平野レミさんの料理をおいしくする秘訣(1)

平野レミ流!わが家の味を生むおいしいダシの取り方

公開日:2021.03.23

更新日:2021.12.09

テレビでも人気の料理愛好家・平野レミさん。新刊のエッセイ集『家族の味』(ポプラ社刊)では、料理の腕を磨いた経緯や料理の魅力を語っています。その中から料理をおいしくする秘訣を抜粋してお届け。今回は、カツオブシ、昆布、鶏のダシの取り方です。

ダシのお話を基本から

センスのいいベロを育てる。わが家の味を生み出す。日本の味を知る。いろんな角度から大事なキーポイントは、ダシです。

味をつけるっていうと、塩とか醬油とか砂糖とか、そういうものを思い浮かべるけど、それよりももっとべースになるのがダシなのね。

立派なお料理屋さんのご主人は、朝早く起きてまずダシを作るといいます。お料理屋さんにはそのお店独特のダシがあって、それはご主人が若い頃、お師匠さんからキビしく教えられた味でもあるし、その後自分で研究を重ねて、磨き上げた味でもある。だからお店で「このダシ、どうやって作るんですか」なんて聞いても、「いやあ、素人さんにはとてもとても」なんて言うだけで、なかなか教えてくれません。

教えてくれたとしても手間がかかるやり方なので、本当に素人さんにはとてもとても。私たち主婦にはまねができませんね。そこで主婦は主婦のやり方を考えるわけです。

カツオブシパックは1日で使い切ろう

カツオブシパックは1日で使い切ろう

まずカツオブシ。

私、結婚したとき嫁入り道具なんて何にもなしで、手ぶらで行ったの。それで、最初に買った台所用具がカツオブシ削りでした。ちっちゃいときからお母さんがカツオブシを削るカッカッカッていう音が目覚まし時計だったのね。だから、朝ー母ー力ツオブシーご飯、というふうに結びついてる。

その話をしたら、夫も「そうだ」って。「母親のカツオブシの音で目をさましたもんだ」って言うのね。昔のお母さんはみんな偉かったと思います。

カツオブシを自分で削って、すぐ使うのが新鮮で風味がよくていちばんいいんだけど、忙しいお母さんはなかなかそれができませんね。そういう人にはカツオブシパックが便利よ。ただし、一度封を切ったら使い切ることね。余ったから冷蔵庫に入れてまた明日使おうと思ったら大間違い、風味がまるで落ちてます。おいしさがパックで閉じこめられてるからいいので、開けたあとはどんどん逃げていくの。だから小さなパックを使った方が無駄がなくていいです。

ダシを取った後に!おカカのしっとりふりかけの作り方

カツオブシを削ったのをおカカと言いますね。おカカはそのままお醬油かけてご飯にのっけて食べてもおいしいし、ほうれん草のおひたしなんかにのっけてもいい。その場合、お醬油かける前に熱湯をちょっとかけて、しっとりさせると風味が立ち上がってきて、一段とおいしくなります。

一般的なカツオブシのダシは、熱湯におカカをパッと入れて、グラグラッと来たら火を止めて、濾します。このダシがお吸い物にも煮物にも、いろいろ使えるわけ。

濾したあとのおカカは捨てちゃもったいないの。ギュッと絞って、お醬油入れて、ごまを混ぜれば「しっとりふりかけ」のでき上がり。

昆布ダシのおいしい取り方とダシがらの活用方法

昆布ダシのおいしい取り方とダシがらの活用方法

昆布のダシは、水7〜8カップに10センチ角くらいのダシ昆布を入れてひと晩置きます。そうすると品のいい味のダシができてるんだけど、そんなに時間がかけられないときは、まず1時間水につけてから煮立てるの。ひと晩置いたのには敵わないけど、かなりのいい味になります。

取り出した昆布は醬油とみりんでコトコト煮れば佃煮ができる。それがめんどくさいときは、いきなりお醬油かけて食べちゃってもいいのよ。

昆布のダシは和風の料理なら何にでも合います。アサリの味噌汁、シジミの味噌汁もおいしくなるし、けんちん汁もいいしね。中華スープやカツオブシのダシと合わせると、ひと味深みが出てきます。

煮干しのダシの取り方とダシがらの活用方法

煮干しのダシもおいしい。ただし頭とハラワタをとってから。とらないと色が濁るし、味もすっきりしません。やっぱり水からコトコトやって、濾す。濾さないとモロモロが残るから。

煮干しのダシは味噌汁にもいいし、うどんやそばのおつゆにも使える。カツオブシのダシや昆布のダシと合わせてもコクが出ておいしい。

ダシをとったあとの煮干しは――猫にあげましょう。

干しシイタケのダシの取り方

干しシイタケのダシの取り方

干しシイタケも水からコトコトやります。モロモロが出ないから濾す必要はないです。いいダシになるけど、シイタケだけだと物足りないので、カツオブシでも昆布でも煮干しでも、合わせるとおいしいダシになります。

ダシとして旨味が出きらない前の干しシイタケだったら、そこに醬油とみりんで味つけして、お酒をたらして、自分から出た旨味と一緒に煮ふくめれば、おいしい煮物のでき上がり。

以上四つは和風のダシだけど、和風でも洋風でもいけるのが鶏です。

万能!おいしい鶏のダシの取り方

万能!おいしい鶏のダシの取り方

まずササミ。水からコトコト。脂がないので品のいい味になります。使ったササミは細くさいてサラダに入れたりして活用。

手羽先も水から。手羽先は脂があるけど、骨つきだからコクも出る。ダシをとったあとは味が抜けてるけど、甘辛く煮れば立派なおかずになるし、揚け物にしても。鶏ガラも水からコトコトやりますが、水はまず少なめに。どうしてかというと、コクのない鶏ガラが多いから。地鶏だといいんだけど、ブロイラーが多いし、地鶏かどうかの判断もむずかしい。だからコトコトやりながら味をみて、コクをみて、濃いようなら水をします。

そのまま鶏ガラスープもおいしいし、ダシとしては和風、洋風、中華風、みんな使えて便利です。

にんにくを丸ごと皮むいて、水からコトコト。にんにく独特の旨味が出て、洋風のスープなどに使うと一段とおいしさが増します。ダシとして使うのは、刻んだにんにくをそのままサラダに入れるのとは違って、にんにくの匂いが苦手という人でも大丈夫。

ダシをとったあとの丸ごとにんにくはホクホクになっていて、これを食べるのもおいしい。ダシのいろいろでした。ダシをとるとき、おカカ以外の素材に言えるのは、強火はだめということ。

おカカは薄くてフワフワだから、一瞬で旨味が出ます。ほかのものは旨味をジワジワと出す。強火でグラグラやったら旨味が飛んでっちゃいます。

飛んで行かないようにフタをするといいように思うかもしれませんが、ダシをとるのにフタは禁物。フタをすると噴きこぼれやすくなるから。噴きこぼれるまでやると味が飛んじゃう。そうならないように、お鍋の中が見える状態がいいんです。グラッときたらすぐ火を止められるように。このタイミングが大切。むずかしそうだけど、すぐ慣れます。

平野レミさんのプロフィール

平野レミさんの『家族の味』

ひらの・れみ
料理愛好家。“シェフ料理”ではなく、“シュフ料理”をモットーに、テレビ、雑誌などで活躍。講演会、特産物を使った料理で全国の村おこしなどにも参加し好評を得ている。また、レミパンなどキッチン用品の開発も手がける。新刊『家族の味』(ポプラ社刊)では、夫の和田誠さんを偲ぶ心境もつづられています。
http://www.remmy.jp

※この記事は、平野レミ著『家族の味』(ポプラ社刊)の一部を抜粋し掲載しています。

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