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- 脳出血発症後初の、2か月のクルーズ旅を終えて
2016年、C型肝炎を克服してわずか21日後に脳出血になったharumatiさん。生活の3本の柱の一つという「旅」に復帰するために選んだのは、約2か月間のクルーズ旅行でした。今回は、2020年2月に帰国した後のお話です。
コロナウィルスの騒ぎの中、無事帰国
2020年2月16日(日)約2か月間の船旅を終えて、真夏の南半球から真冬の日本へ帰って来ました。夏用のワンピースにロングブーツを履き、オーストラリア・シドニーのバーゲンセールで買い求めた、ニュージーランド産メリノウールのふわふわのポンチョを羽織って、予定通り午後3時、神戸港に降り立ちました。
神戸港に着岸してスマホのスィッチを入れた途端、「大丈夫ですか?元気ならメールください」「どこかで足止めになっていませんか?」「メールが届くかどうかわからないけれど、とにかく心配です」等々、たくさんのメールが一斉に入ってきました。
船内のニュースで知ってはいたけれど、こんなに心配をかけているとは思ってもいなかったのでびっくり。私たちの旅行にはほとんど影響がなく、元気で神戸港に降り立っているとの返事を、大急ぎで書きました。
脳出血発症後初の、決意して出掛けた海外旅行。私の体が不自由なことも相まってか、親しい友人たちが、通じないだろうと予想しながらもいても立ってもいられない気持ちで、メールをしてくれていたのでした。「旅行中は大半が洋上。多分音信不通状態になると思います」と、出発前に知らせておいたにも関わらず……。
神戸港に寄港する前に横浜港で入国手続きをしたのですが、入国前、全員の検温が2回行われたことと、横浜、神戸上陸の際、マスクが配られ、着用しての下船が義務づけられたことぐらいが、コロナウィルスから受けた影響でした。
横浜港には着岸地点から離れたところに、私たちが乗船した「オーシャンドリーム号」より、はるかに立派な「ダイヤモンド・プリンセス号」が、停泊していましたが、それでもまだ世間がコロナウィルスで大騒ぎになっているとの実感はありませんでした。事の重大さを知ったのは、帰宅して新聞を見てからでした。
私たちの「オーシャンドリーム号」による「ピースボートの旅」は、神戸港を出港して一つめの寄港地が中国厦門。そこから300人を超える、シンガポール、上海、モンゴル、北京、台湾、韓国等からの乗客が合流していたのですが、幸いにもそれは、2019年12月26日……コロナウィルス騒ぎが起こるずっと前だったのです。
自主企画「脳出血からの再生」自作エッセイの朗読
「不自由なりに楽しめる旅の在り方の模索」。これが今回の船旅での私の目的の一つでした。
寄港地からのオプショナルツアーによる観光地への遠出、船内でのダンスや体操などの毎日の教室、洋上運動会などのさまざまな行事。寄港日以外にも、飽きないような工夫が盛りだくさん。けれども右半身麻痺の私にとっては、参加しにくいものがほとんどでした。何とか自ら楽しめる工夫をと、出発前から入念に準備しておいたのが、自主企画による「脳出血からの再生」をテーマにした自作エッセイの朗読。
船内を探索して、静かでこぢんまりとした部屋を見つけたおいた上で、希望場所と日時の調整をする「自主企画申請広場」なるものに参加。担当の方がとても上手に調整してくださって、希望していた3日間すべて、希望通りの部屋を確保することができました。自主企画の日時、場所は、3日前に決まり、前日の夜に各部屋に配布される「船内新聞」で、知らされます。
病後は大勢の人の前で、朗読はおろか、話もしたことがありませんでした。10人ぐらいの方が来てくださったら充分と、夕食で顔見知りになった4組のご夫妻他数名の方に、手書きの案内書をお渡しし、「よかったら聞きに来てください」と、お願いしました。
すると翌日、乗船1日目の夕食で同席した方が、「いい思い出になると思うので、よかったらビデオを撮りましょうか」と、声を掛けてくださったのです。当日は、同じ日に同席した別のご夫妻も、また、親しく話をするようになっていた別のご夫妻も、早くから会場入りして設営も手伝ってくださいました。開始時刻までには、次々と参加してくださる方が増え、狭い部屋に入りきれないほどの方が集まり、初めての、私の拙い「朗読会」が始まりました。
腹式呼吸を使って、ゆったりと大きく、長く声を出すことがまだ難しいので、1回目は発症からSCUで過ごした10日間までをまとめた、たった15分間の朗読会でした。しかし、涙しながら聞き入ってくださる方も多く、3回目までには、延べ90人以上の方が参加してくださいました。朗読会の後、声を掛けてくださる方が一気に増え、船内の生活は、彩り豊かなものになりました。
いい人生はいい人間関係の中で築かれます
‟いい人生はいい人間関係の中で築かれる”
本当にそうなのです。長いと言えば長い約2か月の船旅。でも人生の中では、ほんのひとときにしか過ぎない旅の間でも、いい人間関係は生まれるのですね。そうしてそれは、幸せをもたらしてくれるのです。
ビデオを撮ってくださった方は、早速そのビデオを共有するためのメールを送ってくださいました。涙ながらに3日間聞いてくださったご夫妻は、早速九州の自宅に帰る前に、私たちのログハウスへ、泊まりに来てくださいました。
出発前には予想だにしていなかった、船旅で得られた喜びでした。
次回のテーマは、「エッ!ニュージーランドへ行かない!!」
そんなことがあり得る? と誰しもが驚いた、今回の第103回ピースボートクルーズ最大のハプニングについて書きたいと思います。
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