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- 友人との再会がよりよい形に!メルボルンの思い出
2016年、C型肝炎を克服してわずか21日後に脳出血になったharumatiさん。生活の3本の柱の一つという「旅」に復帰するために選んだのは約2か月間のクルーズ旅行でした。今回も引き続き、旅行記をお届けします。
海外旅行を終え、改めてかみしめる日本に暮らす幸せ
私の生活の1本目の柱である「ボランティア活動」に復帰するために、その拠点となるログハウスの玄関前階段に、夫と息子の手で手すりが付けられたのは、ちょうど3年前2017年の3月でした。
そのログハウスに、この春もまた、9人もの漁業体験希望者が集まってくれました。船旅出発直前の2019年11月末に申し出があり、船旅を終えて一段落した3月22日・23日。教育大学の授業の一環としての漁業体験に、これまで何回も来てくれていた学生さんが、今は高等学校の先生となり、小・中・高の先生たちや後輩の学生さんたちを誘って来てくれたのです。
海を相手にした活動、ログハウスのバーベキューサイトでの海の幸の食事……新型コロナ禍を避けるには持ってこいの設定です。私自身の行動は限定的ではあるものの、若者と一緒に過ごす2日間は、活気あふれる楽しいものとなりました。
ログの庭では、木蓮が例年より早く花盛り。鰤(ブリ)漁最盛期の港には、1700本もの鰤が揚がり、おこぼれを狙う、海鳥が青空に舞います。そんな風景の中で、私は、日本に暮らす幸せを改めてかみしめます。
「禍を転じて福となす」まで
大幅な航路変更となった、今回の第103回ピースボートの旅。ニュージーランドへ行けないというショック以外にも、(ワアどうしよう)と追い詰められた気持ちになってしまったことがあります。それは、1月15日の予定だったオーストラリアのメルボルンへの入港が、3日遅れの1月18日になってしまったことです。
メルボルンには、大きな楽しみが待っていました。かつて東京で娘と一緒に雑誌社で働いていたオーストラリア人の親友Lと、1月15日に会う約束ができていたのです。メルボルン観光をしてから、電車で彼女の職場であるサウスメルボルンマーケットへ行き、ランチを共にしようという計画でした。
私と彼女はWi-Fi環境がなくても連絡が取れる、携帯のSMS(世界中どこでも70文字100円という便利なもの)で連絡を取り合おうと約束をし、出発前にテストも済ませていました。洋上でもよほど陸地と離れない限りしっかり電波のアンテナが立っていて、かなり広範囲がカバーされているようでした。
当初、フリーマントルでの遅れを取り戻すために、アデレードを飛ばして、メルボルンへは予定どおり1月15日に着くと知らされていたので安心していました。ところが、1月14日になって、アデレードに寄港してからメルボルンに行くことにしたので、メルボルン入港は1月18日になると発表されたのです。航路変更を知らされたのは、当然ながら洋上。
大急ぎで彼女に連絡しなければと思い、スマホを手に取ると……電波のアンテナが1本も立っていません。陸地を大きく離れてしまっていたのです。私は焦りました。何としてもその日のうちに連絡を取らなければなりません。
私は、手足をもぎ取られたような気持ちになりながら、航路変更に伴って起きたこの問題の解決は、運営会社のジャパングレイスにお願いするしかないと考え、すぐに責任者の方に部屋に来てもらい、事情を説明して連絡を取ってくれるようお願いしました。
「わかりました。すぐに連絡を取らせていただきます」との返事。
翌朝(すなわち、会う予定だった1月15日)部屋のポストに、その方とLとのメールのやりとりをプリントアウトしたものが届けられていました。
Lの返信メール
「メールありがとうございます。予定変更のこと、了解しました。実は今日、山火事からの煙がひどいから、予定が変更になってよかったと思います。~中略~18日は土曜日ということで、一日中空いているので、町を一緒に歩いたり、実家に来てもらったり、どっちも/どっちか可能です。~後略」
こうして、山火事に続く大雨のさなかに訪れるという禍を逃れ、しかも1日中彼女に付き合ってもらえる土曜日に、美しいメルボルンを訪れるという福を得たのでした。「禍を転じて福となす」もう一つの出来事です。
現地在住の彼女と一緒だったからこそできた体験
当日、彼女は港まで迎えに来てくれました。電車の駅は港のすぐそば。電車の便がよく、無料区間も多いメルボルンですが、電車に乗るためには、まず「マイキーカード」を買わなければなりません。
日本にはないシステムなので、ちょっとややこしいなと思っていたら、さすが、地元のL!「カード代が6A$かかるので、1日しかメルボルンにいないharumatiさんが持っていても仕方ないカードなので、私が買います」と、購入してくれたのです。
混み合っていない電車にゆったり座って約20分。世界遺産「王立展示館」&カールトンガーデンへ。乾燥の激しいメルボルンのこと、水分補給が欠かせません。案内してもらって買い求めたミネラルウォーター片手に、豊かな緑の中のベンチで、10年以上前、我が家やログハウスに来てくれた思い出や、近況を語り合いました。
それから、駅に戻って別の路線の電車に乗り、彼女がキュレーターとして働いている「サウスメルボルンマーケット」へ。おすすめのオーガニックの店で、混じり気のない手作りのピーナッツバターを試食。おいしい! 今までに味わったことのないおいしさです。大きい瓶に詰めてもらって、息子へのお土産に買い求めました。
次は、マーケットのテラスにあるオーガニックのレストランへ。サンドイッチ、サラダ、カプチーノなどを注文して待っている間に出てきた水のボトルを見てびっくり。ハーブやレモン、キュウリまで入っているのです。思わずごくごく飲んで、生き返る心地がしました。
彼女が職場に車を置いているとのことで、待つこと3分。次は、実家へ案内してもらうことになりました。広くて混み合っていない幹線道路を走ること約1時間。閑静な住宅街の一角の、広い庭のある家が、彼女の実家です。まず紹介されたのは、オーストラリアの固有種、小型の有袋類ポッサムでした。
彼女の家の軒下に親子で住み着いているとのこと。普段は靴を脱いで生活している清潔に整えられたリビングに、「靴のままでいいですよ」と通してもらい、日本から持ってきたお土産を手渡すことに。宇治抹茶のカプチーノ、母から譲り受けていた帯揚げ、帯〆等。あのしなやかな絹の手触り、深い染めの色、美しい日本の古代色。私はもう和服を着る機会もなくなってしまったけれど、これまでも世界中の生地の特性を生かして素敵な洋服や小物をデザインしてきた彼女なら、きっと生かしてくれるに違いないと、受け取ってもらいました。
そして彼女がコーディネーター兼モデルを務めた「メルボルン案内~例えばこんな歩き方~」という旅行案内書を見せてもらいました。もっと長く滞在できたら、もっといろいろ見られるのにと思いつつ、帰船リミットの時間が迫ってきたので、お暇しなければなりません。
最後に、庭に餌をまいて、オーストラリアの固有種「キバタン」(野生のオーム)との対面を叶えてくれました。オーガニックの食べ物、野生動物との共生、人口密度の低さなどが、オーストラリア人の大らかさを育んでいるのだなあと思いながら、彼女の車で港まで送ってもらい、船に乗り込み、全く疲れることのなかった1日が終わりました。
次回は、船内で仲良くなったご夫妻と共に回った、アデレードとタスマニアについて書きたいと思います。
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