後悔しない白内障手術の選び方#1

白内障になった眼科医が自らの体験から語る、術後の見え方と本音

白内障になった眼科医が自らの体験から語る、術後の見え方と本音

公開日:2026年04月07日

白内障になった眼科医が自らの体験から語る、術後の見え方と本音

「最近、見えづらくなったかも…」白内障は50代以上に身近な変化ですが、手術となると不安や迷いも。「光がにじむ」「オバケのように見える」――術後に起きた意外な見え方とは。迷い続けた10年と本音を、当事者の眼科医がわかりやすく解説します。

高田眞智子(たかだ・まちこ)さんのプロフィール

医学博士・日本眼科専門医。1990年横浜市立大学医学部卒。結婚を機に茨城県つくば市に転居し、東京医科大学眼科学教室転局。2000年12月高田眼科を開院。2009年3月多焦点眼内レンズを用いた先進医療実施施設に認定。2024年4月、高田眼科を医療法人つくばとして再スタート。

眼科医が白内障手術を先延ばしにしたかった理由

眼科医が白内障手術を先延ばしにしたかった理由
polkadot / PIXTA

「いつ、手術を受けようか」「どの眼内レンズにしようか」自分自身が白内障の手術を受ける必要があることが分かってから、約10年間、私はこの2つの悩みをずっと抱えていました。

白内障は、目の中の水晶体が白濁して視力が落ちていく病気で、多くの人が加齢により発症します。

手術を受けるタイミングと眼内レンズ選びは、誰にとっても大切で、慎重に決めなければなりません。とりわけ私は現役の手術眼科医として、この決断に非常に悩みました。

なぜなら私は膨隆白内障(水晶体が膨らんでしまう、やや特殊なタイプの白内障)ではありましたが、水晶体は濁っておらず極めてよい視力を得ていたからです。

眼科医である私は、日々、このよく見える目でたくさんの白内障手術をしてきました。自分が白内障手術を受けた場合、この良好な視力が維持される保証は絶対ではありません。

手術は一日でも先延ばしにしたかったのですが、万が一、緑内障発作を起こそうものなら私の手術医生命は終わることも理解していました。加えて、日々の診療や手術に支障をきたさないためにもいろいろな意味で最適なタイミングを慎重に選ぶ必要がありました。

どっちを選ぶ?快適さか仕事か…眼科医が悩んだレンズ選び

どっちを選ぶ?快適さか仕事か…眼科医が悩んだレンズ選び
K.Nakano / PIXTA

近年急激に進歩した眼内レンズ選びにも、眼科医だからこその葛藤がありました。

白内障手術で入れる眼内レンズには、大きく分けて多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズがあります。

私が手術する患者さんたちには、特殊なケースを除いて可能な限り、遠くも近くも見える多焦点眼内レンズをおすすめしています。多焦点眼内レンズは白内障手術と同時に老眼も治療するので、術後の生活がメガネなしで非常に快適に過ごせるからです。

しかし、私の場合はまさに「特殊なケース」にあてはまっていました。日常生活のことだけを考えるなら多焦点眼内レンズを迷わず選ぶところですが、私が日頃行っている眼科の手術では繊細な見え方が強く要求されます。

多焦点眼内レンズは、コントラスト感度(視界のくっきり度合い)の点で単焦点眼内レンズよりわずかながら劣ります。そのため、手術を手掛けている眼科医自身が白内障手術を受ける場合は、一点に焦点を合わせた単焦点眼内レンズを入れるのが適していると考えられていました。

術後の快適な“視生活”を選べば、今の仕事が続けられないかもしれない。でも老眼鏡が煩わしくて仕方がないので多焦点眼内レンズを諦めたくない。

私はさんざん検討した末、さまざまな種類のある多焦点眼内レンズのなかで、眼科医に要求される視力と日常生活の快適さの両方を兼ね備えており、自分が当時患者さんに最もよくおすすめしていたレンズを移植することにしました。

「光がオバケのように見えた」手術直後に起きた異変

しかし、手術直後から手元が見えはじめ喜んだのもつかの間、手術当日の夜、思ってもみなかった経験をしました。夜、近くのイルミネーションを見たとき、カラフルな光がにじんで、まるでオバケのように見えたのです(光視症)

ああ、私の目はこんなことになってしまったのだと非常にショックを受けました。同時に、今まで私は患者さんにこんなひどいことをしてきたのか?と悲しみが押し寄せ、涙がこぼれました。

「光がオバケのように見えた」手術直後に起きた異変
手術後の見え方の変化(書籍より引用)

もっとも、このような術後の視界の変化は一時的です。その後は完全に消えるわけではないものの症状は軽くなり、見え方にも徐々に慣れて自然に受け入れられるようになります。

それでも、私はそんな体験をしたことで、患者さんの気持ちがより深く分かるようになりました。「術後の視界の変化は、次第に慣れて気にならなくなる」と理屈では分かっていても、実際にそうなると患者さんは非常に不安を感じるということを、身をもって知ったのです。

ほかにも、白内障手術は短時間で安全に行えますが、患者さんにとっては「もしも失敗したら……」という心配が常に付きまとうこと、白内障が「見えるようになる希望の手術」だと理屈で分かってはいても本音は怖くて先延ばしにしたいものであること、術後にかける保護メガネは思っていたよりずっと不便で面倒だということなど、自分が白内障手術を受けて分かったことがたくさんありました。

次回の記事では、後悔しないための眼内レンズの選び方や手術の判断ポイントを実例とともに紹介します。

※本記事は、書籍『眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと』より一部抜粋して構成しています。

もっと詳しく知りたい人は

もっと詳しく知りたい人は

『眼科医の私が白内障手術を受けて分かったこと』高田眞智子著(幻冬舎)

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HALMEK up編集部
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