更新日:2023年03月07日 公開日:2021年07月14日

年金生活に向けて知っておくべきお金のことは?

老後の生活費は足りる?老後資金は3つに分ければ安心

老後の生活費は足りる?老後資金は3つに分ければ安心

50代からの人生が楽しくなるお金の知識を徹底シミュレーション。3回目となる今回は、年金生活が始まる前に把握しておきたい老後資金の具体的な金額を計算します。まずは、老後資金を3つに分けて考えてみましょう。

登場人物のプロフィール

 登場人物のプロフィール
A子さん(51歳):20歳から5年間正社員で勤務。このときの年収240万円。それ以降、専業主婦(夫の扶養第3号被保険者として国民年金加入)。34歳から正社員で再就職し、夫の扶養から外れる。現在の年収は320万円。夫は、52歳。22歳から正社員として勤務。60歳定年後も雇用継続で、65歳まで働く予定。38年間の平均年収320万円。夫(53歳)60歳定年後も雇用継続で65歳まで働く予定。38年間の平均年収500万円。子どもは20歳(大学2年生)、24歳(社会人)

 

B子さん(51歳):A子の友人。夫の扶養に入っているパート社員。結婚前は正社員で働いていた


 


D子先輩(64歳):A子の職場の先輩。夫は2歳上で年金生活をしながら、介護施設の運転手のアルバイト(月5万円)。D先輩も同じく介護施設で炊事場の食事作りのアルバイト(月5万円)

 

 

老後マネープランは50歳前後に1度考える

A子さん B子さん、久しぶりだったわね。コロナ禍ですっかり生活が変わってしまったわね。


 

B子さん 本当ね。私も仕事探しを始めようかと思っていたけれど、止まってしまっているわ。


 

A子さん でも、刻一刻と老後生活は近づくことに変わりはないのよね。



 

B子さん コロナ禍で夫が毎日家にいたときは、本当に元気なうちは、仕事やボランティアで外に出たいと心底思ったわ


 

A子さん 同感だわ。今日は、職場の先輩だったD子さんがご一緒なの。習い事でご一緒なの。


 

D子先輩 お二人とも、私から見るとお若くてまぶしいわ。でも、私、みなさんくらいの年に大きな病気をして、老後が心配になったの。そのとき、専門家に相談にのってもらって、プランを立てたのが今、とても役に立っているの。

 

A子さん、B子さん ぜひ伺いたいです!!

長生き時代だから必要なお金も増えている

長生き時代だから必要なお金も増えている

今は「人生100年時代」と言われ、公的年金が受給できる65歳以降のセカンドライフが長くなっているのが特徴です。実際、A子さん、B子さんが生まれた1970年時の平均寿命は男性69.31歳、女性74.66歳でした。もし、公的年金の受給が今と同じ65歳からとすると、受給してから男性は約5年、女性は約10年で亡くなってしまうことになります。

ところが、2020年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳。50年の間に、男性は12年、13年生きる期間が長くなっています。

例えば、1年の生活費が2人で300万円とすれば、当時より12年長く生きるとしても、300万円×12年=3600万円も多くのお金が必要ということです。

B子さん  長生きするってそれだけお金がかかるのね。ますます貯金しなきゃ、ダメってこと?

 

D子さん  まあまあ落ち着いて。長生きするってそれだけ、人生の体験も増えるわけだし、何より私たちには、一生涯受け取れる公的年金があるから、そこまで大変ではないのよ。


A子さん・B子さん そうなんですか?

退職金には手を付けずとっておく

退職金には手を付けずとっておく

ここで、年金生活に入る65歳以降には、どんなお金がかかるかを考えてみる必要があります。第1回で50歳から65歳までかかる人生のイベント費について考えてみました。その際、1500万円という金額がかかることがわかりました。もちろん、この金額は工夫次第で減らすことができます。

しかし、何より大事なことは、65歳になるまでを現役時代と考えて、就労収入と手持ちの余剰資金でなんとか費用を捻出することです。

A子さんの家の場合、退職金の受給は65歳時ですが、60歳で定年退職金を受け取るケースも多いです。

また、勤めている会社によっては、60歳から企業年金を受け取ったり、中には、個人型確定拠出年金(iDeCo)や個人年金を受給できたり、という人もいるでしょう。

しかし、これらのお金には、いくら大きなイベントがあるからといって「決して手を付けない」ことです。

老後に出ていくお金は大きく3つに分ける

老後に出ていくお金は大きく3つに分ける

65歳以降にかかるお金は「日常生活費」「ライフイベント費」「医療・介護費」の3つに分けるのが基本です。

日常生活費の考え方

日常生活費の考え方

まず「日常生活費」です。この費用には、日々の生活費以外に、夫婦二人の温泉旅行などのレジャー費やゴルフ代・観劇費など趣味の費用を含むことが大切です。65歳から70歳まではまだまだ元気いっぱいな時期。フルタイムで働く人は少ないですから、自由な時間を満喫したい人が多いでしょう。

しかし、ここで、手持ち資金を使い切ってはその後が大変です。基本、「日常生活費」は公的年金でまかない、足りなければ、少しでも就労して、その収入で補填します。

70代、80代と体力の低下とともに活動範囲も狭くなるでしょうから、生活費が縮小することも考えられます。それに合わせてアルバイトを辞めてもいいかもしれません。

A子さん だから、D子さんご夫婦は、今、お二人とも介護施設でアルバイトをされているのですね。

 

D子さん そうなんです。私たち夫婦はみなさんと違って60代前半から多少の公的年金を受給できる世代でした。それでも、夫は65歳になるまで雇用継続で働きましたが、その後は月5万円程度のアルバイトをしたいと、前から仕事探しをしていました。

私もそれに付き合っているうちに、介護施設での食事作りに興味を持って、昨年から年金受給が始まったタイミングで、A子さんと一緒だった職場を退職してアルバイトを始めたんですよ。二人ともそれぞれ月5万円あれば、レジャーや趣味費に事欠かないという判断です。

「ライフプラン費」と「介護・医療費」は分けておく

「ライフプラン費」と「介護・医療費」は分けておく

日常生活費とは別に分けておくべきお金は「ライフイベント費」と「医療・介護費」です。「ライフイベント費」は第1回でのおさらいになります。お孫さんが生まれた後、三世代で海外旅行に行こうなんてことがあれば、それはライフイベント費からの捻出になります。大きな家具・家電の買い替え、家の修繕費などもここに含まれてきます。

そして、最後が「医療・介護費」です。医療費については、年齢が上がると、自己負担が1~2割に下がりますし、高額療養費という自己負担の上限制度があります。

それより心配なのは介護費です。介護費は月平均7.8万円、期間は平均4年7か月というデータがあります。これを単純に計算すると、7.8万円×55か月=429万円です。

多くは在宅介護から始まり、重度になると介護施設に移る場合が多いです。そのため、家での介護の準備費用も必要ですので、一人500万円はとっておく必要があります。もちろん、公的年金で賄える場合もありますが、予想外に費用がかかることも多いようです。もし、使わなければ、子どもに遺すお金にすればいいわけです。
(図表1)

図表1

3つのお金を合わせるとやはり2000万円は欲しいところ

3つのお金を合わせるとやはり2000万円は欲しいところ

それぞれのお金をいくら残しておけばいいのか、気になるところです。基本的に、65歳時に退職金と預貯金で2000万円は手持ち金があることが理想です。

そのうち、ライフイベント費に1000万円、医療・介護費に1000万円を分けておきます。もし、それで余れば、日常生活費の予備費にできます。

65歳時に2000万円が用意できないようなら、65歳以降の就労について夫婦で相談する必要があるでしょう。

1 日常生活費
基本は公的年金+アルバイト代でまかなう。予備費をプールできるとベター

2 ライフイベント費(1000万円)
65歳以降の家族イベント費、家具・家電の買い替え、家の修繕費

3 医療・介護費(夫婦で1000万円)
夫婦で1人500万円×2人分。もし使わなければ、子どもに遺すお金になる

次回は、65歳以降に公的年金で生活していけるのか?何か工夫できることはあるか?について、D子先輩の意見も聞きながら、考えていきましょう。

教えてくれた人

酒井富士子

酒井富士子(さかい・ふじこ)さん
経済ジャーナリスト/金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。最新刊に『離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(KADOKAWA刊)

イラストレーション=平井さくら


■もっと知りたい■

酒井富士子
酒井富士子

さかい・ふじこ 経済ジャーナリスト 「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。最新刊に『離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(KADOKAWA刊)

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