょう。
万が一、兄妹のどちらかが亡くなった場合は、その配偶者や子どもが共有持分を相続することになります。そうなると、共有者がどんどん増えて実家を巡る協議はいっそう難航してしまいます。預貯金の金額によりますが、この事例であれば、実家は兄弟どちらか一方の単独相続として、もう一方は預貯金を多めに配分するような遺言書があればトラブルを防止できました。

次男妻の横やりで遺言書通りの相続が暗礁に乗り上げる

次男妻の横やりで遺言書通りの相続が暗礁に乗り上げる

法的に有効な遺言書が存在しても、遺産分割協議が難航してしまうことも。西岡洋子さん(仮名)の叔父さんが亡くなった時の話です。

故人は生前に「公正証書遺言」を作成しており、「配偶者(妻)に実家、同居していた長男に現預金を相続させ、次男には何ものこさない」という内容になっていました。

「次男は家業をまったく手伝っておらず、別居して完全に独立していたので、当人は取り分ゼロでも不満はないと、遺言書の内容を了承していました。ところが、彼の妻が、そんな分け方は不公平だと言い出してから、トラブルに発展してしまったのです」

妻からのプレッシャーを受けた次男も、「やっぱり多少はもらえないと……」と遺言書に難色を示し始めました。そして、ついには弁護士を交えて「遺留分」の請求に踏み切る事態になったそうです。

「仲のいい一家だったのにすっかりバラバラで、親戚一同いたたまれない気持ちです」

■相続アドバイス
きちんとした遺言書を作成していても、遺産の分け方にかなりの不公平感があると、納得しない相続人が出て「遺留分」の請求に発展することがあるので注意が必要です。

ちなみに「遺留分」とは、法定相続人の中で、配偶者および「直系尊属(親・祖父母など)」、「直系卑属(子ども・孫など)」に、法律で最低限保障されている遺産の取得分です。遺言の内容よりも強い権利を有しており、該当者が主張すれば「遺留分」を相続できます。

資産家だけの問題じゃない!わずかな遺産でも争いの種に

資産家だけの問題じゃない!わずかな遺産でも争いの種に

相続で揉めるのは、資産家だけに限ったことではありません。少額であっても、その分け方などを巡って争いが勃発することも。母親が亡くなった北川千秋さん(仮名)の体験談です。

「母は亡父の遺産を取り崩しながら生活してきたので、彼女が他界した時点では預金残高は数十万円まで減っていました。すっかり老朽化した実家のマンションも安値でしか処分できず、そのお金を加えても遺産は200万円弱でした」

晩年、要介護状態で入退院を繰り返していた母親の世話はすべて千秋さんが担っており、医療・介護にかかった費用の多くも負担してきたそうです。千秋さんには弟がいますが、近くに住んでいなかったこともあって、介護には完全にノータッチでした。

こうした事情を踏まえ、「負担分と相殺するとほぼゼロになるから、遺産は自分が受け取っていい?」と弟に打診。すると、「姉貴はいつも勝手に話を進めてズルイ!」と弟が食ってかかってきたそうです。その後、姉弟仲は険悪に。

「たぶん、遺産の額は無関係で、母の晩年について、弟がきちんと把握していなかったことがトラブルの原因なんだと思います。母の生前から、もっと弟と話をして、頼ってもよかったのかもしれません」

■相続アドバイス
近い将来、相続が発生する場合には、遺産の規模にかかわらず、相続人がお互いにきちんと情報を共有し、事前の話し合いを進めておくことが大切です。そして何より、たとえわずかな額だったとしても、それをのこす側は遺言書を作成しておくことが大切です。

争続トラブル回避のためには「公正証書遺言」を作成しよう

争続トラブル回避のためには「公正証書遺言」を作成しよう

どの体験談を見ても、そこから得られる教訓は法律上有効な「遺言書をのこす」ことに加え、遺留分まで考えておくことです。それが相続を巡るトラブルを防ぐ最善策といえるでしょう。また、可能であれば、生前のうちに家族へ遺言の内容や相続に関する希望を伝えておくことも、混乱や争いの防止につながります。

遺言書を作成するなら「公正証書遺言」を選択するのがベスト。意向に沿った遺言書作成のためには、専門家に相談しながら進めることが賢明です。例えば、三井住友信託銀行の「遺言信託」など、信託銀行にまず相談に行くという方法もあります。信託銀行であれば、遺言作成のアドバイスだけでなく、遺言の「執行」までお願いできるメリットもあります。

争続トラブルを回避するためにも、今から終活の一環として、遺言書作成を始めてみてはいかがでしょうか。

■記事監修:勝猛一さん
かつ たけひと 司法書士 「勝司法書士法人」代表。相続・遺言サポートオフィス「ゆずりは」運営他。遺言、相続など終活のプロフェッショナル。YouTubeチャンネル「勝 司法書士法人勝猛一」で終活情報を発信しています。著書に、『事例でわかる 任意後見の実務』(日本加除出版)

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■記事協力=三井住友信託銀行

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記事協力:三井住友信託銀行

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