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- 料理家・村上祥子さんに学ぶ「台所のエイジングケア」
“おいしくて体が元気になる食”を全国から集め、ご紹介している「ハルメク 健康と暮らし」。今回のコラムでは、2020年2月号のキッチン特集を担当した編集部・陰山が、本誌では紹介しきれなかったこぼれ話をお伝えします。
一人暮らしをする村上祥子さんの小さい台所
77歳にして、取材や講演、テレビの収録などで全国各地を行ったり来たり。村上祥子(むらかみ・さちこ)さんは、現役バリバリの料理研究家です。「ハルメク 健康と暮らし」2020年2月号の取材のために、福岡県にある料理スタジオ兼ご自宅を訪ねたときも、まるでダンスをするように軽やかに料理をしていらっしゃいました。
「でもね、ひとたび仕事を離れると、広い台所で何人前もの料理を作る体力や気力はもうないの。一生懸命、がんばらないための工夫をしているのですよ」と村上さん。「うちは主人が亡くなり3人の子どもも巣立って、今は一人暮らし。だから、それ相応のこざっぱりとした小さい台所に変えました」
実際に村上さんが変えたことが、こちら。
・3口のガスコンロから、1口のIHコンロの台所にリフォーム
「もう同時にいくつも進められませんし、一人だから安全も欲しくて」
・冷蔵庫を小さいものに買い替える
「一人でも無理なく食べ切れて、食材や食費をムダにしません」
・鍋は小さいサイズのもの1つだけ
「大きい鍋は重たいだけ。電子レンジを上手に活用すれば事足ります」
・扉のないキッチンワゴンに調理道具や常温の食材をしまう
「うっかり物忘れが増えても、どこに何があるかすぐわかりますよ」
年齢や環境に応じて台所を変える……。これって、台所の「エイジングケア」だと思うのです。例えば、年齢を重ねた肌にはそれ相応の化粧品を使い、体形の変化で若い頃とは着るものも変える。食べ物も、ヘルシーでさっぱりしたものを好むようになる。
だから、台所だって。体力や物忘れが増える、家族構成が変わるなど、その時々に応じて変えていく必要があるのですね。
村上祥子さんがプロデュースした「キッチンワゴン」
でも、大掛かりなリフォームなんてできないし、冷蔵庫を買い替えるにも費用が……。
「そんなときは、キッチンワゴンを1台置くことから始めてみてください。手軽なのに、格段にラクが増えますよ」と村上さん。「よく使うものがすぐ見えて、すぐ手に届きます。あれどこだっけ?と探す時間が減るのです」
そんなアイデアマンの村上さんと「ハルメク」がタッグを組んで共同開発したのが、こちらのキッチンワゴン。「ハルメク 健康と暮らし」2020年2月号でもご紹介しました。※2020年4月28日現在は販売していません
村上さんは、約30年もキッチンワゴンを使っている「ワゴンの達人」で、もともとは、美容室用のキャスターワゴンを使っていました。編集部が村上さんのご自宅に取材に行った際、ワゴンを便利そうに使っている姿を見て、ハルメク読者のために共同開発をお願いしたのです。
幅や棚の大きさ、深さなどはすべて、村上さんが料理研究家・主婦目線で計算して出来たもの。油や水汚れに強い素材で、清潔感を長く保てます。
よくあるワゴンと違う、村上さんのこだわりがこちら。
その1 道具も食材も収まる大容量
上から
1段目:よく使う調味料や、菜箸やトングなどの長いものを立てて置ける。
2段目:網状の棚なので、まな板など、よく水を切れば調理中にも置ける。
3段目:缶・瓶詰め・ふきんのストックなど。それぞれトレーに入れると便利。
4段目:袋物の食材を。よく見えるから余計な買い足しを防げる。
その2 どこでも置ける左右対称
扉がなく、左右どちらからでも取り出せるので、どんな家でも使いやすい。
その3 清潔に保てるステンレス天板
汚れた手で触ってもサッと拭ける。優れた耐熱性で、調理台にもできる。
その4 軽い力で動くキャスター付き
たくさん入れても動かしやすく、2つのキャスターはストッパー付きで安心。
その5 長く使える日本製
手作業で作られたワイヤートレーは角が丸くなめらか。ケガをしにくく、耐久性も高い。
「村上祥子監修 ムダがなくなるキッチンワゴン」は、50代からの女性にうれしい工夫が詰まっています!
「ケ」をラクするほど「ハレ」が楽しく!
小さい台所に変えたことで、普段の「ケ」の日の料理のみならず、「ハレ」の日の料理、つまりお正月やお盆、子どもの帰省など、おもてなしの料理を作ることも変わったと言います。
「日常の料理をがんばらずにラクすることで、特別な日の料理が楽しみに変わる。小さい台所には、そんな魔法もあるのですよ」と村上さん。
村上さんが取材の日の昼食に出してくださったのは、焼き立てのフォカッチャと、オックステールのスープ。フォカッチャはふっかふかでもちもちとした弾力があって。スープは驚くほど味が染みていて……!おいしすぎて仕事を忘れて3回もおかわりしてしまいました(笑)
「年をとると、食材の買い物や料理が面倒になり、食事そのものも面倒になり……。それでも、最後まで“生きる力”を支えてくれるのは“食べ力”です。だから、食べるために賢く手を抜いて。もうがんばらないで。そうするだけで、きっと、料理がぐんと楽しくなりますから」
村上祥子(むらかみさちこ)さんのプロフィール・おすすめの本
料理研究家・管理栄養士。1942年、福岡生まれ。公立大学法人福岡女子大学国際文理学部・食・健康学科客員教授。食材の持つ力で健康寿命の延伸を図る研究に関与する同大学にある「村上祥子料理研究資料文庫」で50万点の資料が一般公開されている。「ちゃんと食べてちゃんと生きる」が、モットー。「電子レンジ発酵パン」「バナナ黒酢」「玉ネギ氷」など、画期的な料理を生み出し続けている。これまでに出版した著書は300冊以上、累計622万部にのぼる。
一人分でも短時間においしく調理できる電子レンジに着目。糖尿病、生活習慣病予防改善のための栄養バランスのよい、カロリー控えめのレシピ、簡単にできる一人分レシピを作る「電子レンジ調理の第一人者」である村上さん。
自身もキッチンを1口のIHコンロに変え、鍋を減らし、電子レンジを活用する村上さんの著書『頑張らない 電子レンジのおかず』(大和書房刊)は、全国の書店で好評発売中です。「徹子の部屋」出演で実演調理し、黒柳徹子さんが大絶賛・完食したビーフシチューの作り方も収録しています。
『60歳からは食べて健康に! レンチン1回で頑張らない電子レンジのおかず』(1,430円 大和書房刊)
撮影=中西裕人
【関連記事】
料理研究家・村上祥子さんの暮らしの知恵
村上祥子さんがテレビに出演しました
村上祥子さんが、「あしたも晴れ!人生レシピ」(Eテレ)に出演しました。
【放送日】2020年1月31日(金) 午後8時~【再放送】 2020年2月7日(金) 午前11時~【放送内容】
▽食は生きる力“おひとりさまシニア”の豊かな食事とは
シニアの一人暮らし、作るのも、食べるのも面倒、そんな方も多いのでは。食事の回数が減り、栄養不足になると、筋力や気力が低下して、心身ともに自立した生活が難しくなります。人生100年時代を健康に生きるために、しっかりとした食事が大切です。「シニア食堂」という仲間と食事を作って食べる取り組みや、77歳の料理研究家・村上祥子さんの知恵がつまった料理から、一人暮らしの食を充実させるヒントを見つけます。
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