「さつまいもの天ぷら」横山利子さん
2024.09.302021年02月02日
通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第3回
エッセー作品「DNAはくり返す」ただ せいこさん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。ただ せいこさんの作品「DNAはくり返す」と青木さんの講評です。
DNAはくり返す
母は6人弟妹の長女だった。
私のすぐ下の従妹は10才下。以後次々と生まれた叔父、叔母の子供達は生まれた時から知っていたし、おむつを替えたり、離乳食をたべさせたり、幼稚園のおくりむかえをしていた。
はじめて新生児の従弟を見た時、小さな手足に小さな指があり、小さな爪が生えているのを見て、感激した。「全部そろっている」と思わず口にすると、叔母は気を悪くしたようで「当たり前よ」と言ったが、小学生の私には一つ一つが不思議だった。小さな口をあけてあくびをし、目をつぶる新生児にみとれた。
祖母の家で逢ういとこ達、彼達の担当は、私で、大人達が話している間、子供達を公園につれていったり、庭で遊んだりしていた。
ガラスのサイドテーブルの下にもぐりこんであおむけに顔をみせたいとこもいた。4人兄弟のいとこ達は、祖母の家にいて、とびついてまとわりついた。大きくなればはなれていくのだけれど、小さな彼達と手をつないで、幼稚園のおくりむかえなどをするのは楽しかった。私の結婚式に「私もでたい」と泣いたいとこもいた。
それから時が流れ、いとこ達は皆、大人になって、結婚して、子供達が生まれ、父や母になっていった。
あるとき叔母の家に行くと、かつて私が幼稚園のおくりむかえをしていたいとこの子供達に逢った。
年子の姉弟。しっかりした姉と走りまわる弟。まさに30年前のいとこ達そのもの。
リビングのガラステーブルの下にあおむけになってもぐりこみ、私に向かって手をふる。
「お父さんと同じことをしている!」と思わず笑った。
「DNAだね。教えてもいないのに」。
「ヤーね」といった姉の口調も、まさに従妹そのもの。
タイムスリップしていたような子供達だった。
先日、弟より電話があった。叔母の家で逢った年子の姉弟の姉が結婚するのだという。
「SNSにそんな話をのせていたよ」。そうか、あれからもう20年たっていたのだ。
「道理で私が70になるわけね」と思わずつぶやいた。
青木奈緖さんからひとこと
難しい内容にチャレンジしていらっしゃいます。
ただ様が10歳の頃から70歳の現在までの歳月を、いとこやその子どもたちの成長から描いているのです。
ご自身でも「時間の移り変わりをどう書いたら良いか」とコメントしていらっしゃいましたが、大きく時間が動くときは、「それから時が流れ」とか「あるとき」というように、読者にわかりやすく時称の変化を伝えると良いでしょう。
子どもの描写がとてもいきいきと描かれていて、多くの方が共感なさる作品ではないかと思います。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師でエッセイストの青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在、雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで3月から始まる第2期の参加者を募集しています。詳しくは、こちらをご覧ください。
■エッセー作品一覧■
- 青木奈緖さんが選んだ5つのエッセー#3
- エッセー作品「DNAはくり返す」ただ せいこさん
- エッセー作品「はらから」古河 順子さん
- エッセー作品「犬もわが家族」古本 優子さん
- エッセー作品「昭和31年生れ 一雄さん」佐野 朋子さん
- エッセー作品「ありがとう‼」花鳥風月さん