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- 秋に始めませんか?種まきのすすめ
バラを育てて20年、バラ栽培のコツや自作の庭、花に囲まれた暮らしを発信するバラ愛好家・奥野多佳子さん。秋は種まきの季節でもあります。一から育てる楽しみを味わいませんか?風を感じるファブリック作品もご紹介します。
今月のタペストリー「風の旅」
※写真は複数あります。Yahoo!ニュースなど、外部配信先でご覧の方は、写真の上の「>」でスライドしてください。
タンポポの種坊が旅に出ます。風が連れて行くのです。優しい風や力強い風……
最初はみんな怖くて集まっているけれど、風に乗せてもらうと楽しくて……
やがて降り立ったところで、一つ一つがたくましく根を張って花を咲かせます。
タンポポの綿毛を見るといつも不思議でした。こんなにたくさんの種坊たち、いったいどこへ行くんだろう……。
小さな小さな種がちゃんと飛べるようにフワフワの羽がついていて、優しい風なら大海原も越えていけそうな気がします。
この小さな種、一体いくつくらい根を張って花を咲かせ、また種坊を生み出すのかわからないけれど、それでも自分の任務を果たそうと旅に出るんだなって……。小さな種が持つ大きな力を感じます。
布を染め、中に綿を入れながらふんわりとなびくように「風の流れ」を縫っています。刺繍で小さな種を飛ばして、チュールやオーガンジーも使っています。
種って本当に不思議……。私はこの小さな種に夢を託します。
種まきって難しい?
「種まきってちょっと難しそう……」と思っていた私。
バラとよく合うオルラヤやニゲラなどは以前は店頭ではほとんど売っていなくて、友人が分けてくれた種を自分で蒔いて育てるしかありませんでした。
恐る恐る種まきにトライしたのが15年ほど前。それ以後、失敗を繰り返しながら、いろいろな種を蒔いて楽しんできました。芽が出るかな……うまく育つかな……とあまり難しく考えないで、半分でも発芽すればいいんじゃない、って思って気楽に種まきしています。
秋の種まきの時期は? おすすめの種は?
暑い夏が過ぎ、心地よい風が吹き始めると秋の種まきシーズンです。種まきにはおよそ春まきと秋まきがあって、その時期の温度に適した種類の種をまきます。
春は桜が散る頃。桜の咲く温度が基本になるのでわかりやすいですが、秋は、最近のように9月になっても残暑が続くと、ついつい遅くなりがちです。
秋まきの適温は20℃前後といわれていますが、暑くてなかなか蒔けない……と思う時がありました。でも、この適温は気温ではなくて、「蒔く土の中の温度」なのです(……ということを知ったのは最近のことですが)
蒔くのが遅れると気温が下がるまでに根が張らないので、遅くとも9月末までには蒔くようにしています。
■毎年必ず蒔くオルラヤとニゲラ
種まきはオルラ、ニゲラ、ビスカリア、アグロステンマ、アマ、ラークスパー、アスペルラ、キャンディタフトなどなど……その年によって違いますが、毎年必ず蒔くのはオルラヤとニゲラです。この2つは、庭作りになくてはならない花。そして種から育てやすく、おすすめの花です。
■ニゲラ
草丈50~80cmほどの繊細な細い茎が伸びて、5cmほどの軽やかな花を咲かせます。糸のような細い葉が集まると、フワフワっとした空気感が生まれます。花が散った後も、ぷっくり膨らんで種ができますが、ドライにして楽しんでいます。
まとまって咲くと、ふんわりと独特の雰囲気を作ります。バラのラジオタイムスが、ニゲラの中に埋もれている感じです。
■オルラヤ
とても重宝なオルラヤは、別名ホワイトレースといわれるように、白いレースのような繊細な花です。直径8cmほどで、周りがハートのような形の花びらの中に、小さな花がたくさん集まって咲きます。
草丈50~80cmで花壇の後方に植えるとボリュームたっぷり! 特にバラとの組み合わせは抜群で、どのバラもとても引き立ちます。
白いオルラヤは黄色いグラハムトーマスとも、ピンクやローズのバラともよく合います。レースのように軽やかな花なので、たくさん集まって咲いても抜け感があって重くなりません。
オルラヤの種は7~8mmもあって、くっつき虫のようにイガイガしてとても硬い種です。ですから発芽にも時間がかかります。
種まきしてみましょう!
■準備するもの(土、ポット、種)
●土
どんな土でも芽が出る……と思いがちですが、肥料分のない清潔で新しい土が最適です。以前はお花を植える培養土に種まきしていましたが、種まき専用の土に変えると発芽率がぐんと上がりました。
私はハイポネックスの種まき用培養土などを使っています。
●ポリポットやジフィーポットなど
種を蒔く方法はいろいろあります。大きなトレイに直に蒔いて、本葉が出た後に定植する方法や、小分けされた育苗トレイに蒔く方法、また写真右のようなピートモスから作られた植木鉢のようなジフィーポットに蒔く方法など。
ジフィーポットは自然由来の素材で出来ていて土の中で分解するので、そのまま花壇に定植できる優れもの。
もっと優れものは、直径4cmほどのキャンドルライトのような形のジフィーセブン。水をかけるだけで種まき用の培養土ポットになる超優れものです。でも、このジフィーポットは根がポットを破って出てくるので、そのまますぐに定植するには向いていますが、長期間は使えません。
いろんな方法がある中で、私は一番手間のかからない6cmのポリポット(写真左)に蒔いて、定植するまでそのまま育てています。土が出ていかないように、ポリポットの底穴に敷く網はたくさん必要なので、玉ねぎなどの入ったネットを切って使っています(写真下の赤い網)。
●種
種は、6~7月に庭で採れた花の種を蒔きますが、種を採取した後は冷蔵庫で保存しておきます。
今回は扱いやすい大きさの種を蒔きましたが、パンジーなどの細かい種の蒔き方は、またちょっと違います。
■種の蒔き方と管理
1.ポリポット(6cm)の底を網でふさぎ、八分目まで土を入れ、底から出るまで水をやり、十分に湿らせます。
2.厚紙を二つ折りにして種を入れ、指で1ポット3~4粒を蒔きます。チョンチョンチョン、と指で種を土に押し付けます。
3.上から土を薄くかぶせます。
4.霧吹きで水をかけます。
5.種の名前を書いたタグを挿しておきます(初めて蒔くには必須です)。
6.芽が出るまでは、直射日光の当たらないデッキの上など、雨のかからない少し暗い場所に置きます。
種には光の好きな好光性と、光に当たると発芽しにくい嫌光性があります。オルラヤは嫌光性なので、覆土した後は新聞紙をかぶせておきます。そして、毎日じょうろで優しく水やりをします。
7.芽が出たら、さっそく日の当たる場所に移動させ、しっかり日に当てます。
8.本葉が出始めたら、ポットの中の一番元気な苗1つか2つを残して、あとはハサミで切って間引きます。
せっかく出た芽を切るのはかわいそう気がしますが、土の養分を1つか2つの苗に集中させ根を張らせます。いらない芽は抜くと土が崩れて他の芽も抜けたりするので、ちょっと手間ですがハサミで切るのがおすすめです。
9.しっかり日に当てて丈夫に育てます。種まきの土には肥料が入ってないので、本葉が出始めたら液肥をあげます。そしてしっかり大きくなった苗を、11~12月に花壇に植えこんで定植します。
植木鉢に「直蒔き」してみましょう!
種をポット蒔きすると同時に、私は鉢にも直蒔きしておきます(写真左後ろのように)。
直蒔きするのは、オルラヤとニゲラやアマなど背の高い花たち。鉢にパラパラ……と30~40粒ほど蒔いて土をかぶせ、ポット蒔きと同じように育てます。
1か月もすると、なんだかうれしくなるほどワッサと芽が出てきます。
ニゲラ(写真左)は、7~10日ほどで発芽しますが、オルラヤ(写真右)は遅くて……2週間ほどかかるので、蒔いた日は同じでも育ち方がこんなに違います。
でも、春になると同じように鉢いっぱいに育ってくれます。ニゲラは少しだけ間引きますが、わんさと咲かせたいのでポット蒔きのように気を使わず育てています。
どうして背の高い花を直蒔きしておくのか。それは花壇の咲かせたい場所に、咲かせたい高さで咲かせられる……鉢を置くことができるからです。
花が咲き始めた鉢を、庭の花が少ない場所に置いたり、バラと合わせたり……背が高い花は花壇の奥に置くので、鉢も目立たず自然で賑やかな空間が作れます。
写真は4月中旬の裏庭の花壇ですが、3か所にオルラヤの鉢を置いています(丸印)。ジキタリスや他の花たちが育って高さや大きさがわかってきた4月始めに、花壇の雰囲気や色合い、背の高さなど見て花と花の苗の間にオルラヤの鉢を置きます。
中央に背が高く咲いたもの、両サイドに低めのものを置いてバランスを! 特にバラの周りにオルラヤが咲くようにしています。
5月中旬の花壇です。
濃いローズ色のミステリューズやバーガンディアイスバーグ、それにピンクのラベンダードリーム、グレイッシュなあおいなど、どのバラも咲いてにぎやかです。
ジキタリスはもう散ってきていますが、オルラヤは後方でこんもりと咲いて奥行き感が出ています。左の方ではブルーのニゲラが咲き始め(今年ニゲラは咲き出すのが遅かった)、他に種まきで育てたうす紫の小花ビスカリアが右の方で、左下では紫のアスペルラが咲き始めました。
種を蒔く日はみんな同じなのに、芽が出るのも、咲き始めるのも、成長はそれぞれ違います。その年の気候によっても違うし、こんなふうに咲いてほしいと思ってもその通りにはならないし……。植物には植物のサイクルがあって 私の都合を気にしてくれることは決してありません(笑)
でも、小さな種が育って、あふれるように咲く姿を見ると、本当にうれしくて毎年やめられません。
1種類からでも、種まき始めませんか……おすすめです!
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