山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#1
2024.10.312023年08月25日
山本ふみこさんが選んだエッセーの紹介とQ&A動画
山本ふみこさんエッセー通信講座第6期参加者の作品
随筆家の山本ふみこさんが講師を務めるハルメクのエッセー通信講座。エッセーの書き方を半年間で学んでいきます。今回は、100字エッセーの文章世界の魅力と参加者に好評の「おすすめの一冊」について山本さんにお聞きしました。
山本ふみこさんが選んだ「100字エッセー」
参加者が書いた「100字エッセー」を1人1作ずつ紹介。さらに、山本ふみこさんの100字エッセーもお読みいただけます。クリックして、ぜひご覧ください。
「100字エッセー」
山本ふみこさんのエッセー通信講座 第6期参加者のみなさんの作品
人気随筆家の山本ふみこさんから半年間でエッセーの書き方を学ぶ通信制エッセー講座には、全国各地から応募した41名が参加しています。毎月1本書きあげたエッセーに、山本さんのアドバイスや添削を受けて、実践的に学んでいます。
参加者一人ひとりが直面する悩みや疑問は、実は、エッセーを書く人にとって共通する学びの宝庫です。ハルメクでは、月1回山本さんが参加者の質問に回答する動画を制作。現在の参加者が生き生きと学べるように、また、どなたでもご覧になって学びを生かせるように公開しています。
今回は第6期の5回目。動画では、「文章を削ることの大切さと面白さ」についてと、みなさんにご好評の「山本さんおすすめの一冊」をお届けします。
「削る大切さ。制限があるから面白い、100字エッセー」
山本ふみこさん:5回目のテーマは「100字エッセー」でした。
今回、みなさんからの質問は少なかったのですが、感想を多くいただきました。「大変だった!」とか、「私は意外とこれ(100字エッセー)が好き」とか、「頭の体操にもなりますね」とかね。
句読点もかぎかっこも含めて「97字以上100字まで」というお約束で書いていただいたのですが、やっぱり窮屈さを感じる方もまだまだいたようです。
「自分の言葉選びの貧弱さを感じた」「普段、いかに余計なことを書いているかが分かった」とメッセージに書いて下さった方もいました。
でも、それってとても大切なこと。100字を書き終えて、次に800字、1000字以上と書いていくとき、のびのびとするんです。だらだらと書ける喜び、とでもいいましょうか。「センス」を磨くことにも繋がりますし、訓練になります。
みなさんも何を書こうかイメージを膨らませ、「ここを書いてみよう」と決めてから、削る作業に入ったと思います。
せっかく書いたけれど、削らなければならない――。「膨らませる」より「削る」方が大変なことです。
でも「削る」という作業は、文章を書くうえでは宿命なのです。そしてこの技術は書き手たる自分と向き合うことで、一番鍛えられるかなぁと思います。
「この部分は、次にとっておきましょう」という感覚がだんだんと育っていきます。
私の仕事は「書くこと」なので、文字数に制限が設けられることはもちろんあります。
例えばですが、「あぁ~、500字以内か」なんてときもあるわけです。でも、だからといって窮屈さを感じたり、ちょっとしか書けないなんて思いません。
限られた文字数、約束の文字数の中でどれだけのことが出来るか。制限があるからこその面白さがあります。
今回、作品を提出される前に「どうしても3文字多くなってしまう」「句読点は1字に含まれますか?」というご質問もありました。皆さん、とても苦戦されていた…、戦っていましたね。
でも、書き手は「求めに応じる」ということを学ばなくてはなりません。
100字以内に収まらないと思っていても、削れるところはあるはずです。平仮名にしていたものを漢字にしてみるのも一つの手ですが、漢字を多用するとそれはそれで作品の世界観が変わってしまうので難しいですね。
実は、この講座で「100字エッセー」をテーマにしてから、私も書いています。
短い文章の中で定点的に物事を見る面白さ、情景描写の書き方など、ブログで公開しているのでよかったら参考に読んでみてください。
【山本ふみこさんの公式ブログ】
山本さんおすすめの一冊
『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス 著 高杉一郎 訳/岩波少年文庫)
山本ふみこさん:皆さんから大好評のコーナーになりました!嬉しい!(笑)
紹介された本を読みました、とお便りをいただくこともあって、とても嬉しいです。ありがとうございます。 皆さんも「おすすめの一冊」があったら教えてくださいね。
今回ご紹介する一冊は、この動画が公開されるころはまだ暑さも残っていると思うので、そういう季節感のあるものにしました。
括りでいうなら「児童文学」で、小学校高学年くらいになったら読めるかな、と思います。
この本は大人になってから読む児童書にふさわしい名作です。
物語は夏休みの初日を迎えた主人公のトムが大きな柱時計をシンボルに、現在と過去を行き来します。
過去で出会っていた人が、現在(未来)に戻ってみると実はあの人だった、なんていう展開もあります。
皆さんも過去をテーマにエッセーを書くこともあるでしょう? その難しさを十分に理解されていると思います。
この本をおすすめしたい理由はそこにあって、この物語は時間が行ったり来たりしていても、読んでいて「これはいつ? どの時?」と迷うことがない、構成がとてもしっかりしていて勉強になる作品です。
そして、読んですぐに種明かしをしたくなるくらい面白いです。
それぞれが過ごす時間の中で、それぞれの冒険を見つける物語。主人公のトムが言う「僕、帰りたくない」という気持ちを、皆さんにもぜひ楽しんでもらえると嬉しいです。
随筆家・山本ふみこさんのプロフィール
1958(昭和33)年生まれ。出版社勤務を経て随筆家に。ハルメクでは連載「だから、好きな先輩」やエッセー講座(会場開催と通信制)の講師でおなじみ。著書に『朝ごはんからはじまる』『まないた手帖』(ともに毎日新聞社刊)『おとな時間の、つくりかた』(PHP文庫刊)『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)『こぎれい、こざっぱり』『台所から子どもたちへ』(ともにオレンジページ刊)『家のしごと』(ミシマ社刊)ほか多数。公式ブログは http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、2024年1月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。