落語会体験記

落語自由自在14~横濱小せん会・夏の陣~

公開日:2019.10.22

更新日:2019.10.24

2019年7月に「横濱小せん会」に行ってきました。年2回横浜にぎわい座で開かれる小せん師匠主催の会です。前回は2月でしたので、この会は夏の陣としてご紹介いたします。

期待のニューフェイス 鈴々舎美馬さん

落語会

「元犬」 鈴々舎美馬(れいれいしゃ みいま)
長い見習いを経て、明日より寄席の楽屋入りをする鈴々舎一門のニューフェイス美馬さん、今日は初高座です。

近頃女性噺家が増えましたが、美馬さんもその一人です。初めてとは思えない程の落ち着いた話しぶりに、まずは驚きました。時折笑いを取り、江戸屋猫八さんに教わったのかと思うぐらい、犬の鳴き真似が上手でした。また一人先が楽しみな噺家さんを見つけました。

失敗を笑いに変える、柳家あお馬さん

「黄金の大黒」(きんのだいこく) 柳家あお馬
小せん師匠の御弟子さんで、二月に二つ目になり早5ヶ月、ますます噺家らしい雰囲気になってきました。実はつい先日Twitterで会話をした時、僕は失敗した高座が中々忘れられなくてと嘆いていました。失敗を笑いに変える技術は、誰にも負けないの間違えではと、私は深読みしました。言い間違えや、言葉が出にくいことは、誰でもありますが、あお馬さんは前座の頃から、それを逆手にとって咄嗟に笑いに変えています。そんな時は、人気絶頂の喬太郎師匠に似ていると、私はいつも思っています。

「先日ホームパーティーに呼ばれまして、人狼ゲームをすると言うので、YouTubeで調べたら、市民と狼に分かれてそれを見破るゲームでした。あんまりやりたくはなかったのですが、折角呼んでいただいたので行きました。そうしたら、楽屋でよくお見かけする師匠方がいらしていて、その中にうちの師匠がいたんです。帰ろうかと思いました」で大爆笑です。
「市民と狼になって騙し合うんですよ。人間不信に陥りますから、あんまり師弟ではやりたくないですよね。案の定、師匠と泥仕合をしてしまいました」と、客席を笑わせ、テンポ良く話を進めていきます。

長屋の住人達を上手に演じ分け、大家さんとのやり取りも可笑しく、「こんちは~サイナラ~」でサゲるとは何とも楽しい「黄金の大黒」でした。

タブーネタもなんのそのの、柳家小せん師匠

「お血脈」 柳家小せん

「お血脈」 柳家小せん
「飲み会に出ただけでギャラが貰えたらいいですね。」いきなり、吉本の闇営業の時事ネタをぶち込んで笑わせます。「高座でやってはいけない話は、政治・宗教・プロ野球と教わりました。選挙が近いですが、高座であの先生に入れてください。なんて頼んだらおかしいですよね。さあ皆さん信ずる神に祈りましょう。これもどうかと思います。ここは横浜だから、ベイスターズの話しをしても、興味のない人もいますものね。だから、政治・宗教・プロ野球は駄目なんです。で今日は宗教の話をします」でドカンと笑いが弾けます。石川五右衛門がお風呂の中で歌ったりして、師匠ならではの脚色で、笑いっぱなしの楽しい「お血脈」でした。

さすがの小せん師匠でした

「唐茄子屋政談」 小せん

「この時期の小せん会は、夏真っ盛りですから夏の話『唐茄子屋政談』にしようとネタ出しをしましたが、こんなどんよりとした天気でね。去年は去年で台風直撃で、電車が止まったらいけないから、会はやるけど無理はしないでね。と、言ったら、みんな無理してくれなくて」で笑わせます。

「実は私も退院直後の夫に無理をさせられなくて、予約をしていたのに、師匠にお断りのメールをしてしまいました。ごめんなさい)」と一年前を振り返りながら、いよいよ「唐茄子屋政談」に入ります。この噺、情けは人の為ならずというのがテーマです。放蕩三昧だった若旦那が、唐茄子屋になり人助けをしたことで、おかみからご褒美を受け、親からも勘当を許されるという、言わば人情八百屋物語です。途中で唐茄子屋の売り声を、若旦那が練習するシーンは、若旦那の独白と売り声が交互に入り、新内の「蘭蝶」まで歌うという素晴らしい演出でした。心に染み入る絶品でした。

実は「唐茄子屋政談」は、以前別の話し手さんのものを聞いたことがありました。そのときは暗くて救いようのない噺に仕上がっていて、正直途中から耳をふさぎたいような気持ちになりました。しかし、話し手によって演じ方が多少違うので「小せん師匠のはどうかな?」ぐらいの気持ちで、あまり期待はしていませんでした。

でも、さすが小せん師匠。得意の喉を生かして歌ったりと盛り上げていました。貧しいおかみさんや子どもたちを見る目が温かくて、これでしたら何度でも聞きたいと思いました。同じ噺でも、演者によって随分印象が変わるものだと改めて思いました。

今後も、落語をレポートしていきますね。

 

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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