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- たくさんの出会い、学び、感動があったクルーズ船の旅
2016年、C型肝炎を克服してわずか21日後に脳出血になったharumatiさん。リハビリを重ね、2019年12月から約2か月間のクルーズ旅行に挑戦しました。今回は、船内で出会った人たちとの心温まる交流の様子や船内で学んだことについてです。
子どもたちが学校に戻ってきた
5月25日に、全国の緊急事態宣言が解除されました。京都では入学式や始業式だけを済ませた後、再び休校となっていた多くの学校が、6月1日から再開しました。子どもたちはもちろんのこと、多くの保護者の方が、とりあえずはホッとしたのではないでしょうか。
通所リハビリセンターのすぐ近くに、小学校があります。リハビリの始まりの時刻が、ちょうど下校時間と重なったので、追いかけっこをしたり、じゃれ合ったりしながら下校する、元気な子どもたちの姿を、2ヶ月ぶりに見られるようになり、通所の楽しみが増えました。
京都府下では、何年か前から、「小規模校では子どもの社会性が育ちにくいから」と、小学校の合併が進められてきました。今回、非常事態が起きてしまって、元の小規模校だったら、随分対策を講じやすかっただろうにと、思った方も多かったのではないでしょうか。
私の地元の小学校は、全校児童230人の小規模校。1、3、4、5年生は1クラス20人以下の少人数学級が2クラスずつ。「三密」を避けるための条件作りは比較的しやすいのではと、推測しています。大規模校で、教室が目一杯使われ、1クラスの人数が35人の定数に近い場合、「三密」は避けがたい。
どちらにしても、2か月遅れでスタートした、新しいクラスでの人間関係への気配りに加え、体調管理や消毒など、先生方は、さぞ大変だろうと思います。楽しく有意義な学校生活をどのように取り戻していくのか、先生たちと子どもたちとで模索するのを、行政も、保護者も、急かすことなく、ゆっくりと見守り応援してあげてほしいと、集団下校の子どもたちを見ながら思う私です。
多くの感動・学び・体験・出会いがあった、船内生活
さて、船内には、2つの大きなホールがあり、常に何かが催されているといった感じでした。大ホール「ブロードウェイ」で最初に催されたのは、出港記念フラメンコショー「アンダルシアへの旅」でした。
9年前に、スペイン・ポルトガル1週間のツアーに参加した際、アンダルシアの洞窟住居のタブラオで、本場のフラメンコに触れ、その奥深さに強く心を揺さぶられたという経験があります。今回のフラメンコショーでは、ギタリストだけが、ジプシーとしての暮らしの中で見聞きしてフラメンコを覚えたというスペイン人で、歌い手であるカンタオーラと踊り手であるバイラオーラは、日本人とのこと。ちょっと興ざめな結果になるかも知れないとの不安を胸に、会場入りすると……。低く、太く、振り絞るような歌声(カンテ)、踊り手への合図である手拍子とかけ声。それらと溶け合うような妖艶な踊り(バイレ)。カンテとバイレと共に盛り上がり、かき鳴らされるギター。心が震えました。
その5日後、セブ島出港時、見事な夕焼けに夫と共に見入っていると、「写真撮りましょうか」と、優しい声が。「シルエットしか写らないけれど、夕焼けが最高に素敵な位置ですね」と。振向くと、そこには、バイラオーラ(踊り手)の香名子さんが立っていました。シルエットだけの私たちの写真を何枚か取ってもらった後でふと気が付いて、「一緒に写真に入っていただけませんか」とお願いすると、ギタリストのチャノさん、カンタオーラ(歌い手)の有加さんも呼んでくださって、しばし、撮影会。
その後も、レストランでご一緒する機会があり、フラメンコを子どもたちにも広めていきたいという夢や、チャノさんは、ジプシーであることに誇りを持っていて、決してジプシーが差別用語だとは思っていないことなどを語ってくれました。チャノさんと香名子さんは、メルボルンまで私たちと同行し、その後東京へ戻って、仕事。有加さんは、バリに家族が来ているので、そこで、しばらく休暇を取るとのことでした。
オーストラリア最初の寄港地フリーマントルから乗ってこられて、貴重なお話を聞かせてくださったのは、ノーベル平和賞を受賞した「ICAN」の創設者の一人、デイブさん。
オーストラリアには、ウラン鉱山が有り、先住民族であるアボリジニーの人々が、いかに核実験やウラン採掘の犠牲になっているかが主なテーマでした。デイブさんが講演をしている間、13歳の息子さんが客席を回って、「ICAN」のステッカーを一人一人に配ってくれようとしたのですが、途中でどこまで配ったかわからなくなり、私に、「Did I hand you this one?(あなたにこれを渡しましたか?)」と尋ねるのが何ともいじらしかった。13歳といえば、ニューヨークに住む孫と同い年。長い間会ってない孫を思い出させてくれました。
後日、ご家族3人そろっての食事中に出くわしたとき、私は思わず、デイブさんの奥様に話しかけて、こう言いました。
「One of my grandsons is the same age with your son. So, he reminded me my grandson who lives in New York.(息子さんは私の孫と同い年なので、私にニューヨークに住んでいる孫を思い出させてくれました)」。
そして、日本のお菓子を少しだけ息子さんに渡したい旨を申し出ました。そして、デイブさんたちがメルボルンで下船する前日、煎餅、芋けんぴなどを渡すことができました。下船当日、メルボルンの友人との待ち合わせ場所へと向かう途中、ターミナルで大きなスーツケースを引く、デイブさんご一家とばったり出くわしました。「名前をちゃんと覚えているよ」と、握手をしてお別れしました。
ガダルカナル島に着岸する前日には、ソロモン諸島の伝統音楽の継承者であるナッティさんによる、太鼓のワークショップが行われました。大きな体には、不釣り合いなほどの満面の笑み。太鼓をたたいては、リズムに合わせて、ちょっと首をかしげるかわいい仕草。これから訪問する地への安心感が広がりました。太鼓が大好きな夫は、ナッティさんと、とても気が合ったようでした。
船内での日常生活
船内では、大きな公演や講演もまだまだあって、夫はできる限り参加していましたが、今回の私の旅の1つ目の目標は、「全日程を元気に過ごすこと」。無理は禁物です。船内で過ごす時間は、「のんびり&ゆったり」をモットーにしていました。
夫は早朝から、太極拳とラジオ体操に参加。私は朝寝坊。夜は夜で「ブロードウェイ」が、映画館になり、ポップコーンも売られ、名画が上映されます。これにも夫は度々参加していましたが、私は2、3回参加しただけで、基本的にはシャワータイム。
おかげで、57日間、1日もしんどくなることもなく、「これからも旅行を続けていける」と、自信をつけることができました。
船内では、数多くの趣味の活動も行われていました。夫が参加したのは、プロの先生の指導による「水彩画」講座全10回です。帰国直前には、5階の廊下全体を使って作品展が行われました。私は、東京で劇団活動をされている方の自主企画「朗読」講座に全11回参加しました。最後には、自分の好きな作品を選んで、1人5分間の発表会をしました。私は、トリに選んでいただいて、川端康成の短編『雨傘』の朗読をしました。これも「不自由なりに楽しめる旅の在り方」の一つとして、深く記憶に刻まれました。
よく歩き、よく学び、たくさんの優しさに出会えた第103回ピースボートの旅。最終回の次回は、各地で買ったお土産と、最後に作った最高の思い出を紹介します。
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