脳にいい習慣で50代から認知症対策#1
50代から始めたい「認知症リスクを減らす」脳を元気に保つ6つの習慣
50代から始めたい「認知症リスクを減らす」脳を元気に保つ6つの習慣
公開日:2026年04月15日
教えてくれた人:瀧 靖之(たき・やすゆき)さん
脳科学者・医師
1970(昭和45)年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学加齢医学研究所教授。医師・医学博士。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達やメカニズムを明らかにする研究者として活躍。
何歳になっても脳は成長する!楽しい刺激で認知症リスクを遠ざける

「脳の体積は20代頃をピークに徐々に減少し、それにともなって考える、判断する、記憶するといった高次認知機能は落ちていきます」
こう話すのは、東北大学加齢医学研究所で「生涯を通じ、いかに脳の健康を保つか」をテーマに研究を続け、約16万枚もの脳のMRI画像の研究や診断をしてきた瀧靖之さん。脳の機能低下は誰にも起こる自然な変化ですが、一方で「脳は使い続けることで何歳になっても成長する」といいます。
「脳には『可塑性』という変化する力があり、何歳から何を始めても、確実に能力が伸びることがわかっています。また記憶を司っている海馬は、年齢に関係なく神経細胞を新しく生んで体積を増やすことができます。つまり脳は使えば使うほど筋肉のように鍛えることができるのです」
脳の機能を維持し、認知症を遠ざけるために「脳を楽しく刺激する日常の生活習慣こそ最大の特効薬」と瀧さん。次から脳にいい6つの生活習慣を解説します。

1.運動
軽い運動でも脳の血流アップ! 海馬の新生を助けます
内臓脂肪型の肥満や高血圧などは動脈硬化を促進し、脳の血流も低下させて老化を加速させるといわれています。そこで心掛けたいのが、少し息が弾む程度の有酸素運動。
「なるべく早歩きをする、エスカレーターを1階分だけでも階段にするといった積み重ねが非常に重要です。軽めの運動でも脳の血流を上げて、海馬の新生を助けることがわかっています」(瀧さん)
2.趣味・好奇心
「楽しいことを楽しくやる」が脳の成長を促します
「好奇心を持って取り組む趣味活動は、脳が変化する力を高めるのにとても大事です」と瀧さん。スポーツ観戦や音楽鑑賞、絵画鑑賞といった受動的な趣味よりも、自ら運動をする、楽器を弾く、歌う、絵を描くといった能動的な趣味の方が、より脳の活性を高めるといいます。
「何よりもワクワクした気持ちで楽しく取り組むことが脳の成長を促します」
3.会話
人とのおしゃべりは脳のあらゆる領域をフルに使います
会話をしているとき、私たちは相手の表情やしぐさを見ながら気持ちを理解し、自分はどう対応したらいいかを考えます。
「表情認知、感情理解、言語、共感性など脳のあらゆる領域を使う会話はとても大切」と瀧さん。さらに会話には大きな効用があるそう。「自分の気持ちをわかってもらったときや、相手の気持ちを理解できたとき、人は幸せを感じます。この幸福感が脳の働きを活発にするのです」
4.睡眠
疲れをとるだけでなく、記憶するためにも睡眠は重要
睡眠は疲れをとるためだけでなく、認知症予防にも欠かせません。「脳は寝ることで、記憶を整理、保持し、固定するといわれています。またアルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβは、睡眠をとることで洗い流せることがわかっています」(瀧さん)
最近の研究によれば、6時間程度眠ることができれば十分だそうです。
5.食事
いろいろなものを食べて腸内細菌の多様性を上げましょう
「『〇〇を食べると脳にいい』といったさまざまな食の情報がありますが、脳科学の観点からすると、特定の何かを食べることより、ちょっとカロリーを控えめにバランスよくいろんな品目を食べることが重要です」と瀧さん。
脳と腸は互いに密接に影響し合う関係にあり、「特定のものばかり食べると、腸内細菌の多様性が下がり脳に悪影響を与えます」
主観的幸福感
「ささやかながら幸せ」と感じることが脳の老化を抑えます
うつうつとした気分は海馬を萎縮させ、認知機能の低下につながるといわれています。一方、「他人がどう思うかではなく、自分自身がささやかながら幸せと感じる“主観的幸福感”は、脳の健康を維持します」と瀧さん。
「人のためにちょっといいことをする利他的行動や、昔のことを楽しく懐かしむノスタルジーが主観的幸福感を高めます」
脳のクセを利用して上手に習慣づけましょう
おすすめ1:小さく始める「スモールステップ法」

運動や語学学習、楽器演奏などの習慣は、脳にいいと思って始めても三日坊主になりがち。そこで活用したいのがスモールステップ法。英語ならまず1日1単語だけ覚え、それを1週間続けたら徐々に単語の数を増やしていく。小さな積み重ねで2か月後にはしっかり習慣化します。
おすすめ2:絶対にやる習慣とセットにする

脳には「現状維持バイアス」といって、新しいことに取り組もうとすると、それを拒む性質があります。そこで、いつも絶対にやる習慣とセットにするのがおすすめ。例えば歯みがきしながらスクワット、朝食後に楽器を弾くなど。続けるうちに逆の現状維持バイアスがかかり、やらない方が気持ちが悪くなってきます。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、イラストレーション=金子なぎさ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年9月号を再編集しています。




