きれいな心で、わがままに生きるには?

草笛光子92歳!老いと闘わず「そのまんま」で生きるコツ

草笛光子92歳!老いと闘わず「そのまんま」で生きるコツ

公開日:2025年12月20日

草笛光子92歳!老いと闘わず「そのまんま」で生きるコツ

長年マネージャーをしていた母との合言葉、「きれいに生きましょうね」を、ずっと人生のモットーにしてきたという草笛光子さん。「きれいな心でいることをまっとうしたい」と語ります。

草笛光子さんのプロフィール

くさぶえ・みつこ
1933(昭和8)年神奈川県生まれ。50年松竹歌劇団に入団。53年に映画デビュー。日本のミュージカル界の草分け的な存在で「ラ・マンチャの男」「シカゴ」などの日本初演に参加。舞台、映画、ドラマの第一線で活躍を続け、芸術祭賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀女優賞・芸術栄誉賞、菊田一夫演劇賞特別賞、毎日芸術賞、日本アカデミー賞優秀助演女優賞・会長功労賞など受賞多数。90歳で主演した映画「九十歳。何がめでたい」が大ヒットし、日本アカデミー賞優秀主演女優賞、日刊スポーツ映画大賞主演女優賞を受賞。

きれいな心でわがままに生きる。それが一番ですよ

老体に鞭打って…映画に主演!

2024年公開の映画「九十歳。何がめでたい」で、作家の佐藤愛子さん役を見事に演じた草笛さん。2025年、御年91歳にして日本アカデミー賞の主演女優賞を受賞しました。

「受賞の知らせを聞いたとき、まわりがやたらと喜んでいましたね。私は『まあ、年齢が上だから、いただけたのね』なんて憎まれ口をたたいたりしましたが(笑)、内心は喜んでいるの。みなさんから『おめでとう』って言われるのは、年なんて関係なく、うれしいものですよ。

90代ともなるとね、カッコつけたり遠慮したりせず、もらえるものはありがたくもらっておこうと思って(笑)。だから、ありがとうございますと両手を出して、素直にいただくことにしました」

草笛さんは2022年に、映画「老後の資金がありません!」で日本アカデミー賞の優秀助演女優賞と会長功労賞を受賞しています。

「実は、そのときにステージ上のスピーチで『今度は主演女優賞で戻ってきます』と言ったそうなんです。私はまったく覚えていないんですけど、勢いで言っちゃったのね。だから、これで3年越しの有言実行。嘘つきにならなくてよかったです(笑)」

老体に鞭打って…映画に主演!

 

さらに、草笛さんは2025年の映画「アンジーのBARで逢いましょう」でも主演。90歳を過ぎて主演作が続き、「老体に鞭打って、とはこのこと」と笑います。

「この年になって立て続けに主演映画に出合えるとは思っていませんでした。いい意味で気負うことなく演じられましたね」と草笛さん。ミュージカルの主演経験は豊富ですが、意外なことに、「九十歳。何がめでたい」が初の単独主演映画だったといいます。

「若い頃、大先輩の原節子さんの主演映画に出演していて、撮影現場でとても親切にしてもらった思い出があります。妹役の私にお化粧のやり方を教えてくださったり、愛用されているあぶらとり紙をくださったり。原さんはいつも凛とされていて、さりげなくまわりを気遣える方でした。

私も主演なんだから原さんのように振る舞いたかったんですが、そんな余裕はなく、まわりを気遣うどころか、自分よりずっと年下の共演者やスタッフに、これでもかと気遣われる始末(笑)。年のせいとかではなくて、主演らしく凛としていられる性格じゃないのね、きっと」

90歳を超えたら、人になんと思われてもいい、勝手にしやがれです(笑)

映画「アンジーのBARで逢いましょう」で草笛さんが演じるのは、突然町にやってきて、いわくつきの物件でBARを開く謎多き“お尋ね者”のアンジーです。

「どこからともなくやってきて、いろんな人を巻き込んで自由気ままに生きているアンジーは好きですね。こういう“訳アリ”の役をずっとやってみたかったので、死ぬ前にできてよかったです(笑)。

私も90歳を超えたら、人になんと思われてもいい、勝手にしやがれと思うことが多くなりました。これから先の人生は、アンジーみたいに好き勝手に自由に生きようって思っています」

そんな草笛さんが今、心も体も健やかでいるために心掛けているのは、「“そのまんま光子”でいること」だそう。

「以前は『老いとはおっくうとの闘い』と言っていたんですが、年々おっくうに軍配が上がることが多くなり、最近では闘うことをやめました。抗うことなく“そのまんま”の自分を受け入れたら、気持ちも楽になりましたね。外面も内面も着飾ることなく、きれいな心でわがままに生きる。それが一番ですよ」

取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、撮影=中西裕人、ヘアメイク=中田マリ子(ヘアーベル)、スタイリング=市原みちよ 

※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年5月号を再編集しています。                                   

HALMEK up編集部
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