SDGsについて意欲が高いのは何歳?【意識調査】

2022年05月05日

シニア世代のシンクタンク所長が考察

SDGsについて意欲が高いのは何歳?【意識調査】

雑誌「ハルメク」のシンクタンク「生きかた上手研究所」所長の梅津順江が、ミドル~シニア世代の女性のトレンドを読み解きます。今回は、20~79歳の男女1200人にSDGsについて調査。その結果、驚きの世代の差があることがわかりました。

シニア女性のシンクタンク生きかた上手研究所の所長です

シニア女性のシンクタンク生きかた上手研究所の所長です

普段から私は、50歳以上の素敵な女性にお会いして(最近はオンラインで画面ごしも増えました)、誌面や商品開発の種になる話を伺ったり、アンケートを介して半歩先の未来を予見したりしています。読者との会話やデータで出てきた驚きや気付き・学び、ハルメク世代の実態や意識、日常の困り事や工夫からトレンドを汲み取ってお伝えしていきます。

SDGsの調査結果からは世代の差が読み取れる

SDGsの調査結果からは世代の差が読み取れる

「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す」ことを目標としたSDGs。この国際目標は貧困や環境、ジェンダーなどに関する17のゴールと169のターゲットから構成されます。「地球上の誰一人取り残さない」ことを誓っていますが、世代間で認識や行動にギャップがあり、足並みが揃わない状況もあります。

私が所属する「ハルメク生きかた上手研究所」は、2022年2月10日~15日に「持続可能な開発目標(SDGs)に関するアンケート調査」をWEB上で行い、全国の20~79歳の男女1200人から回答を得ました。この調査からも、世代の差が読み取れました。

SDGsに紐づく価値観に大きな違い

まず、SDGsの認知度を見てみましょう。全体の認知率は87.6%(1051人)でした。60代以上のシニア世代のSDGsという言葉の認知が遅れている印象もあるかもしれませんが、この世代の認知率も9割近くに達しました。

SDGs認知率

私は普段からシニア女性と接する中で、この一年で認知率がグッと高まったと感じていたものの、ここまでとは!シニア世代にもSDGsが浸透していることがわかります。

一方、調査上で私たちが例示したSDGsの関連ワードの認知率では違いが出ました。20~30代は「LGBTQ+(性的少数者)」の認知率が35%ほどで他の世代より高かったものの、それ以外の言葉は主に60代以上の方が、認知率スコアが高いという結果となりました。

具体的には「再生可能エネルギー」「脱炭素」「フードロス」「カーボンニュートラル」「ダイバーシティ」「マイクロプラスティック」などが該当します。

また、私たちが考えたSDGsを進める上で大切な価値観も調査上で示し、どれに共感するかも聞きました。

SDGsを進める上で大切な価値観

20代では「個性を生かす」「永続的な成長」を選ぶ傾向がありました。一方、60代では「ものを大切にする」、70代では「自然との共生」「必要な時に必要な分だけ」「未来につなぐ」が割合として高くなりました。

SDGsという言葉が誕生する前から、60代以上は自然を大切にし、ものを使い切る生活をしている人が多いです。私が接するシニア女性からは「レジ袋の有料化で騒いでいるけど、昔は風呂敷を使った」「余った野菜は漬けたり干したりして保存すればいい」など、生活の知恵や工夫が聞こえてきます。

「社会貢献意識は若者が高く、高齢者は低い」という見方をする人もいるかもしれませんが、それは早計なのではないでしょうか。

70代が最もSDGsの取り組みに意欲的

さらに、今回の調査で「SDGsの情報を知りたい」「今あるものを活かしたい」「(若い人より一般的に余命が限られている影響も考えられますが)今すぐ取り組みたい」という意識が若年層より高いことも証明されました。

SDGsの取り組み意向

今回特に驚いたのは、SDGsの取り組みに最も意欲的なのが70代だったことです。「SDGsに関する情報をもっと知りたいと思うか」や「SDGsに今すぐ取り組むか」といった設問で、若年層よりも積極的な姿勢が見られました。

現在の70代は、高度経済成長やバブル景気を経験し、若年層からは「今までさんざん消費して、ないがしろにしてきたものを今さら焦って巻き返そうとしているだけに思える」(山形県・24歳女性)といった厳しい視線にさらされやすい世代でもあります。

その点、当の70代からは「便利に慣れすぎることへの反省がある」(神奈川県・70歳女性)「次世代のために自分たちの責任を果たすべき」(北海道・70歳女性)など、反省の念や次世代への意識が聞こえてきました。

世代間の広め合いが大きなうねりをつくる

世代間の広め合いが大きなうねりをつくる

今回の調査を踏まえると、SDGsの17のゴールについての興味や関心の度合いが各世代で大きく違うことがわかりました。

若年層は、ジェンダーや成長への関心が見られます。一方で、シニア世代は自然や環境、ものを大切にすることへの意識が強く感じられます。それぞれが生きた時代背景が全く異なるために、関心を持つ分野が違うのは当然でしょう。

SDGsで大切なのは、みなが同じゴールに向かって、各々ができることから取り組んでいくことです。世代間で認識や行動にギャップがあるのは当然と捉え、各世代の人たちが持つ知恵やワザを他の世代の人たちにも広めていくことが重要で、それがSDGsの大きなうねりをつくっていくのだろうと思います。

世代を問わず、一人一人が「小さくても続けることが大切」というマインドでいれば、持続不可能を持続可能にすることはできるはずです。

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梅津 順江
梅津 順江

うめづ・ゆきえ 生きかた上手研究所長/インタビュアー。1年間に約700人の素敵な女性にお会いし、誌面や商品開発の種になる話を伺っています( ͡° ͜ʖ ͡°)/。のんきな夫との2人暮らし。趣味はダイビング、マンホール、美術鑑賞、食べ歩き。

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