脳にいい習慣で50代から認知症対策#2

会話が減ると脳は衰える?50代からの「脳を元気に保つ会話習慣」

会話が減ると脳は衰える?50代からの「脳を元気に保つ会話習慣」

公開日:2026年04月15日

会話が減ると脳は衰える?50代からの「脳を元気に保つ会話習慣」

日常生活の中で言葉が出づらいのは、脳の働きが落ちているサイン。家族や友人と話しているとき「なかなか固有名詞が出てこない」「アレ、ソレが増えた」ということが増えていませんか?「脳を活用する会話術」で認知症を防ぎましょう。

教えてくれた人:大武美保子(おおたけ・みほこ)さん

理化学研究所ロボット工学博士・認知症予防研究者 
1975(昭和50)年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学博士課程修了。理化学研究所革新知能統合研究センター・チームリーダー。認知症を予防する会話支援手法「共想法」を開発。著書に『脳が長持ちする会話』(ウェッジ刊)

何気なくしている「普段の会話」を見直してみましょう

何気なくしている「普段の会話」を見直してみましょう

年齢を重ねるにつれて、会話中にとっさに言葉が出てこなくなる、同じ話や昔話の繰り返しになる、といった事態が生じやすくなるものです。

脳科学の知見や最新のテクノロジーをもとに“認知機能を育む会話”を考案、研究している大武美保子さんは、「会話には、その人の脳の健康度合いが反映される」といいます。

実際に高齢者グループの会話の録音データを解析した研究では、会話の中で、たくさん話すほど使われる言葉の数が増える人は、認知機能が高い一方、たくさん話しても、使われる言葉の数が少ない人は認知機能が低いとわかりました。

「これは、認知機能が下がると、同じ発言を繰り返してしまうため」と大武さん。米国の研究では、晩年をいきいきと過ごせる人の大きな特徴の一つが、言語能力の高さであることがわかっています。

「いつも同じ愚痴や自慢話ばかりしていると、脳の同じ場所だけが働き、脳の残りの場所が休んでいる可能性が高くなります。脳の使われない場所に関わる認知機能は退化しやすいため、いつも同じような会話をしていると脳の衰えを早め、認知症のリスクを高めてしまうのです」

反対に、日頃から意識して脳のいろいろな場所を使う会話をすることで、認知機能を維持し、認知症の発症を防ぐことができるといいます。では、どんな会話が認知症予防に役立つのか? さっそく具体的に紹介していきます。

何気なくしている「普段の会話」を見直してみましょう
Ushico / PIXTA

【シーン1】いつも同じような話ばかりになってしまう

新しく体験したことや見つけたことなど「最近の話」をする

記憶力の低下を食い止めるために、まずおすすめしたいのが「最近の話」をすることです。

「最近の話をするには、新たな体験や発見を『覚える』、それをちゃんと『覚えておいて』、会話中に『思い出す』という3つの記憶のプロセスを回すことになります。このプロセスを日頃から回す習慣をつけておくと、脳の全体的な記憶機能を底上げできます」(大武さん)

【シーン2】とっさの会話で何を言えばいいかわからない

「そういえば」を活用して会話のきっかけをつくる

街中やスーパーで知人と会ったとき、とっさの会話が出てこず、あいさつだけで済ませていませんか? そんなとき活用したいのが「そういえば」。

「そういえば今朝、庭のバラが咲いたんです」「そういえば話題の映画、見ました?」と口火を切ることで会話のきっかけをつかめます。「こうした会話の積み重ねが、認知機能貯金になりますよ」(大武さん)

【シーン3】会話を周囲にまかせ、ただうなずいていることが多い

「いいね」に一言付け加えることを心掛けて

会話を周囲の人に任せ、ただうなずいている状態は、自分の頭で考え、言葉を探し、相手に伝えるという脳の働きが停止している状態。続けていると認知機能低下のリスクが高まります。

そこで「日常会話で一言加える工夫を。相手の発言に『いいね』だけ返すのではなく、『〇〇だから、いいね』と理由や根拠を足すのです」と大武さん。「ランチは和食でどう?」と言われたら、「さっぱりして、いいね」という具合に伝えましょう。

【シーン4】気が付くと自分の話ばかりしてしまう

「聴く6」:「話す4」を目指してみる

「自分の話をするには、自分が知っていることを自分の思考回路で話せばよいのですが、人の話を聴く場合は、むしろ脳を複雑に使います」と大武さん。人の話を聴くには、自分になじみのない言葉や、よく知らない出来事・状況を理解しながら、相手から見える世界を想像しなければいけません。

「聴く力を養うには、『聴く6』『話す4』の割合を意識するのがおすすめ。聴いて新しいことを覚え、相手を理解することが脳を長持ちさせます」

【シーン5】知らない言葉が会話に出てきても、なんとなく流してしまう

「〇〇って何?」と聴くことを恥ずかしがらない

会話の中に知らない言葉や事柄が出てきても、「無知をさらすようで恥ずかしい」「面倒だから黙っていよう」と流していませんか?

大武さんは「それは自分をアップデートし続けないことをよしとすることになり、脳にとってよくありません。知っていることだけで済ませようと思ったら、老化の始まりです」と指摘します。

会話の中に知らない言葉や事柄が出てきたら、知ったかぶりをせずに「〇〇って何?」と正々堂々と聞いてみましょう。

【シーン6】人と話していても、つい上の空になりがち……

「一つは質問しよう」と決めて話を聴く

認知機能が落ちてくると、人の話を聴いているようで聴いていない、実はわかっていない、ということが起こりやすくなります。

「そもそも人と会話をしていても、意識的に『聴こう』と思わなければ、脳は聴こうとしません。そこで脳を働かせ、聴くことに集中するために大切なのが質問です」と大武さん。何か一つ質問しようと決めて、相手の気持ちを想像しながら会話を楽しみ、新しいことを取り込んでいく姿勢が、認知機能の低下を防ぎます。

取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、イラストレーション=金子なぎさ

※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年9月号を再編集しています。

HALMEK up編集部
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