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いつの間にか八十路を歩き始めて1年半が経ちました。当然のことながら、未踏の地を歩いているわけですが、母や祖母の生きざま、友人知人のなりふりが私の八十路のガイドブックです。
「ロンドン橋落ちた」
これはマザーグースの一節ですが、エリザベス前女王の死去に備えての諸事対応策を練る暗号だったとか。そして女王自身もそのプロジェクトに関わっていらしたと知って驚きました。
あの荘厳な葬列や柩を載せたガラス張りの霊柩車に、異国の文化を重々しく感じました。
それにしても、女王は亡くなる2日前にトラス首相を任命するなどの公務をこなされました。畏れながら「あっぱれな最期」です。
『すごい葬式』(小向敦子著)を読みました
まだ読了していませんが、自分の葬儀を自分で仕切ったという話が出てきます。
「人生のラストプロジェクト」として、自分の葬式をセッティングした享年41歳の男性の逝きかたに、襟を正さずにはいられません。自分の葬式のプロデュース作業は、死の恐怖を払拭してくれたそうです。
私の家族はどうだった?
祖母は今でいう認知症だったかも。とにかく、食べることだけを要求していました。昼食の皿を舐めるように平らげても、お代わりを強く要求したので、母が台所に立っている間に「うっ」と発して逝きました。
私は、隣の部屋のこたつに潜り込んで見ていたのです。葬式は新年1月2日、しかも大雪で車両はすべて不通、皆大忙しの葬儀でした。
祖父はその10か月後の秋晴れの日に逝きました。祖父の願いで、近くに住む父の弟妹甥姪に声をかけて集まってもらいました。祖父は布団の中から「皆いるか? さいなら」と言って、すぐ逝きました。
「まるでドラマ」と人は言いますが、まさに、事実は小説より奇なりです。
父の死は突然でした。私は既に生家を離れて広島で家庭を持っていましたので、父の交通事故死に慌てふためきました。母は半狂乱で医師に鎮静剤を打ってもらったと、後で叔父から聞きました。
その母の死は、これまたドラマチックでした。広島で私たち家族と同居することになったのですが、入退院の繰り返しでした。
着替えを持って病室に行くと、主治医が来て病状を説明してくださった後、母をベッドに半身起こして、3人が雑談している最中に母の喉奥で小さな音がしました。「あっ、今だ」と主治医が2本の指を母の首に当て、死亡を確認しました。おりしも広島の8月6日でした。
夫の場合は普通(?)でした。チラリと私を見てすぐ目を閉じました。医師、看護師にしばらく看取られて、静かに逝きました。
私の場合は?
『在宅ひとり死のススメ』の著者 上野千鶴子氏は、さまざまな介護サービスを利用し、「ある朝ヘルパーさんが来て自分の死を発見してもらう」のがご自分の理想とするところだとおっしゃっています。共感するところが大いにあり、気を強くした次第です。
世界一の長寿国にいて、ゆっくり老いて、ゆっくり自分の最期を考えます。考える時間がまだまだあることを信じて。
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