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2024年05月17日

【シリーズ|彼女の生き様】キャシー中島 #2

結婚45年、円満の秘訣は心で紡いだ「夫のトリセツ」

こんなこと言ったら彼はどうするだろう きっと悲しむだろうなって。 そうするとブレーキがかかっちゃう、 不思議なくらい自然に。

目次

一番大変なのは“夫の世話”
それでも“ふたり”を選ぶ理由は

夫(俳優の勝野洋さん)と結婚して45年。今は娘の家族と二世帯住宅で暮らしていますが、基本は夫婦二人の生活です。みなさんもそうだと思いますが、やはり一番大変なのは夫の世話ですよね。

この前、風邪を引いてなかなか治らなかったんです。夫は「大丈夫?」って優しく聞いてくれたり、体調を心配してキルト教室に迎えに来てくれたりするんだけど、こうも言うの。「今晩、俺のご飯、どうするの?」って。

こっちは熱でふーふー言ってるのに! 冷蔵庫にある材料で、なんとか納豆チャーハンとキムチ炒めかなんかを作りましたが、ひどいでしょ? まあ、朝ご飯は夫がいつも作ってくれるんですけどね。クレソン、めかぶ、納豆、目玉焼きなど、彼がこだわる健康志向の内容で、いつも同じメニューですが(笑)

最近はどうも心の声が口から漏れているようなの。自分では気付いていないのだけど、台所で洗い物をしながら、「ひどいよね」なんてブツブツ言ってるみたい。「何か言った?」って、夫によく聞かれます。娘からは「聞こえてるよ、ママ」って(笑)。抑えきれずにあふれちゃってるのね。

でもね、それでも私たち夫婦のテーマは“いつも二人で”なんです。旅行に行くのも、どこに行くのもできるだけ一緒。今年も日本1周と台湾行きの船旅を2つ計画しています。船の旅って逃げ場がないから、ずっと二人なのよね!

 

『Aloha nui loa キャシー中島・51年目のキルト作品集』(大和書房刊)より©斉藤亢

あれは70代に入る、ちょっと手前くらいだったかしら。いつか、どちらかが先に逝くんだろうなって感覚を持つようになりました。一緒にいる時間はだんだん短くなっていると、肌で感じています。だから、一緒にいたいし、いられる時間は大事にしよう、と。そう思うとね、仲良くできちゃうんです。それに彼は友達が少ないから、私が付き合ってあげるしかないのよね(笑)

私は望んで夫と結婚しました。付き合って1か月で婚約発表、3か月後に籍を入れました。お互いによく知らないで結婚して、よく知らないで父親と母親になっているのね。だから子育てが終わってからの方がお互いのことをよく見ているし、向き合っていると思うんです。

もちろん、“このヤロウ!”と思うことがないとは言いませんよ。ないことはないけど、想像しちゃうのね。こんなこと言ったら、彼はどうするだろう、きっと悲しむだろうなって。そうするとブレーキがかかっちゃう、不思議なくらい自然に。

7歳の頃のキャシー中島さんと母

人を悲しませないことが
自分を守る知恵だった

そういう想像力は、多分、子どもの頃に身に付いたものだと思います。

私は小さい頃、母が一人で働いていたので、人に預けられていた時期があるんです。好かれようとまでは思わないけど、嫌われたくはない。そんな気持ちがすごくあって、ここでこの人にこんなこと言ったら、こんなふうに思われるだろうなって想像しちゃうようになったんです。きっと、子どもながらに自分を守る知恵だったんでしょうね。

みなさんもそうだと思いますが、長年一緒に暮らしていたら、夫がどんなことを考えているか、何をしようとしているか、だいたいパターンがわかるようになりますよね。だったら、うまくコントロールした方が絶対にいい。そう、自分なりの“夫のトリセツ”で。そうすれば中高年以降も、夫婦二人、豊かな気持ちで暮らせるんじゃないかしら。

例えば、外で女同士でおしゃべりした後は、クッキーの一つでもいいから買って帰ってあげるの。「あなた、このクッキー好きかなと思って買ってきたのよ」と。それだけで、次のお出掛けも気持ちよく送り出してくれるから(笑)

レストランで待たされると、夫がイライラしてくるのも、妻なら空気でわかるでしょ。そんなときは、そっとお店の人にお願いする、夫に「もう少しですって」と声をかける。そうやって自分が先回りすれば、夫も怒らずに済むし、場の雰囲気も壊さずに済む。その後、楽しくお食事できますよ。

夫婦は“空気”なんて寂しい!
一生、かわいい女でいたい

私は長年、夫婦でいてもお互いを“空気”みたいに思ったことはないです。夫がいれば、いることを意識して、お腹を凹ませています(笑)。夫も、私が自分の前ではかわいい女でいようとしてくれているってわかるから、ちゃんと女性として見てくれるんだと思います。

私はね、夫より3日くらい早く逝きたいと思っているんです。遺されるよりはいいから。ま、1か月でもいいかな。電気代や水道代がいくらかかるか、税金がどうなっているかとか、そういったことも一度は自分でやってみてもらいたいから、ね(笑)

自分もいつかは死ぬ、そのことを私は全然恐れていません。好きに生きてきて、楽しいことをいっぱいさせてもらっているから。それに“向こうの世界”があるかどうかわからないけれど、先輩たちが先に逝ってますからね。

もちろん最愛の娘も。その時が来たら、きっと娘が迎えに来てくれると信じているんです。

娘に褒められるよう、がんばらなくっちゃ。そんな気持ちで毎日を送っています。

取材・文=佐田節子 写真=中西裕人
構成=長倉志乃(ハルメク365編集部)

キャシー中島

きゃしーなかじま

 

ハワイ・マウイ島に生まれ、3歳のころから日本で生活。1969年モデルとして芸能界デビューする。その後テレビタレントとして活躍。パッチワークスクールを主宰し、後進の指導に励んでいる。最新刊『Aloha nui loa』(大和書房)ほか多数。2024年3月には東京・三軒茶屋にカフェ「キャシーマム」をオープン。

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

「今日も明日も、楽しみになる」大人女性がそんな毎日を過ごせるように、役立つ情報を記事・動画・イベントでお届けします。

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