エッセーの疑問・お悩みに答えます

山本ふみこさんのエッセー講座 第8期#4

公開日:2024.07.31

随筆家の山本ふみこさんが講師を務めるハルメクのエッセー通信講座 第8期第4回。解説番組「コトコトラジオ」、今回のテーマは「過去を描く」。参加者の作品から山本さんが選んだ5本のエッセーとともに、お楽しみください。

 

 

解説番組・コトコトラジオ 「過去を描く」

<参考リンク>

第7期#4「山本さんの辞書の使い方」(≫コトコトラジオ 10:12ごろ~
第8期#2「辞書を選ぶときの基準は?」(≫コトコトラジオ 21:35ごろ~

山本先生の新刊「むべなるかな」詳細は≫こちら
※再生画面の下に、お話しの内容をまとめたテキストもございます。

海原純子さん×山本ふみこさん 対談イベント詳細は≫こちら

<便利な再生方法>

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聞きたいトピックをクリックすると、その位置から番組を再生することができます。

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質問:過去に訪れた場所…実際の姿と自分の記憶が異なる

質問:実際に存在する場所について書きました。訪れてから時間が経っているので、記憶が自分のなかで塗り替えられていて、実際の色や形とはすこし違う記憶になっている部分がありました。読者やその場所の人たちのことをおもうと、実際に即して書くべきでしょうが、自分の記憶のイメージを変えて書くのも悲しい気がしています。
 

山本さん:時間が経つにつれて、少し異なる記憶になっていく。これは宿命だと思います。読者も、その記憶が正確かどうかを知ることはできません。

エッセー講座参加者の方には、「なにもかもを書こうとしない」ということをお伝えしています。
ある場面について書くとき、その場にいた全員のこと書くことはできないし、しない方がいいです。作品にとって必要な働きをするのでなければ、登場させなくてもいいのです。
必要なことを際立たせるために、そして不必要なことに本筋を分かりにくくさせないために、「書かない」という選択も必要だと思うのです。

でも、その場で何かを共有した人たち贈りたい…という気持ちで書くのも好きですよ。あの時お世話になった人たちに、お礼の気持ちを込めて書こうっていうのもあり。
そして、あの時は楽しかったけれども、作品にする時にはご登場願わないという選択も、ありなのです。
それから、たまには、 どうだろう…少し物語風なタッチに変えていく、ということをしても楽しいかもしれません。

なんにしても、「人を傷つけないように書く」ということに気持ちを置いたらいいかな。登場する人々は、作品の上では反論ができないわけですからね。そういう人たちを決して傷つけないように書こうと自分と約束することは、大事なことです。
 

……『コトコトラジオ』本編では、「文章の構成がワンパターンになってしまう」「平易な文章の、どこで辞書を引くべきなのか?」などの質問にお答えしています。ぜひお聞きください!

#山本さんおすすめの一冊

『ゼルマの詩集 強制収容所で死んだユダヤ人少女』ゼルマ.M=アイジンガー 著/秋山 宏 訳・解説(岩波ジュニア新書)

過去について目を凝らし、考えさせられる8月。今回はこの本をご紹介します。

『ゼルマの詩集』…副題が「強制収容所で死んだユダヤ人少女」。ゼルマ.M=アイジンガーというのが、その少女の名前です。有名なアンネ・フランクが亡くなる約2年前に、この少女も亡くなりました。18歳だったそうです。

私はこの本を、先輩の書き手から紹介されて読んだんですけれども、とてもいい詞なんですよ。この青春時代にこのように見事な詩形、韻律、リズムを自分のものにしているゼルマは、もし生きていれば偉大な詩人になったであろうというのが、皆さん口を揃えて評するところです。

ひとつだけ救いだなと思うのは、ゼルマの詩の多くが、愛する青年レイセル・フィヒマンに捧げられたものだということです。ゼルマには苦しみばかりがあったわけではなく、強い憧れも夢もあった。

18歳の少女が書いた詩としては、大人びている作品です。しかしその成熟を促したものは苦しい体験であるということを、私たちは忘れないで過ごしたい。そう思って、ご紹介しました。

山本ふみこさんが選んだ5つのエッセー

クリックすると、作品と山本ふみこさんの講評をお読みいただけます。第8期第4回で取り組んだエッセーのテーマは「あれ?」です。

「自由なカエルが羨ましい」熊本美千代さん
小鳥たちのために夫が巣箱を木にかけました。ある日のことです。雨がふり始めた午後、巣箱の中を覗いてみると小さなカエルが雨宿りをしていました……

「島」小林登美子さん
「あれっ?」同時に目でそう言った。駅のそばの小さな店のカウンターの隣の椅子に座り、わたしはサーリくん(仮名)と同じチャンポンを頼んだ……

「枯れ葉のような虫」佐々木はとみさん
昨年の7月1日。朝刊を取りに行くと、ポスト近くの塀に枯れ葉が付いていた。しかし、塀に顔を近づけてよく見ると、えっ、大きな虫? 触らずにそのまま家に入る……

「ゆっくり息をする」前場勢津子さん
なんだか疲れていた昼下がり。ぼんやりと、本棚から1冊のエッセイをひきぬく。女性エッセイストのもので、こんな1行が目にとまった……

「ばあばしずかちゃん」小田原薫さん
「ドラえもんとのび太君だ!」映画の広告が新聞に載っているのを見つけた。数年前の春のことだ。ふ~ん、まだ『ドラえもん』上映されているんだ……

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随筆家・山本ふみこさんのプロフィール

「エッセーの書き方講座」講師の山本ふみこさんとは?

1958(昭和33)年生まれ。出版社勤務を経て随筆家に。ハルメクでは連載「だから、好きな先輩」やエッセー講座(会場開催と通信制)の講師でおなじみ。著書に『朝ごはんからはじまる』『まないた手帖』(ともに毎日新聞社刊)『おとな時間の、つくりかた』(PHP文庫刊)『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)『こぎれい、こざっぱり』『台所から子どもたちへ』(ともにオレンジページ刊)『家のしごと』(ミシマ社刊)ほか多数。公式ブログは http://fumimushi.cocolog-nifty.com/

ハルメクの通信制エッセー講座とは?

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

第9期の開講が決定!2024年8月、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。(応募締め切り:8月31日)

エッセー作品一覧

 

ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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    エッセー講座担当のシマナカです。今月もご覧いただきありがとうございます。 参加者の作品やラジオへのご感想をお待ちしています!

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