【ラジオエッセイ】だから、好きな先輩25 アガサ・クリスティ
2024.12.172023年07月22日
随筆家・山本ふみこの「だから、好きな先輩」23
アガサ・クリスティーの作品から感じる魅力的な生き方
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、作家「アガサ・クリスティー」さんです。数多くの作品には、彼女の魅力的な志、気質、暮らしぶりがそこここに。そんな彼女の生きざまとは…。
好きな先輩「アガサ・クリスティー」さん
1890-1976年 作家
イギリス生まれ。1914年に結婚(28年に離婚)。20年『スタイルズ荘の怪事件』でデビュー。26年、ロンドンの自宅を出て行方不明になり、11日後に保護される。30年、14歳年下の考古学者と再婚。85歳で死去。
ふっとしたときに旅したくなるアガサ・クリスティーの世界
アガサ・クリスティーを、ときどき猛烈に読みたくなります。つい先日も書架の前に立ち、『アクロイド殺し』を探し当てました。しかしのばしかけた手を止め……『ブラック・コーヒー』を引きだしました。
この作品は劇作家としても高く評価されるクリスティーが初めて手がけたオリジナル戯曲(1930年)で、かの名探偵ポワロが活躍します。
これを初めて読もうとしたときの感想は、ポワロとブラック・コーヒー?というものでした。なぜって彼は無類の甘党で、濃厚なホットチョコレートが好みでしたから。
ポワロはその朝、めずらしく2杯目になるチョコレートを飲みながら、ブラック・コーヒーの事件につながる(依頼の)電話を受けるのです。
作品のそこここに散りばめられている彼女の生き方
クリスティーは30歳でデビューし、亡くなる85歳までに200を超える作品を発表した、多作の作家でした。
作品を片っ端から読んでもかまわないのですが、ちょっと整理してから読みはじめるとしましょう。と云(い)っても、このくらいのことですが、どうぞご覧ください。
- 名探偵ポワロシリーズ
元ベルギー警察の捜査員であるイギリスの私立探偵エルキュール・ポワロが難事件に挑む名作がいっぱいです。
- ミス・マープルシリーズ
編み物の好きな老婦人マープルの直感力と観察力はじつに刺激的!因みに彼女はイギリス人らしく紅茶好きです。
- トミー&タペンスシリーズ
幼なじみのふたりが再会、結婚し、素人ながら探偵社をはじめます。作品数は多くはないけれど、ふたりのおしどり探偵ぶりはなんとも素敵。
このほか、馴染みの探偵が登場しない作品(『そして誰もいなくなった』もそのひとつ)、短編集、自伝やエッセイ、先にご紹介した戯曲、メアリ・ウエストマコットの名で書かれた恋愛小説があります。
どの作品を読んでも、アガサ・クリスティーはそこにいます。文字通り「アガサ・クリスティーを読んでいる」という気持ちにさせられるのです。そうしてその志、気質、暮らしぶりに惹かれてゆきます。
皆さんも気にしておられるでしょうか(愛読者は皆そうです)、あのクリスティー若き日の11日間の失踪事件(1926年)についても、その謎を解く鍵は作品のそこここに散りばめてはいますまいか。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2018年4月号を再編集し、掲載しています。
>>「アガサ・クリスティー」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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