料理研究家・村上祥子さんの暮らしの知恵
2019.07.012020年07月06日
料理研究家が教える新しい台所様式
村上祥子さん「withコロナの台所」3つの新習慣
思うように買い物できない、料理の回数が増えた……。コロナ禍で台所の悩みがぐっと増えた、とよく耳にします。そこで、料理研究家でありベテラン主婦でもある村上祥子(むらかみ・さちこ)さんが、台所仕事を気楽にする「3つの新習慣」を提案します。
「見える化収納」で、缶詰・乾物のストックがすっきり
4月下旬、東京都で「買い物は3日に1回程度にしましょう」という呼び掛けがあり、福岡県に住んでいる私も買い物の回数を減らしました。足の早い野菜や肉・魚類は、まとめて買えません。ですから、代わりに缶詰や乾物を買ってストックするようになりました。スーパーの棚が空っぽの日もありましたから、みなさんも同じなんじゃないかしら。
そのストックの収納方法としておすすめなのが、「見える化」です。私は「扉のないキッチンワゴン」を使っています。中がパッと見えるし、しかもワゴンは360度から見られるので、何をストックしているか常に把握できて、「あっ、また買っちゃった」という悔しいヘマを防げるのです。年齢を重ねるにつれて「忘れ物」が増えますから、絶対に棚の奥底には入れないで!
「見える化」が大切なのは、冷蔵庫や冷凍庫の中も同じです。冷蔵庫には、透明で中が見える引き出しを後付けしました。チューブの調味料やお刺身に付いている醤油などの「専用のお部屋」となり、パッと手に取ることができます。冷凍庫には、小さなカゴやブックエンドのような仕切りを。冷凍食品を重ねて入れることがなくなり、何があるかよく見えます。
「買い物キャリー」を使えば、まとめ買いも一人で余裕
新型コロナウイルスの影響で、買う食材も変わりましたが、一度の買い物で買う「量」も変わりましたよね。大量に買うようになったから、両手に荷物を抱えて、とっても重たい!
そんな今の時代には、「キャリーバッグ(ショッピングカート)」を使った買い物が合っています。今は一人暮らしの私ですが、夫と3人の子どもたちと暮らしていた頃は、一度に買う量が多過ぎてキャリーバッグを使っていました。
今は、買い物に合わせて小ぶりサイズのものや、上下が仕切りで分かれているものなど、キャリーバッグにも多くの選択肢があります。レジ袋有料化の話もありますから、重たい荷物をがんばって手に持つ習慣は、この際スパッとやめてしまいましょう。
「便利な調理グッズ」も取り入れて、3食パパッと料理
「外食や出来合いのお惣菜はまだ少し不安。でも毎日ちゃんと食べないと……」。私の料理教室の生徒から、そんな悩みをよく聞きました。それなら、1回1回の料理をパパッと済ませればいいのです。「そう簡単に言うけれど」と思うでしょうが、これが本当に簡単!調理グッズにたくさん頼ればいいのです。
例えば私は、「電子レンジ」で何でも作ってしまいます。火を使わないので安全で、夏も汗をかかずに時短調理ができ、素材の栄養やうまみも存分にいただけます。他にも、みじん切りは包丁でがんばらず、専用の器具を使います。年を取ると手先が不器用になって、細かい作業に時間がかかるじゃない?調理グッズに頼ることは、決して手抜きではないのですから、どんどん頼りましょう。
また、調理グッズは料理をパパッと済ませるだけでなく、料理を楽しむ道具でもあると思います。時間のある今、普段はスーパーで買うような料理や食材を作ってみるのもおすすめです。
私は生粋の“ヨーグルトラバー”なので、もう50年も自宅でヨーグルトを作っています。出来立てほかほかのヨーグルトって、とってもおいしいの! 毎日の「食べる喜び」につながりますよ。
新型コロナウイルスが、食事を楽しむきっかけに
新型コロナウイルスは、78年生きてきた私にとっても未曽有の事態。とても戸惑いました。でも逆に、今が台所を見直すチャンスだと思うようにしたのです。だって、こんなに長い時間、台所に向き合うことってないじゃない!
お勤めの方が「働き方改革」をするように、私たちも、今までの台所悩みもすべてひっくるめて「台所の働き方改革」をしちゃえばいいなって。
一つからでもいいので、ぜひ今回ご紹介した新習慣を試してみてください。面倒だった作業が驚くほどラクにできたり、今まで使わなかった食材を買うきっかけになったり。意外な発見が、きっと「食事を楽しむ気持ち」につながります。
村上祥子さんのプロフィール・おすすめの本
むらかみ・さちこ 料理研究家・管理栄養士。1942(昭和17)年、福岡生まれ。
公立大学法人福岡女子大学国際文理学部・食・健康学科客員教授。食材の持つ力で健康寿命の延伸を図る研究に関与する同大学にある「村上祥子料理研究資料文庫」で50万点の資料が一般公開されている。
「ちゃんと食べてちゃんと生きる」がモットー。「電子レンジ発酵パン」「バナナ黒酢」「玉ネギ氷」など、画期的な料理を生み出し続けている。これまでに出版した著書は300冊以上、累計622万部にのぼる。
また、一人分でも短時間においしく調理できる電子レンジに着目。糖尿病、生活習慣病予防改善のための栄養バランスのよい、カロリー控えめのレシピ、簡単にできる一人分レシピを作る「電子レンジ調理の第一人者」である村上さん。自身もキッチンを1口のIHコンロに変え、鍋を減らし、電子レンジを活用する村上さんの著書『簡単! 電子レンジの法則』(1,430円、辰巳出版刊)は、全国の書店で好評発売中。
村上祥子さん公式ホームページ
http://www.murakami-s.jp/
取材・文=陰山栗実(ハルメク 健康と暮らし編集部) 撮影=中西裕人
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