心臓力を上げる新習慣#1
50代からの心不全、突然死を防ぐ!心臓専門医が教える基礎知識
50代からの心不全、突然死を防ぐ!心臓専門医が教える基礎知識
公開日:2026年03月11日
教えてくれたのは、心臓専門医の大島一太(おおしま・かずたか)さん

大島医院院長・東京医科大学八王子医療センター循環器内科兼任講師。1996年、東京医科大学卒業。同大学院修了。かかりつけ医と大学病院を兼務する、心臓病のエキスパート。著書に『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』(かんき出版刊)など。
心不全とは?「病気」ではなく心臓に負担がかかった「状態」
日本の心不全の患者数は推計で約120万人。今後も増加が予測されています。
「心不全とは、息が苦しくなって心臓が止まり最期を迎えるときの状態だと考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、心不全は病名ではなく、心臓に負担がかかった状態を指します。心臓病だけでなく、高血圧や貧血、甲状腺の異常なども、心不全の原因の一つです」
そう指摘するのは、心臓病のエキスパートである大島医院院長の大島一太さんです。

高血圧をはじめとする生活習慣病や狭心症・心筋梗塞、不整脈、弁膜症などは、いずれも心不全のおもな原因。一方で、心臓とは関係なさそうに思える貧血や甲状腺の異常、さらには肺の病気なども、心臓に負担をかけるため、心不全につながります。
痩せているのになぜ?無症状から始まる心不全の4ステージ
心不全の進行度と重症度は、4段階のステージに分けられ、ステージAとBの段階では、息苦しさやむくみなどの症状はありません。しかしステージAに含まれる高血圧や脂質異常症などは、心臓肥大や動脈硬化を進行させ、突然死を起こすことがあるため、“サイレントキラー”と呼ばれます。
「日本人女性は小柄で脂肪をためるスペースが少ないため、痩せていても脂質異常症や、心臓周囲の脂肪の蓄積により、心臓や血管に負担がかかっている人が少なくありません。特に心臓周囲の脂肪は最も怖いサイレントキラーです」と大島さん。
心臓病は男性や肥満の人に多いイメージがあるかもしれませんが、女性でも、50代以降は体形に関係なく心不全ステージA以上の可能性があり、誰にとっても他人事ではありません。しかも、川でいえば“上流”に当たるステージAの段階では症状がないため、何もせずに放置すると、中流、下流へと進行してしまいます(下参照)
「ただ、発症の原因がはっきりしないことも多いがんとは違い、心臓突然死や心不全は予防が可能です。突然死や寝たきりを防ぐためにも、ステージAかBの段階で、心臓力を高めるための行動をとる“上流意識”を持ちましょう」と大島さんは強調します。
無症状のうちから対策を!突然死を防ぐカギは“上流意識”

下流のステージDになる原因は、上流で作られます。「まずは自分がどの段階にあるかを自覚してください。ステージAかBの段階で心臓力を高める行動をとり、病気の芽を摘みましょう」(大島さん)
【心不全ステージ A】
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満など、心臓病はないけれども心臓に負担がかかり始めているリスクステージです。
<上流>
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
動脈硬化を進め、心臓力を低下させる3大要因です。どれか1つでも当てはまればすでにステージAの状態。健康診断で異常があれば、要改善!
【心不全ステージ B】
心臓肥大、狭心症・心筋梗塞、弁膜症などの心臓病はあるけれども症状のないリスクステージ。Cへの移行を防ぐことが重要です。
ステージBの心臓肥大でもほぼ無症状!


高血圧を放置した結果、心臓肥大になった人のエコー写真(上)。「心臓が肥大しても症状がないことが多いのですが、次に心筋梗塞や心不全を起こしてしまう危険な状態です」(大島さん)
<中流>
- 心臓肥大
- 心筋梗塞
【心不全ステージ C】
本格的に心不全を発症し、心機能が低下して血液を送り出せなくなり、息切れ、体のむくみ、体重増加などの症状が現れた状態です。
【心不全ステージ D】
心不全の薬物療法が効かなくなった末期的な状態です。息苦しく、胸に水がたまったりして、寝たきりに近い状態になります。
<下流>
- 難治性・末期心不全
BNPとは?心不全の進行度は血液検査で丸わかり!
BNPは、心臓に過度な負担がかかることで、心臓から分泌される「脳性ナトリウム利尿ペプチド」というホルモンです。血液検査でBNP値を測定することで、心不全の進行度や余命まで判断できます。BNP値が高いほど、心不全が進行している証拠です。
次回は、あなたの心不全リスクがわかるセルフチェックと、日常生活にすぐ取り入れられる対策をご紹介します。
取材・文=福島安紀、イラストレーション=熊本奈津子、構成=新井理紗(ハルメク編集部)
※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年8月号を再編集しています。




