老後資金は夫婦で1億円⁉

老後のお金はいくら必要? 老後の生き方も紹介

小川貴行(おがわたかゆき)
監修者
CFP®認定者、日本証券アナリスト協会認定アナリスト 「家計の見直し相談センター」所属
小川 貴行

公開日:2020.09.30

更新日:2023.06.08

老後の平均生活費、老後に必要なお金がいくら必要なのかは、議論が尽きない問題です。そもそも、老後はいつから? 老後資金が足りないリスクとその場合の生活、老後資金を確保する方法、充実した老後生活を送るための考え方などもご紹介します。

老後のお金はいくら必要?
老後のお金はいくら必要?

そもそも、老後はいつから?

「老後生活になったら……」「老後は夫婦で……」などと、「老後」という言葉が使われますが、そもそも老後とはいつのことを指すのでしょうか。定年退職した年以降? 年齢で区切られているもの? いつからを「老後」と捉えるかは、人によってさまざまです。ただし、一つの目安としては、老後資金として準備していたお金を使い始めたときと考えることもできます。

「令和元年度 生活保障に関する調査(公益財団法人生命保険文化センター)」によると、私的に準備した老後資金を使い始める年齢は、平均で65.9歳です。

2013年の高年齢者雇用安定法改正によって、65歳まで働けるようになってきました。65歳まで働いて年金生活に入り、それから年金収入の足りない分を用意した老後資金を使うことで、老後の生活がスタートしている、と読み解くことができるでしょう。

老後必要なお金は夫婦で1億円といわれることも

老後必要なお金

現役時代は、働いて収入を得てそこから必要な金額を貯める……という生活が基本です。しかし、老後生活になると、収入源が公的年金などに限られてしまいます。そのため、今ある資産から切り崩して生活していくようになります。

つまり、貯めることが目標だった現役時代から、老後生活は一変して、計画的にお金を使っていくことが必要になります。そして、年間にどのくらいの金額を使用するのか、年金収入を差し引いて赤字額がいくらになるのかなどを把握することも求められます。

老後の最低生活費・資金平均

夫婦ふたりで送る老後生活では、どのくらいの生活費がかかるのでしょうか。「生活保障に関する調査」(※1)では、老後に必要となる最低限の生活費として、月額平均22.1万円(取材当時)となっています。夫婦二人で、66歳から30年間生活するためには、単純計算で月22.1万円×12か月×30年=7956万円の生活費が必要だということです。仮に夫婦合計でもらえる年金が1か月あたり20万円とすれば、2.1万円(1か月あたりの赤字額)×12か月×30年=756万円の資金が最低でも必要という計算になります。

ゆとりある生活費は

さらに、同調査(※1)では、ゆとりある老後生活費は、平均で月額36.1万円となっています。同じように計算すれば、夫婦二人のゆとりある生活費は、30年間で1億2996万円。夫婦合計の年金額が同じく1か月あたり20万円とすれば、16.1万円(1か月あたりの赤字額)×12か月×30年=5796万円の資金が必要になる計算です。

生活設計の見直しが必要な場合も

このような金額を準備できれば不安はないのですが、難しい場合は年金収入に合わせた生活設計の見直しが必要になってきます。また生活費だけでなく、医療費や介護費の他、祝い金や旅行、家の改修費や維持費といった特別支出もあることを忘れてはいけません。

老後資金が足りない場合はどうなる?

老後資金が足りない場合はどうなる?

では十分な老後資金が足りなくなるのは、どんな場合でしょうか?また 資金が不十分だと、さまざまなリスクを抱えることになります。どう対処すればいいのでしょうか?

老後資金が足りない生活1:生活費が不足した場合

年金収入が少なく、かつ老後資金が足りなければ、生活費が不足することになります。食費や衣服費、住居費など、これまで当たり前に支払っていたものが払えなくなる可能性があります。これを避けるためには、子どもと同居を検討したり、家賃が低い公団住宅に住み替えるなど生活をダウンサイズする必要があるかもしれません。

老後資金が足りない生活2:一人暮らしになった場合

老後生活の中で、夫婦のどちらかが先に亡くなることもあるでしょう。一人暮らしになると、生活費などの負担も残った一人で負うことになります。また、夫婦二人分として受け取っていた年金収入も減ることになります。二人暮らしから一人暮らしになったとしても、必要な生活費が半分になることは少ないでしょう。

すると、老後資金を切り崩す額が増加することになり、老後資金が足りなくなる可能性があります。対策は、一人暮らしになったときのリスクを見越して資金を用意しておくことに加え、そうなったときに頼れる人を決めておくことです。

老後資金が足りない生活3:生活保護を受給する生活

持ち家や車などの資産を持っていない場合、かつ親族から経済的な支援を受けられない場合は、生活保護を受給することができます。厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と年金収入を比較して足りない分を、生活保護として受給することも可能です。セーフティーネットとして、公的機関を頼れることは覚えておきましょう。

今から老後資金を確保するには?

今から老後資金を確保するには?

未来のことを考えると恐ろしくなってしまうかもしれませんが、今から計画的に老後資金を確保しておけば不安は減ります。では、どんなことをすればよいのでしょうか? 貯金や投資、節約など、元気なうちにできることをしておきましょう。

老後資金を確保する方法1:支出を抑える

アラフィフになったら、退職後の生活についても現実的に考えるようにしてみましょう。まずは、退職した後の年金収入がいくらになるのか、ねんきん定期便を確認してみましょう。50代のねんきん定期便には将来の年金見込み額が記載されています。そして、毎月の支出額を把握して、毎月の収支をどの程度にすればよいか計算してみてください。老後生活では、現役時代よりも毎日の出費は控えめにしておいた方がいいので、今のうちから生活費を縮小していく準備をしてもよいでしょう。そして余ったお金を老後資金として貯金に回すといいですね。

老後資金を確保する方法2:iDeCoへの加入を検討する

iDeCo

50代から老後資金を確保するなら、税制優遇のメリットが大きいiDeCoを検討してみましょう。

iDeCoの3つのメリットと注意点

iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金のことで、20歳以上65歳未満の方が加入できます。iDeCoにはメリットが3つあります。一つ目のメリットは、掛け金が全額所得控除となること。例えば企業年金のない会社に勤める方の場合、最大の掛け金は月2万3000円(年間27万6000円)。仮にこの満額を掛けると、所得税(10%)・住民税(10%)の場合、年間約5万5000円の税金が軽減されます。

また二つ目のメリットは、通常、金融商品を運用すると、運用益に課税されますが(源泉分離課税20.315%)、「iDeCo」なら非課税で再投資されることです。三つ目のメリットは受け取るときも大きな控除を受けられること。「iDeCo」は年金か一時金で受取方法を選択することができます(金融機関によっては、年金と一時金を併用することもできます)。年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となります。

このようにさまざまなメリットのあるiDeCoですが、注意点もいくつかあります。一つ目は受給開始年齢。受給開始年齢は基本的には60歳からですが、iDeCoに加入していた期間が10年に満たない場合は受給可能な年齢が61歳~65歳に繰り下げられます。

二つ目の注意点は投資リスクがあること。iDeCoは将来の受取額があらかじめ確定しているわけではなく、運用成績によって変動します。運用商品のうち投資信託は元本が保証されていませんので注意が必要です。三つ目の運用管理手数料がかかることです。金融機関によって金額は異なるので、金融機関選びも大切なポイントです。

>>資産運用初心者のためのiDeCo(イデコ)の始め方

老後資金を確保する方法3:できるだけ働き続ける

できるだけ働き続ける

退職後も元気で健康に問題がなければ、できるだけ長く働き続けたいものです。フルタイムの労働は負担が大きいかもしれませんが、週に数回程度や一日数時間程度でも、働き続ければ大きな違いを生みます。また、仕事を続けることで健康が維持できるし、社会との接点も持つことができ、より充実した老後生活を送ることができるようになるでしょう。

老後資金を確保する方法4:年金を繰り下げ受給する

年金を繰り下げ受給する

年金の支給開始年齢は65歳です。しかし60歳からは支給開始時期を早めて受け取ることができ、これを「繰り上げ受給」と呼びます。繰り上げ受給では、65歳より繰り上げた分だけ、支給額が減額され、1か月あたり0.4~0.5%が減額となります。一方、同じように65歳より支給開始時期を遅らせるのが「繰り下げ受給」。この場合は、繰り下げた期間1か月あたり0.7%増額となり、その分だけ多くの金額を受け取ることができます。

仮に70歳まで繰り下げした場合、65歳から受給した場合と比べて受け取る年金の総額はどちらがお得になるのでしょうか? 実際には税金や社会保険料などを考慮した手取額で比較する必要がありますが、これらを省いて単純に計算するならば、70歳受給開始の場合、65歳受給開始の場合と比べて42%増加することになり、およそ82歳より長生きするならば70歳受給開始の方がお得になる計算となります。

今は65歳を過ぎても元気な方が多いですから、健康に不安などがなければ、できるだけ長く働き続け、繰り下げ受給を検討してみましょう。

心配なのはお金だけじゃない! 老後の生き方についても考えよう

老後の生き方についても考えよ

老後の暮らしについて、資金や貯金額の話題が多く取り上げられますが、考えたいのはお金のことだけではありません。自分が第二の人生をどんなふうに過ごしていくかは、心掛け次第で変わってくるものです。健康的に過ごせば、医療費や介護費での出費が増えるリスクが減ります。またお金のかからない趣味を見つけることでも、楽しく老後を過ごすことができます。

老後の生き方アイデア1:社会にコミットする機会を持つ

リタイアすると、社会とのつながりがなくなり、喪失感や孤独感を感じる方も多いかもしれません。老後も仕事を続けたり、ボランティア活動を始めたりして、社会と接点を持つようにしましょう。社会の役に立てているということが、きっと大きな自信となることでしょう。

老後の生き方アイデア2:お金のかからない趣味を楽しむ

老後は、自分がやりたかったことや趣味に没頭できるまたとないチャンスです。これまで、会社の人付き合いのために使っていたお金を減らして、お金のかからない趣味に切り変えるといいでしょう。まだ趣味がないという方は、地域のコミュニティーセンターが主催する趣味の講座なども利用してみるのも手です。市区町村の広報誌をチェックすると、趣味の教室や講座の情報が掲載されています。

老後の生き方アイデア3:体を鍛え、バランスのよい食事を心掛けて健康寿命を延ばす

老後生活を楽しむためには、健康な体が基本。定期的な運動や栄養バランスのいい食事を心掛け、老後も元気で過ごせるように健康寿命を延ばしましょう。

老後のためのお金と暮らしをバランスよく考えましょう

お金と暮らしをバランスよく考えましょう

私たちが生活していくためにはお金が必要で、老後生活にも一定の金額がなければなりません。しかし、お金のことだけではなく、老後にどんな暮らしを送りたいかを考えることも大切。心にゆとりを持てる豊かな老後にするためには、お金と暮らしについてバランスよく考えてみましょう。

■老後のお金について教えてくれたのは?

小川貴行

小川貴行(おがわ・たかゆき)
CFP®認定者、日本証券アナリスト協会認定アナリスト
愛知県出身。関西学院大学商学部を卒業後、証券会社・生命保険会社を経て現在は家計の見直し相談センターで家計・資産運用・保障のコンサルティング、講演などに従事。

■もっと知りたい■


■参考資料
(※1)「令和元年度 生活保障に関する調査」(公財)生命保険文化センター
 

ハルメク365編集部

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