「種種雑多な世界」水木うららさん
2024.11.302023年04月25日
通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第5期第6回
エッセー作品「家族って」横山ひろみさん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。横山ひろみさんの作品「家族って」と青木さんの講評です。
家族って
私達夫婦には孫が3人います。
その中で内孫はたった1人です。
長男夫婦は再婚同士で体外受精でしか子供は望めませんでした。
幸い受精卵は3つ取れましたが、一番最初の一番状態の良かった受精卵だけが着床しました。
それが今一緒に暮らしている孫です。
「みほ」と言います。
我が家は跡継ぎを必要とするので、長男夫婦は養子縁組も考えていて、実は同時進行していました。
この事については私達夫婦にも事前に話があり、賛成しておりました。
それが、無事に生まれて来てくれた。奇跡の一粒種です。
我が家はもちろん、お嫁さんの実家の御両親の喜び様は大変なものでした。
御両親は、娘が不憫で口にすることもできなかった孫の誕生に、お父様は「俺の生き甲斐だ」とカメラを持って飛んでこられました。
奇跡のような出来事に、主人の先祖様・私の先祖様・お嫁さんの実家の先祖様方、この血の繋がりに守って戴いている有難さをしみじみ感謝致しました。
今、一粒種のみほは4歳です。
好奇心旺盛でお喋りなおてんば娘です。
まだ生まれて4年しか経っていないのに、みほの小さな身体の中には実にいろんなものがいっぱい詰まっています。
まず、食べ物の嗜好ですが、横山家では代々塩辛が好きで、うちの子供達は全員大好きです。
初めて口にしたときからおいしそうに食べるのでびっくりです。
性格面では自己主張が強い。
これは私の実家の血でしょうか、お嫁さんの実家でしょうか。
いろんな行動をとる度にこれはこちらだ、あちらだと孫の一挙手一投足に周りが振り回されているのです。
でも、みほの行動のお陰でとても有難い事がありました。
実は、主人は気難しいところがあり、長男夫婦とはそりが合わないと申しますか、危うく別居状態になるところでした。
ところが、みほが母屋と離れを行ったり来たりして間を取り持ってくれていたのです。
まさに孫はかすがいです。
一粒に、いろんなDNAが組み込まれていてみほがうまく家族をまとめてくれています。
あの小さな体の中に、先祖から受け継がれてきたものが凝縮されていると思うと、生命の不思議に改めて心が震えます。
私達夫婦は、みほの未来を見届ける事は出来ませんが、「一人ではない、いつもみんなが見ている」ことを憶えていてほしいと願っています。
青木奈緖さんからひとこと
家族のエッセーは、ある意味プライベートな話ばかりで、その究極が「次世代」というテーマではないでしょうか。それぞれの家庭ごとに事情があり、一家の中で希望が異なることもあるでしょう。
さまざまな選択肢と結果、その後の対応はとてもデリケートな話題です。そのあたりが控えめながらも冷静にリアルに描かれているからこそ、命の尊さ、命がつながる不思議がいきてくると思います。難しいテーマにきちんと向き合って、説得力があります。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間。
2023年3月からは、第6期がスタートしました(受講募集期間は終了しています)。5月からは、青木先生が選んだ作品と解説動画をハルメク365でお楽しみいただけます(毎月25日更新予定)。
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