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エクセルいらずのシミュレーション法もご紹介
50代、退職前から考えよう!マネープランの作り方
CFP®認定者、日本証券アナリスト協会認定アナリスト 「家計の見直し相談センター」所属
小川 貴行
公開日:2020.09.18
更新日:2023.11.16
老後資金に漠然とした不安を抱えている方こそ、「マネープラン」を立ててみませんか? マネープランを立てた方がいい理由3つとは。また、現役時代に備えるべき費用や、簡単に自分で作ることができるマネープランのシミュレーション方法をご紹介します。
マネープランについて教えてくれたのは?
小川貴行さん
おがわ・たかゆき
CFP®認定者、日本証券アナリスト協会認定アナリスト
愛知県出身。関西学院大学商学部を卒業後、証券会社・生命保険会社を経て現在は家計の見直し相談センターで家計・資産運用・保障のコンサルティング、講演などに従事。
理想の生活を実現!マネープランとは?
子どもの高校や大学入学、親の介護、自分や夫の退職、子どもの独立や結婚など、人生にはさまざまなライフイベントがあります。そして、それぞれのイベントごとに、ある程度の費用も必要となるでしょう。
また、子どもが独立して夫婦二人の生活になったら、「新しい趣味の習い事を始めてみたい」「夫婦二人で旅行に行きたい」など、将来の生活を思い描くこともあるでしょう。そのように、これからの人生をどのように過ごしたいかを考えたときに必要になるのが、お金の計画です。
理想の生活を実現するために必要となるお金を算出して、その費用を捻出するためにはいつまでにいくらの金額があるといいのかを計画としてまとめるのが「マネープラン」です。
マネープランを立てた方がいい理由
ひと昔前であれば、わざわざマネープランを立てなくても生活ができたといわれています。それは経済成長にともない、収入が自然に増え、銀行などにお金を預けておけば高い金利がついてさらにお金が増え、少子高齢化が進んでいる現代とは違って老後の公的年金問題もありませんでした。右肩上がりの時代には普通に生活していれば十分に先を見通すことが可能で、お金の不安はほとんどなかったのです。
しかし現在はいかがでしょうか?収入はなかなか増えないし、銀行などの金利はとても低く預貯金に置いておいてもなかなか増えません。逆に、昔はなかったスマートフォンなどの通信費がかさむようになり、自動車などの耐久消費財、学費なども値上がりしています。老後の公的年金もだんだん減る見込みで、さらに長生きすることが当たり前になっています。このような状況になってしまった以上、ひと昔前と同じ感覚のままで充実した老後生活を送ることは難しくなったと言えるでしょう。
そこで必要となるのがマネープランです。マネープランを立てた方がいい理由は、具体的に次のことが挙げられます。
理由1:自分にとっての理想の老後生活を実現するため
マネープランを立てるべき一番の理由は、これからの人生を理想に近いものにするためでしょう。挑戦したいことや実現したいことなどが叶えられる、理想の生活を送るためには、ある程度の資金が必要となります。やりたいことはたくさんあるのに、それを実現するための資金がなければ、悔いが残る人生となってしまうかもしれません。
そのためにも、達成したい目標ややりたいことなどを書き出して、実現するためにはいくら必要なのか洗い出してみることが大切です。家計の見直しなしですべて叶えられるならば良いのですが、難しい場合にはマネープランを立てることによって問題点を見つけ、可能な範囲で改善しながら、実現したいことに優先順位をつけていく必要があります。その第一歩が、マネープランの作成といえるのです。
理由2:年金生活だけでは不安があるから
50代は、老後の生活についても視野に入ってくる年代です。昔なら、老後は公的年金だけで暮らすことができたかもしれませんが、少子高齢化のため年金が減額される可能性もあるかもしれません。老後の生活には、公的年金の他に、自分で2000万円を用意しなければならないとする「老後2000万円問題」が話題となったように、老後の暮らしに不安を感じている人も多いはず。そんな不安を解消するためにも、マネープランを立てることが必要となります。
理由3:リタイア後には収入がなくなるから
老後の暮らしでは、現役時代に比べて交通費や被服費などは減少するでしょうが、入院や手術などの医療費や介護費用などが増えてくると予想できます。そして覚えておきたいのは、リタイア後は給料がなくなり、収入は年金だけになるということ。事前にお金の準備ができていないと、思わぬ出費に見舞われたときも、家計が大打撃を受けることになってしまいます。
現役のうちに考えておきたい費用
マネープランを立てるときに必要となるのが、何にどのくらいの金額の出費があるのかを把握することです。特にここでは、現役時代に必要となる費用について考えておきましょう。
住居費(住宅ローン)
各家庭の出費のうち大きな割合を占めるのが、住居費でしょう。退職後にも住宅ローンの支払いが残っていると、家計に大きな影響を及ぼします。老後の生活を安心して送るためには、住宅ローンをリタイア後まで残したくはないですね。
そこで現役時代に考えたいのが、住宅ローンの繰り上げ返済です。繰り上げ返済でローンの返済期間を短縮できれば、リタイア後の生活に安心をもたらすことになります。繰り上げ返済できる最低金額や手数料などの条件は、金融機関ごとに異なりますので、詳しくは問い合わせてみましょう。
ただし、繰り上げ返済をすればその分手元資金も減ることになります。例えば子どもの教育資金や自動車の買い替えが迫っているなど、数年以内に大きな支出が予定されている場合には無理な繰り上げ返済は禁物です。
また、高い金利で住宅ローンを組んだ方や残存期間がまだ長い方、借入残高が多い方は、こうした金利が低くなっているときならではのメリットを生かし、借り換えを検討しましょう。借り換えを行うと、返済期間を短くする効果または毎月の返済額を抑える効果があり、家計改善につながる利点があります。ただし借り換えには諸費用がかかりますので、借り換え効果が見込めそうかどうか試算をしてみることが必要です。簡単に試算できる金融機関ホームページもありますので、チェックしてみることをおすすめします。
また住宅ローンの支払いだけでなく、修繕費や固定資産税のことも視野に入れておきましょう。
教育費
現役世代の家計に重くのしかかる費用に、子どもの教育費もあります。
子どもが大学へ進学する場合、4年間(または6年間)にかかる教育費は、国立大学の場合(※1)、在学中にかかる授業料・施設設備費納付額の目安は、4年間で約214万円。私立大学は文系の場合で約373万円、理系なら約514万円、私大の医・歯系(6年制)なら約2232万円にもなる(※2)といいます。さらに、大学で下宿することになれば、学費以外に生活費もかかることになります。子どもが複数いる家庭なら、どのタイミングでいくらくらいお金が必要になるのかを明らかにしておくことが大切でしょう。
参照元:文部科学省「平成30年度学生納付金調査」、平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果についてより、私立大昼間学部の平均額
※1:文部科学省令による標準額。国立大の法人化により、大学間で異なる。また加えて施設費、実習費、諸会費などを徴収される場合がある。
※2:ここでは単純に4倍としているが、学年が上がるにつれて授業料・施設設備費などが上がる大学・学部もある
それでも貯蓄・投資をコツコツと継続を
このように、50代の家庭では住宅ローンの返済や子どもの教育費がかさみ、貯蓄がなかなか難しい時期でもあります。しかし将来の老後生活を見据えて、小額であっても貯蓄を増やすことを考えましょう。コツコツと継続することによって、将来には大きな結果となるかもしれません。
例えば、毎月の積立貯金で、50歳から65歳までの15年間に貯蓄すると考えてみましょう。毎月5万円の積立貯金を行えば、15年間で900万円となります。毎月6万円なら1080万円です。これが老後資金となるため、少しの額でも貯蓄を考えてみることをおすすめします。また、預金を増やすだけでなく「積立投資」をして、お金に働いてもらうことも考えましょう。積立投資については「投資初心者におすすめの資産運用方法は『積立投資』」を参考にしてみてください。
エクセルいらず!まずは簡単なシミュレーションをしてみよう
マネープランは自分一人で作るのは大変です。「エクセルなどを駆使して作成しなければならないのかも……」と思われがちですが、エクセルなどを一切必要としない、便利なシミュレーションサイトがたくさんあります。
このようなサービスを使えば、あっという間にマネープランを立てることができて、これからのお金の計画を立てやすくなります。また、エクセルが得意な人向けのシミュレーションサービスもありますので、併せてご紹介します。
シミュレーションの方法
マネープランのシミュレーションは、それぞれのサービスにより若干異なりますが、一般的には夫婦の年齢や収入を入力するところから始まります。また、子どもの年齢や公立学校または私立学校に通っているかなども入力。
さらに退職金の有無やリタイアの年齢、現在の住宅ローン残高や貯金額などを入力すると、生涯の総支出と総収入がひと目でわかり、必要な経費がいくらか見られるようになります。
例えば、次のAさんの場合を見てみましょう。
- Aさん 会社員(53歳)退職は65歳
- 妻 パート(50歳)パートは60歳まで続ける予定
- 子ども2人(19歳、16歳)
- 住宅ローン残高 1000万円
- 現在の貯蓄 500万円
Aさんの家庭では、2人目の子どもが大学を卒業するのが、Aさん59歳、妻56歳のとき。それまでの間は支出が高くなりますが、大学を卒業してからは教育費がかからなくなります。その後は大きな支出はないのであれば、Aさんが65歳でリタイアをするまでの6年間が老後資金の貯め時になることがわかります。
オススメのシミュレーションサイト
マネープランの必要性を理解したところで、ぜひ実際に自分でマネープランをシミュレーションしてみましょう。
松井証券「松井FP」将来シミュレーター
ゲームをする感覚で総支出や総収入を計算することができます。ライフイベントの設定も可能で、家計診断もできます。
松井証券「松井FP」将来シミュレーター
マイクロソフト「ライフマネープランシート」
エクセルを使ってライフマネープランを立てることができるのがこちら。1年間と10年間のそれぞれのプランシートを作ることができます。
マイクロソフト「ライフマネープランシート」
50代の今、快適な老後のためにマネープランを作成しよう
50代は、子どもの教育費用がかかり、住宅ローンの返済も残っているなど、何かと家計が大変な時期です。しかし、老後の生活がすぐ近くに差し迫った50代は、それに向けて準備ができる最終期間でもあります。50代は老後資産を積み上げるための大切な時期なので、ぜひマネープランを立ててみてはいかがでしょうか。
※この記事は2020年9月の記事を再編集して掲載しています。
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