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- 災い転じて福となす。バヌアツで出合えた美しい景色
2016年、C型肝炎を克服してわずか21日後に脳出血になったharumatiさん。生活の3本の柱の一つという「旅」に復帰するために選んだのは約2か月間のクルーズ旅行でした。今回は、予定されていなかった寄港地、バヌアツでの旅行記です。
何の期待もなく、予定外に訪れた2つ目の地
久しぶりに安定した晴天、ぐんぐん上がっていく気温、まさにハルメク気配の中で、ウグイスが、ホーホケキョと盛んにさえずっています。
ところで、船旅に行くと決めたとき、私はどんな期待を抱いていたのでしょうか。1年前までさかのぼって、ハルメクWEBに書いた記事を、改めて読み返してみました。
「第103回ピースボートミドルクルーズ―地球の鼓動を全身に感じるオセアニアの船旅へ」を特集した、GLOBAL VOYAGE(発行(株)ジャパングレイス)が初めて手元に届いたのは、2019年2月。約1年前でした。そのことに触れながら、私はこんな記事を書いています。
「送られてきた冊子の中でひときわ輝いて見えたのは、ニュージーランドのミルフォードサウンド。日本から乗船してきた船のまま、半日かけて断崖絶壁の間を進む」と、写真を載せて紹介し、「私の胸は高鳴った。体力をつけよう。不自由であっても楽しめる内容、方法を研究しよう」とその文を締めくくっています。2019年3月に書いた記事です。
これまでのどの記事を読み返してみても、訪れる予定の南太平洋の島々(ニューカレドニア、ガダルカナル、ラバウル)への期待らしきものは、一切書いていません。海のアクティビティとは無縁の身となってしまった私にとって、船に乗ったまま、海ならではの醍醐味を味わえるニュージーランドのミルフォードサウンドは、とりわけ魅力的に思え、楽しみにしていたのでした。
それなのに、予定外に訪れることになった2つ目の地は、よりによって83の島々からなるというバヌアツ。これまで名前も聞いたことがない熱帯の島。早朝に島が見えてきました。着岸地は首都ポートビラ。熱帯雨林がうっそうと茂り、それ以外は何もないように見えます。
バヌアツの旅の始まり
島国では、それぞれ通貨が違うので、下船したらまず両替をしなければなりません。港のゲートを出たところに、臨時両替所が用意されます。その向こうには、タクシーがズラリ。公共交通機関はないので、どこへ行くにもタクシーを利用しなければなりません。クレジットカードは使えそうにもありません。
混み合うのを避けて、遅がけに両替所に並んでいたその時、「300A$(オーストラリアドル)で1日観光の6人乗りタクシーと交渉ができたのですが、あと2人足りません。どなたかご一緒に行きませんか」と呼びかける声が聞こえてきました。
タクシーといってもその多くが6人乗りのバン。もし夫と二人だけで乗るとすれば、2人で300A$。便乗させていただけるなら、2人100A$ですみます。思わず、「ご一緒させてください!」と声を張り上げました。声を掛けてくださった方をリーダーに、運転手さんを紹介してもらい、自己紹介をし合って、出発! こうしてバヌアツの旅が始まりました。
バヌアツは、文字通り手つかずの自然が残る楽園でした
タクシーにクーラーは、付いていないので、窓を全開に。熱帯の熱い風が吹きつけ、髪はクシャクシャ。目が痛くなるので、目を閉じたままデコボコの地道を走ること約30分。脇道にそれて熱帯の木々が生い茂る中を少し行くと、特に観光地らしき看板もない、丸太で作ったゲートがありました。(こんな所に何があるのだろう)と思いながら、15A$の入場料を払ってゲートをくぐると、そこに開けていたのは目を見張る美しさのコバルトブルーのラグーン。
その一部を囲って、生き物の負担にならないように現地の方の監視の下、ヒトデやウミガメと親しめるようにしてあります。大きなヒトデを、頭に乗せたり体中に貼り付けたり、ウミガメに餌やりをしたりして写真を撮り、楽しむことができました。
次は、クルーズ船内に用意されていたタブレットで、夫が調べておいた滝へ。やっぱりデコボコ地道を、窓を開けたまま走るのですが、もうちっとも苦になりません。今度はどんな美しさ、珍しさに出会えるのだろうとワクワク感でいっぱいです。
再び、脇道へそれて熱帯の木々の茂みの中に入り、観光地らしいものは何も見当たらないところで車を降りると、やはり15A$の入場料を払って、さらに深い茂みの中の細い道に入りました。そこで見たのは、湧水の池。底の底まで透き通っている水に、周りの木々や空が映り込み、まるで、映画「The Road of the Rings(ロード・オブ・ザ・リング)」のエルフの世界のような美しさです。
そこからは、急な山道。夫にすがりつくようにしながら10分ほど歩くと、空がパッと明るく開け、いきなり大勢の人たちが登場。そこは滝壺でした。大人も子どもも、何の設備もない中で、自然に溶け込んで水や木と戯れています。私は、歩行が限界に来ていたので、滝を見に行くのは諦め―というよりも、人と自然が一体となったこの場の雰囲気に圧倒されて、しばらくその様子を見ておくことにしました。
帰り道には「Free Restaurant」と、小さい看板を掲げている場所がありました。現地で採れたフルーツを、自由にいくらでも食べられるように次々にカットしてテーブルに並べてくれます。マンゴー、スイカ、バナナ、マンゴスティン、初めて見るので名前も覚えられなかったもの等、すべてが正真正銘の無農薬のオーガニックフルーツ。そのおいしかったこと。一緒に行った仲間とおなかがいっぱいになるほど食べました。
バヌアツの旅で最後に立ち寄ったのは、ポートビラ随一の観光地である「ブルーラグーン」。ピースボートのオプショナルツアーの人たちもここに来ていて、混み合っていました。潮の干満で、海水と淡水が混じり合うことによって生まれる美しい青。老いも若きも水着になって、その青を満喫していました。
最後に免税店などがあるという中心部に行ってもらいましたが、その日は日曜日。1つのスーパーマーケット以外見事に閉まっていました。(いいことだなあ)と妙に感心しながら、スーパーで、現地通貨を使ってしまうべく、アイスクリーム、チーズ、クラッカー、マンゴー等を買って、船に戻りました。
期待していなかっただけに、「災いを転じて福となす」感を強くしたバヌアツの旅でした。
まだ他にも「災いを転じて福となす」出来事がありました。それは、メルボルン訪問でのこと。次回はそのことを書きたいと思います。
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