テレビにスマホ、座り過ぎてない?

「座り過ぎ」がもたらす健康リスクとその対策とは?

公開日:2021/06/05

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テレビを見たり、スマホをチェックしたり、座りっぱなしの時間が増えていませんか。座りがちな生活は実は「喫煙」と同じくらい健康に悪影響があります。寿命を縮め、生活習慣病や認知症のリスクが上がるという報告も。正しい対策をご紹介します。

「座り過ぎ」がもたらす健康リスクとその対策とは?

コロナ禍で身体活動量が3割減!

長引くコロナ禍で、日常生活での運動量がだいぶ減ってしまった──。そう感じている方も多いのではないでしょうか。昨年1月と4月で、コロナ禍の高齢者(65~84歳)の身体活動量がどう変わったかを調べた国立長寿医療研究センターの調査(※1)によると、一週間当たりの身体活動量が約60分(約3割)も減ったことがわかっています。

逆に、テレワーク・在宅勤務の影響で長くなっていると指摘されているのが「座り時間」です。座り時間と言っても、食事をする時間やテレビを見る時間、読書や趣味をする時間などさまざまなシチュエーションがあり、一日の多くの時間、私たちは座って過ごします。女性の場合、事務職やオペレーターなど、仕事はデスクワークという方も少なくないと思います。

そもそも日本人は、世界一座り時間が長い?

座っている時間の一日平均

実際、私たち日本人は、座っている時間が他国の人に比べて長いというデータがあります。経済協力開発機構(OECD)に参加する20か国を対象とした調査(※2)によると、日本人の座り時間は一日平均で7時間(420分)。調査対象20か国の平均である5時間(300分)より2時間も長く、サウジアラビアと並んで最も座り時間が長かったのです。

こうした“座る生活”が染みついている私たちの座り時間が、コロナ禍でさらに長時間化しているとしたら……。心当たりのある方は、ぜひ最後の対策もチェックしてみてください。

テレビの視聴時間が1時間長くなると寿命が22分短く

とはいえ、「座り時間が長いことが一体何が悪いの?大げさな」と思う人もいるかもしれません。しかし実は、世界保健機関(WHO)をはじめとするグローバルな健康常識では、座りがちであることを「セデンタリー(sedentary)」と表現して、喫煙と同じくらい体に悪影響をもたらすものと捉えています。

飛行機に搭乗すると長時間同じ姿勢でいるために発症する疾患「エコノミークラス症候群」をご存じの方も多いでしょう。座り続けることは、この状態と同じ。大きな筋肉が集中する脚を動かさないことで血行不良が起こり、全身に酸素や栄養を送る血流が滞ります。脚の静脈に血液の塊、血栓ができやすくなり、その血栓は血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを起こす恐れがあります(※3)
 

テレビの視聴時間と寿命の関係


座り過ぎの影響は命にもかかわります。2012年、平均50歳の1万人超を対象としたオーストラリアの研究(※4)では、テレビの視聴時間が1時間長くなると、平均余命が22分短くなるという結果に。

世界54か国の人々を調べた研究(※5)では、座り時間が長いことが原因で、年間43万3000人もの人が命を落としていたという報告もあります。

セデンタリーなライフスタイルは、病気の発症リスクも高めます。複数の論文を分析したシステマティックレビューという信頼性の高い研究(※6)から、長時間の座り過ぎが、がん・2型糖尿病・心血管疾患などの発症リスクの上昇や、がん、心血管疾患による死亡リスクの上昇に関連することがわかっています。

それだけではありません。座り過ぎはうつや認知症の発症リスクを高め、座り時間が長い人は記憶の形成に関わる脳の皮質が薄くなる(※7)など、メンタルや脳神経への悪影響も指摘され始めています。

休日に運動しても「座り過ぎ」のダメージは解消できない

「平日は座り時間が長いけれど、休日にはジムで運動しているから大丈夫」と思った方もいるかもしれませんね。しかし残念ながら、最新の報告では、座り過ぎの心身へのダメ―ジは、週末に動いただけでは解消されない、運動とは独立した影響であることも明らかになっています。

もう一つ残念なことに、座り時間は加齢に伴って長時間化する傾向にあります。座り時間は、テレビの視聴時間や活動量計を装着する実験などで測定する場合が多いのですが、いずれの研究においても、年齢に比例して座り時間が長くなる傾向が認められています。

50代以上のハルメク世代にとって、高齢期に向けて、“座り過ぎを予防する生活習慣”を身に付けておくことは、生活習慣病から身を守る上で最もシンプルな方法であり、かつ老後のお金を医療費につぎ込まなくていいコスパのよい対策と言えるでしょう。

座り時間を短くするよう、国民に警鐘を鳴らす国も 

座り時間を短くするよう警告する国も


座り時間に関する研究報告の増加を受け、セデンタリーなライフスタイルは心身の健康に大きなデメリットをもたらすと、国民に警鐘を鳴らす国も増えています。

英国、オーストラリア、米国などでは、身体活動に関するガイドラインの中に、座り時間を最小限にすべきであることを明記して、国民に向けて「脱・座り過ぎ」のキャンペーン・啓発活動も進めています。

世界規模で人々の身体活動の促進に注力するWHOは、すべての年代の人々の座り過ぎを減らし、身体活動を促進することで、心血管疾患なら6%、糖尿病は7%、乳がん・大腸がんに至っては10%も減らすことができ、世界中で年間530万人もの死亡を減らせるという推計も発表(※8)しています。

2020年11月、WHOは身体活動に関するガイドライン(※9)を10年ぶりに更新。中強度の有酸素運動時間を、従来の推奨である150分/週から150~300分/週に、高強度の有酸素運動量を、同75分/週から75~150分/週にそれぞれ改訂した他、座りがちな行動に警鐘を鳴らすパートを初めて盛り込みました。

座り時間はできる限り減らして、軽強度でもいいので活動的な時間に置き換えることを推奨したのです。

“Move more、sit less(もっと動いて、座り時間は短く)”は今や、自分や大切な人の健康を守る上での重要なメッセージです。
 

WHOが推奨するコロナ禍での正しい身体活動量の増やし方

WHOが推奨する正しい身体運動量の増やし方

とはいえ、最近のリモートワーク生活を含め、日常的に家で過ごすことが多い場合、一体どんなことに気を付けたらいいのでしょうか。

WHOは2020年、コロナ禍での座り過ぎや運動不足への対策をまとめた情報集「Be Active during COVID-19(コロナ禍でも活動的に)」を発表。その日本語版(※10)が慶應義塾大学によって作成されています。

ここでは、例えば、仕事中や作業中、座ってテレビを見たりスマホをチェックしたり、ゲームをするときにも、20~30分間に1度、3~5分間の短い中断、立ち上がり、ブレイクを取ることがおすすめだと解説しています。

ブレイクの際は、できれば3~5分ストレッチなどの身体活動を行うことで、筋肉の緊張がほぐれ、精神的緊張も和らぎ、血液循環や筋活動が改善すると言います。

普段ならできれば長引かせたくない家事ですが、座り過ぎ予防の観点からは、できるだけこまめに立ち上がって短時間の掃除を行なったり、庭仕事を楽しんだりというアクションを意識的に生活に取り入れていくことを推奨しています。

その他、この情報集が伝えている主な対策は、下記の通り。自分に合った方法をぜひ生活に取り入れてみてください。

  • こまめに立ち上がる。
  • 家の中でも歩いたり、階段を上り下りしたりする。
  • 庭仕事をする。
  • 体を動かす家事を積極的に行う。
  • 音楽に合わせて踊る、家族と一緒に公園を歩くなど、身体活動時間を楽しむ。
  • ヨガなどオンラインでの運動教室に参加するなど、自分なりのルーティンを作る。
  • 水入りのペットボトルなどの重りを持ち上げるなどの筋トレ、腕立て伏せ、腹筋、スクワットを行う(※WHOの新ガイドラインでは、週2回以上の筋トレを推奨)。

編集部もやってみた!座ったまま予防体操

最後に仕事柄、どうしても座り時間を短くできないという方向けに、座ったままでも行える対策を紹介しましょう。厚生労働省(※11)は、エコノミー症候群予防のために足の運動をこまめに行うことを推奨しています。

と言っても、椅子に座ったままの状態で脚を片方ずつ上げたり、かかとの上げ下げ、足首回しやふくらはぎをもんだりするだけ。難しいことは何一つありません。ポイントは、大きな筋肉が集まっている下半身の血流を滞らせないこと。1時間に1度など、自分なりに頻度を決めて、足のケアタイムをルーティンにしていきましょう。
※足の運動の画像は複数あります。ヤフー等でご覧の方は画像をスライドさせてご覧ください。

足の運動1:足の指のグーパー

座ったまま、足の指を、じゃんけんのグーをするように縮めます。その後、足の指一本一本が離れるようにパーっと開きます。

足の指のグーパーその1
デスクワーク中心の50代編集部員もやってみました。まず「グー」。思ったように指が動きません。
「座り過ぎ」の危険度が高いようです
足の指のグーパーその2
「パー」。本来なら、指一本一本がきれいに開くのが理想です。がんばります……

足の運動2:上下につま先立ち

座ったまま、足の裏を床に付けた状態から、かかとを浮かせて「つま先立ち」します。この上下運動を繰り返します。

上下につま先立ちその1
椅子に座って、これが基本の姿勢
上下につま先立ちその2
これは足首の前側が伸びて気持ちがいい。ふくらはぎもしっかり動かせます

 

足の運動3:つま先の引き上げ

今度は、つま先を上げます。上げる、下げるを繰り返します。

つま先の引き上げその1
再び、この基本姿勢から、つま先を上げていきます
つま先の引き上げその2
座り過ぎの編集部員は、足首が硬くなっていて、ここまでしか上がりません。繰り返すと徐々に動くようになりました

足の運動4:足首回し

ひざを両手で抱えて、足の力を抜いてから足首を回します。ある程度やったら、反対の足も同様に。

足首回しその1
ひざを両手で抱えて足をブラブラさせてから、足首を回します
足首回しその2
これも「座り過ぎ」編集部員はスムーズに回せません(涙)毎日続けよう、と決心しました

足の運動5:ふくらはぎもみ

最後は、ふくらはぎを軽くもみます。反対側の足も同様に。

ふくらはぎもみ
簡単な動作でしたが、思ったより、ふくらはぎを動かします。一日に何度か繰り返した50代編集部員は、なんだか足のむくみもとれた感じでした

 

文=新村直子(公衆衛生学修士・医療健康ジャーナリスト)

出典
※1 https://www.ncgg.go.jp/hospital/documents/kansenyobo.pdf
※2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21767731/
※3 https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=152
※4 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23007179/
※5 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27017420/
※6 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25599350/
※7 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0195549
※8 https://www.thelancet.com/series/physical-activity
※9 https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128
※10 http://sports.hc.keio.ac.jp/ja/news/assets/files/news/WHO%20Fact%20sheet%20on%20PA%20during%20COVID_CLEAN%20FINAL%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E7%89%88%EF%BC%88%E6%8E%B2%E8%BC%89%E7%94%A8%EF%BC%89.pdf
※11 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170807.html

 

■もっと知りたい■

新村直子

医療健康ジャーナリスト・公衆衛生学修士・一般社団法人ハイジアコミュニケーション代表理事。日経BP社「日経ヘルス」、雑誌「ハルメク」副編集長を経て独立。50代後半に慶應義塾大学大学院修了、同大スポーツ医学研究センター研究員。『医師が認めた!究極のきくち体操』(日経BP社刊)を構成・執筆。

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