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- 心に残る、きものからきものへのリフォーム
和服をいろいろなものにリフォームしているやまきさん。毎回過去に手掛けた作品と、その背景にある物語をつづってくださっています。今回はきものからきものへリフォームした作品のうち、思い出深い作品を紹介していただきました。
母の裾模様のきものを黒のコートに
町内の神社の祭礼では獅子舞が奉納されますが、子役の衣装やその付き添いの母親のきものには競うような風潮があった50年前、妹と弟が同時に獅子舞に出ました。その時新調した母のきものは、藤色に蘭の地紋が優しく浮かび出て、裾は小豆色が流れるようにぼかしてあり、「ああ、きれい」と思ったものでした。獅子舞いの後も母が慶事に着る定番となり、いつか私が譲り受けたいと思っていました。
やがて着る機会に恵まれ、久しぶりにたとう紙を開くと思っていたよりずっと赤かったのです。着用後黒に染め、和服用のコートに仕立てました。大好きな一枚です。
大叔母の紬を孫息子のアンサンブルに
和服で生活していた大叔母は「お医者さんに行く」と言って「外出用」のきものに着替える人でした。和服では診察を受けにくいだろうと思うけれど、そのことを尋ねたことはありません。そんな外出用のきものは解かれて洗い張りされ、その一つをいただきました。
見せてもらったときすぐに、誕生したばかりの孫息子のアンサンブルにしたいと思いました。裏、表とも色、模様は同じですが、よく見ると、模様の色が濃淡になっていました。そこできものと袖なし羽織の裏表を替えて作りました。上の写真を見てください。袖なし羽織の柄が黒っぽいのがわかるでしょうか?
半襦袢は肩裏で、帯は畳のヘリで作りました。近隣のきもの祭りや、七五三、ひな祭りなどに着用しました。
総絞り羽織を一つ身と被布に
小学校の同級生の友人とは、たまたま夫同士が高校の同窓生(夫同士に面識はない)。私は地元、彼女は夫の地元で暮らしていて、それぞれの自宅を訪問する機会があります。彼女のお父さんはきものがお好きで、ひ孫娘の誕生を喜ばれ、新たにきものを作りたいといわれたそうですが、友人は「持っているきものを活用したい」と言います。
私は、羽織から一つ身と被布ができることを知っていたので、彼女の未着用の総絞りの羽織で作ることを提案しました。私は和裁を習っていますが、絞りは上級過ぎて縫えません。ですので、和裁の先生が作ってくださいました。残り布で巾着と髪飾りもできました。お父さんはそれらを手に取って喜ばれ、友人のために羽織を作ったときのお話をされて、それはそれはうれしそうでした。そのお父さんは昨年亡くなられ、形見の大島のアンサンブルは友人の着物とコートに作り替えられたそうです。
叔父の大島の羽織を弟の作務衣に
昨年、父(故人)の二人の弟が相次いで亡くなりました。冬に亡くなった叔父はアンサンブルを着て(私が縫いました)、夏に亡くなった叔父はアンサンブルのきものだけを着て往(い)きました。先日この叔父の羽織を形見にいただきました。弟の外出用の作務衣に仕立て直します。
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