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老後破産しないためにできること
老後の予算はいくら必要?老後資金の算出方法も解説
株式会社FPフローリスト所属ファイナンシャル・プランナー
足立 美佳
公開日:2020.10.29
更新日:2023.05.25
老後資金について考えたことはありますか? 当記事では、老後に必要な金額や資金がいくらなのか、また、老後の予算を算出する方法をチェック。さらに、老後破産にならないためにできることは何なのかを考えてみましょう。
老後資金とは?
これまでは働いて得た収入で日々の生活を送っていましたが、リタイアするとそれが一変します。仕事をしなくなったり、働く頻度を減らしたりすれば、収入は大きく減るでしょう。そんな老後の暮らしで頼りになるのが、年金や退職金です。
さらに、貯蓄があればそれらを少しずつ切り崩しながらの年金生活を送っていくことになります。老後資金とは、リタイア後の生活に必要となる生活資金のことをいいます。年金や退職金だけでは老後の生活が十分にまかなえない不安から、老後に備えて資金を貯めている人もいることでしょう。
老後に必要な金額や資金っていくら?
リタイアした後は、仕事をしていたときとライフスタイルが変化するため、生活費も変わってくるはずです。また、老後資金についても真剣に考える必要があり、これまでより生活費を抑えて暮らしていく人が多くなるでしょう。
では、実際に老後にかかる金額はいくらくらいなのでしょうか? 総務省「家計調査年報(家計収支編)2019年」によると、夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦のみで暮らす無職世帯の実収入の平均は23万7659円で、税金や健康保険料控除後の可処分所得は20万6678円、消費支出は月額23万9947円でした。消費支出の金額には、食費や住まいの出費、水道光熱費、被服費、保健医療費、交通通信費、交際費などが含まれています。
また高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の実収入は12万4710円で可処分所得は11万2649円の一方、消費支出は13万9739円というデータも出ています。
以上のことから、収入よりも支出額の方が上回って足りない分は老後資金でまかなっていくのが、年金生活といえるでしょう。
具体的な老後資金の予算算出のためのポイント
夫婦2人の老後の年金生活にかかる資金がわかったら、次はそれをまかなうための予算を考える必要があります。老後の予算を算出するためのポイントを整理してみましょう。
老後資金の予算算出ポイント1:公的年金支給額を調べる
多くの人にとって、老後で一番大事になる収入源は公的年金となるでしょう。公的年金には、20歳以上60歳未満の日本国内に居住するすべての人が加入する「国民年金」と、企業で働く会社員や公務員が加入できる「厚生年金」の2つがあります。厚生労働省年金局の発表(平成30年度)によると、国民年金に加入していた人が受け取る「老齢基礎年金」の平均受給額は、およそ月5万6000円、「老齢厚生年金」の場合は、およそ14万4000円です。
ただし、年金支給額は、年金の加入期間や納付額など人によって異なります。日本年金機構の「ねんきんネット」で将来受け取る年金見込額を試算できるので、ぜひ調べてみましょう。
老後資金の予算算出ポイント2:退職金を調べる
退職金をもらえる人は、それも大きな老後資金になります。勤務先の退職金の規定などを確認して、自分の退職金がいくらくらいになるのか、事前に調べておきましょう。
老後資金の予算算出ポイント3:私的年金の受給額を調べる
公的年金や退職金の他に、個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)や個人年金保険など、私的年金に加入している人は、それも老後資金となります。
老後資金の予算算出ポイント4:現在の保有資産と支出を整理する
預貯金、土地や建物などの不動産、有価証券、生命保険など、現在保有している資産についても整理しておきましょう。また、現在の家計で毎月どのくらいの支出があるのか、食費や住居費、交際費などの項目ごとに把握しておくことも大切になります。
老後資金の予算算出ポイント5:特別支出を算出する
月々の家計のやりくりで赤字が出なくても、固定資産税や自動車税の支払い、家の修繕費といった必要不可欠な出費、旅行、子どもの結婚や出産といったイベント費で貯金を切り崩すことになるはずです。細かいことでいうと、孫が生まれ人数が増えるほど、お盆や正月のお年玉の出費、入学祝いもばかにならない出費となっていきます。
カレンダーを見ながら、12か月どんなイベントがあるのかを書き出しながら、どんな特別支出があるのかを把握しましょう。単純計算で、その金額に残りの寿命として年数を掛け算すれば最低限必要な老後資金の金額がわかります。
また、高齢になってからの介護費も準備しておくと安心です。生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、在宅介護の場合、平均介護期間54.5か月の間、年間94万円の費用がかかっています。よって、介護費用として500万円を目安に、確保しておいた方がいいでしょう。
老後資金の予算算出ポイント6:いつ定年退職するか考える
定年退職の年齢は企業により異なるでしょう。60歳と65歳では、収入にも大きな違いが出てくるはずです。自営業の人や個人事業主の人など、自分でリタイアする年齢を決めることができる場合は、何歳頃まで働くのかをしっかりと考えてみましょう。
年金だけで生活していくことはできる?
多くの人にとって、老後の生活で最も頼りになるのが年金制度かもしれません。しかし日本では、少子高齢化によって公的年金の支え手が減り、受給できる年金額の減少が心配されています。また、平均寿命が延びていることや、年金加入者が減少していることを考慮して、年金の給付額を調整する制度「マクロ経済スライド」が2004年から導入されています。
このような背景から勃発したのが、年金の他に老後資金として2000万円を必要とすると金融庁が報告書で公表した「老後2000万円問題」です。この問題が露呈したように、年金だけでは十分な老後資金が得られないというのが実情でしょう。
老後破産って?
老後のための十分な資金がないと心配になってくるのが「老後破産」です。2014年9月に放送されたNHKスペシャル「老人漂流社会〜“老後破産”の現実〜」で話題になった言葉です。老後破産とは生活に困窮し、破産状態になってしまうことを意味します。
年金だけでは生活ができず、貯金や老後資金もやがて底をつくと、日々の暮らしすらままならなくなり生活が立ち行かなくなり、十分な介護や医療を受けられない……という事態に陥ってしまうことも考えられます。現在の日本において、そんな老後破産に直面する人が増えてくるのではないかと懸念されています。
セーフティネットとなる生活保護も
万が一老後破産してしまった場合、セーフティネットとして生活保護の制度があります。生活保護を受けている高齢者世帯は年々増えてきていますが、政府は生活保護の減額を進めているとされています。そのようなこともあり、老後資金は自らで準備することが求められていると言わざるを得ないのかもしれません。
老後破産にならないためにできること
老後は、お金や生活の心配をせずに、心にゆとりを持って暮らしたいもの。そこで考えたいのが、生活費のセーブと老後資金を少しでも確保することです。
老後の備えや老後資金を作るためには?
備えや老後資金作り案1:家計の見直し
毎月の支出が多くなれば、老後資金にも大きな金額が必要になります。そのため、毎月の出費をできるだけ小さくするような見直しが大切です。リタイアすれば、働いているときにかかっていた交通費や交際費、衣服費などを縮小できるでしょう。他にも、水道光熱費や通信費なども割安なプランに変更するなどして、家計をダウンサイズできるように考えてみてください。
備えや老後資金作り案2:住まいを検討する
子どもと一緒に暮らしていたときは、それなりの広さがある住まいが必要だったでしょう。しかし、子どもが独立して夫婦2人だけの暮らしになったら、広い家で生活するのはもったいないかもしれません。持ち家なら家賃の心配はありませんが、住居の修繕費や固定資産税の支払いなどのコストも発生します。夫婦でコンパクトに暮らせる住まいに移ることも、検討してみてはいかがでしょうか。毎月の支出のうち、住居費は大きな割合を占めるものですから、ぜひ住まいについても考えてみてください。
備えや老後資金作り案3:定年後も働く
定年退職を迎えたら、一切仕事をしないという人もいるかもしれませんが、元気なうちは働くことも考えてみてはいかがでしょうか。週5日間フルタイムで働かなくても、1日に数時間だけ、週に数日だけなど無理のない範囲で働くことができれば、金額は少なくても収入になります。これまでに培ってきたスキルや経験を社会に還元しながら、生き生きと暮らすことができることでしょう。
備えや老後資金作り案4:資産運用する
老後資金を少しでも増やすためには、元気なうちから資産運用をすることもおすすめです。金利がほとんどつかない貯金ではなく、積立投資などの資産運用を行うことで、資金を増やせる可能性があります。
積み立てNISAなど、50代から初心者でも始めやすい資産運用法もあるので、ぜひ検討してみてください。
老後に不自由な生活を送ることがないように、今から予算を算出して準備をしておきませんか? 一日でも早いアクションが、豊かな老後生活につながっていくはずです。
教えてくれた人
足立 美佳(あだち みか)
株式会社FPフローリスト所属。ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・宅地建物取引士)。自分や家族の幸せを守るための「よりよいお金の活かし方」を、資産運用セミナーや個別相談等でお伝えしています。
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関連リンク
家計調査年報(家計収支編)2019年(総務省)
平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(厚生労働省年金局)
年金見込額の試算(日本年金機構)
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