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花やリボン、シナモンなどのスパイスを駆使して作られるブリオンフラワーの創作過程や、作品に込められた思いなどについてでんさんが紹介していきます。今回は少しブリオンから離れて、梅雨の季節の思い出を語ります。
梅雨の合間の風景
梅雨の晴れ間。何処までも澄んだ青空。
白いレースの日傘。
白い半袖ブラウスに、黒いタイトスカート。
まるでモネの「日傘の女」のような女性が、細い道を歩いていく。私が小学校に上がる前だから、4、5才頃の風景だと思います。
時々振り向いては「大丈夫?」「疲れた?」と声をかけては、木陰を探し一休みをします。以前紹介した私の母です。
山の中腹にある家からバス停迄山を降り、バスを乗り継いで母の実家に遊びに行くのです。
細い道は何処までも続いているかのように見えて、あちら此方に昨日まで降っていた、雨の名残の水溜まりがあります。まわりは桑畑が続きます。
水溜まりを飛び越えたり、桑畑でかくれんぼしながら歩く兄と私は中々前に進めません。いつもタクシーで通る道を歩いたものですから、未知を旅する冒険者のようで、楽しく嬉しかったです。
昨日の雨が嘘のように太陽が照りつけ暑かったです。
それは母の額の汗を見て、そう記憶しているのでしょうね。現代よりずっと温度は低かったはずですし。
実際私はいつもの道とは違う、興味深い草むらや林の中で、嬉々として走り回っていましたから……。実は暑かった記憶は曖昧です。
今その道を通ると、青空はそんなに高くなく、道は舗装され、冒険できるほどの広さは感じません。こんなに狭かったかしら?
バス停からもそう長くはない距離です。
子供の頃の感覚は何と不可思議な物なのでしょう。
母の里帰り
母が実家に帰れるのは、小正月、農上がり、お盆でしたから、この日は農上がりと言われていた田植えの終わった後なのです。
母の実家に行くと、私の曾祖父が台所の「上がりはな」という所で座って待っていてくれます。
「おう、おう、坊良く来たなぁ」
いつも同じ言葉で出迎えてくれました。
男女問わず「坊」でしたから、9人の孫は皆「ぼう」です。
一番遠くに嫁いだ姉は九州から、他の兄妹は県内から集まり、2泊しましたが、季節柄毎年雨模様でした。
雨ですと外遊びができませんから、夜みんなでてるてる坊主を作り縁側の窓に吊るします。
好きな端切れで作るので、赤有り青有り、カラフルなてるてる坊主が沢山できて、子供達は大喜びでした。
てるてる坊主そのものに喜んで願いが足りなかったせいか、次の日が晴れたのは1度か2度くらいだけだったと思います。
当然今回も雨でした。
しとしととうっとうしい梅雨も、あの頃は大好きでした。
1番の遊びはかくれんぼ。広い家の中、隠れる所は事欠きません。中でも皆のお気に入りは押入れの中。
ジットリと蒸し暑いものの、宝箱の中に居るかのようでしたから、時間のたつのも忘れます。
母の兄の勲章や軍刀、綺麗な絵等があり皆でうっとり眺めていました。そしていつのまにか眠ってしまうのがいつもお決まりのコース。
母達に起こされておやつの時間。
まだ窓の外は雨です。
そんな私達は、あっという間にもう60才を過ぎています。
懐かしい、子供の頃の梅雨の季節の記憶です。
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