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- シニア女性に愛された瀬戸内寂聴さんの名言
雑誌「ハルメク」のシンクタンク「生きかた上手研究所」所長の梅津順江が、ミドル~シニア世代の女性のトレンドを読み解きます。今回は、2021年11月9日に亡くなった瀬戸内寂聴さんが、シニア女性から熱烈な支持があった理由をひも解きます。
シニア女性のシンクタンク生きかた上手研究所の所長です
普段から私は、50歳以上の素敵な女性にお会いして(最近はオンラインで画面ごしも増えました)、誌面や商品開発の種になる話を伺ったり、アンケートを介して半歩先の未来を予見したりしています。読者との会話やデータで出てきた驚きや気付き・学びから、ハルメク世代の実態や意識、日常の困りごとや工夫からトレンドを汲み取ってお伝えしていきます。
シニア女性にファンが多い瀬戸内寂聴さん
雑誌「ハルメク」のインタビューに何度もご登場いただいた瀬戸内寂聴さんが、99歳で生涯を閉じました。家族や友人との行き違い、体の不調、老後の不安など、人生後半に訪れる悩みにどう向き合えばいいかのヒントを伝えてくださいました。
生きかた上手研究所では、毎月読者にハルメク誌面の満足度調査を行っています。瀬戸内寂聴さんが登場する記事は読者から絶大な人気があります。数値で示すのはおこがましいことですが、寂聴さんの巻頭インタビューや特集は、毎回平均値を大きく上回り満足度はなんと80%以上です。
読者の感想コメントを読むと、50代から80代の女性の、心の支えになっていたことがわかります。
「寂聴さんのインタビュー続けてほしいです(59歳)」
「瀬戸内寂聴さんの記事を読んで元気が出ました(60歳)」
「今月号(2021年7月号)を開いて、即!あのお顔が……。『愛するために生まれてきた』そうそう……この愛するということ、簡単そうでそうではない。しかしそうありたい。何に対しても感謝や生きられていることのありがたさをドーンと胸にいだいて、生きていかなくては(63歳)」
「前向きに考え、実行するということがなかなかできにくいので、瀬戸内寂聴さんの文章を読むことで自分もと思える(74歳)」
「購読をはじめて10年以上になります。今月のように寂聴さんの記事に出会うと何かホッとします(80歳)」
瀬戸内寂聴さんが愛された3つの要因
なぜ、ここまでシニア女性に愛されてきたのでしょうか。雑誌「ハルメク」で紹介した内容をもとに考察してみます。
まず、「”愛”や”生”という一貫したテーマを描いてきた」が挙げられます。
”愛”や”生”という一貫したテーマ
生きることは、愛すること。そして愛することは、許すこと。仏教には「渇愛」と「慈悲」があります。渇愛というのは、心が乾いて愛がほしいという状態。”これだけ愛してあげたから返してちょうだい”という自己愛です。一方、慈悲というのは、あげっぱなしの愛。返してちょうだいという気持ちのない本当の愛。(中略)相手から返してもらおうと思うのをやめて、ただ思ってあげる、そういう愛があれば、私たちは悩みから解放されます(2021年7月号ハルメク巻頭インタビューより抜粋)
――私の場合、書いているときが、やっぱり生きていることを実感します。(中略)最期の瞬間まで書いて、命を燃やしたい。もしかしたら、ペンを握ったまま、乱雑極める書斎の机の上にうつ伏して息絶えている。そんな憧れの死に様も、夢ではないかもしれません。(2018年1月号ハルメク巻頭インタビューより抜粋)
愛することに向き合ってきた方だからこそ、人は愛するために生きているという愛の大切さがストレートに伝わります。しかも、平易な言葉づかいで分かりやすく説いてくれるので、耳や脳を飛び越えて、心にスーッと入ってきます。
新しい挑戦へ躊躇なく取り込む姿勢
次に、「新しい挑戦へ躊躇なく、自然に取り込む姿勢」があったのではないでしょうか。
――最近、インスタグラムを始めたんですよ。毎日フォロワーが増えるのが面白くて、朝起きると秘書に「いくら増えた?」って聞くの。新しいことって何だか気になるじゃないですか。それこそ、おしゃれでも何でも新しいことをやってみるのはいいことですね。年齢なんて関係なく、いつまでも新鮮でいられますよ。(2018年8月号ハルメク巻頭インタビューより抜粋)
どんなハードルもひょいっと飛び越えて、今という時代の風に柔軟です。自然に若い人の考えや感覚を寄せることができる方でした。この点は、亡くなるまでずっと若々しかった秘訣ともいえそうです。
笑いも涙も率直かつユニークに伝える
そして、「笑いも涙も率直かつユニークに伝えてくれるため、親しみが持てる」こともあったと思います。
ーーこの5月で数えで百歳になりました。もう自分でもあきれますよ。こんなに長く生きるとは思ってなかったですから。何でもおいしくいただいて、お肉をよく食べます。食欲があるから生きていると、この頃は思います。(中略)できれば静かに死にたいなと思っているけれど、「死にたくない!」って大声で暴れるかもしれない。そのときになってみないとわかりませんよ。ただ長く生きたぶん、たくさん愛することができたから、私は幸せな一生だと思っています。(2021年7月号ハルメク巻頭インタビューより抜粋)
充実した人生や生活、行く末不安な将来をおちゃめに笑いに変えてくれます。自身が感じるありのままをユーモアを交えながら語ってくれるので、親しみが持てます。
2021年7月号が「ハルメク」に登場いただく結びの号となりました。最後まで、軽快な語りで生きる秘訣や多くの考え方の学びを読者に届けてくださいました。
感謝、合掌……ご冥福をお祈り申し上げます。
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