尿漏れ・頻尿を改善する「習慣・トレーニング・ケア」
2024.04.182024年04月18日
【医師指導】尿トラブルは自分で改善できる#1
50代以降の尿トラブルを招く「間違った習慣」とは?
頻尿や尿もれ、年齢のせいと諦めていませんか? 「実は、多くの尿トラブルは誤った排尿習慣が原因。トイレの行き方を変えるだけで改善できることも」と医師の二宮典子さんは話します。尿トラブルの主な4つの理由と排尿のメカニズムについて解説します。
教えてくれた人:二宮典子(にのみや・のりこ)さん
医師。医療法人心鹿会(大阪)理事長。2005年、香川大学医学部卒業。女性医療クリニックLUNA心斎橋などを経て、21年から現職。専門は女性泌尿器科。泌尿器科専門医・指導医、性機能専門医。著書は『女医が教える 潤うからだづくり』(主婦の友社刊)。YouTubeの「ココシカ診療所」も開設。
注意!尿トラブルを招く習慣
- 急いで排尿することが多い
- トイレに座ると即座に排尿している
- お腹に力を入れて排尿している
- 最後の1滴まで残らず出したい
- 「とりあえず」と思ってトイレに行くことが多い
当てはまるものがある人は要注意! 今からケアを始めましょう
更年期前後の女性の約半数が悩む頻尿・尿トラブル
頻尿や尿漏れなどの尿トラブルに悩む女性は多いもの。女性泌尿器科が専門の二宮レディースクリニック院長の二宮典子さんは、「更年期前後になると女性の約半数が悩み、60代、70代と年齢が上がっていくと該当する方はもっと多くなります」と話します。
50代以上のハルメク世代の尿トラブルの主原因は次の4つで、それらが重なっていることもあるといいます。
尿道を支えている筋肉が弱くなって、お腹に力が入ったときに漏れてしまう「腹圧性尿失禁」、膀胱が過度に収縮して急な尿意を催す「過活動膀胱(かかつどうぼうこう)」、女性ホルモンの減少によって頻尿や残尿感などが生じる「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」、そしてもう一つが日頃の「誤った排尿習慣」です。
「お腹に力を入れておしっこを出していませんか。そんな排尿の仕方を毎日続けていると、尿道や膀胱自体に病気はなくても尿トラブルが起きやすくなるのです」と二宮さん。
尿漏れ・頻尿の主な4つの理由
GSM(ジーエスエム)
閉経による女性ホルモンの急減で膣や外陰部が萎縮し、デリケートゾーンのかゆみや痛み、不快感、頻尿、尿漏れなどが現れる。2014年に提唱された比較的新しい病気の概念。
過活動膀胱
文字通り、膀胱が活動し過ぎる病気。尿がそれほどたまっていないのに膀胱が勝手に収縮して、我慢できないような強い尿意に突然襲われる。頻尿や尿漏れが主症状。
誤った排尿習慣
お腹に力を入れて出す、最後まで絞り出すといった排尿習慣があると膀胱や尿道に負担がかかり、トイレが近くなったり、将来の尿もれリスクが上がったりすることに。
腹圧性尿失禁
膀胱や尿道を支えている骨盤底筋が加齢や出産などによって弱くなり、くしゃみや咳など、お腹に力が入ったときについ漏れてしまう。女性が尿漏れになる原因として、特に多い。
力んで出す習慣が尿トラブルにつながる
トイレに座ったらすぐに出したい、勢いよく出したい、最後の1滴まで絞り出したい……と排尿時に力んでいる人、多いのでは? これはトイレに行くたびに頻尿・尿漏れの練習をしているようなものだと二宮さんは話します。
「本来、排尿は“反射”。脳から『おしっこがたまったから出して』という指令が出ると、それを受けて膀胱や尿道が排尿に向けてじんわりと動き出します。そんな体の自然な反射に逆らって無理やり出そうとすると、尿道や膀胱に負担がかかります。すると膀胱がむくんで残尿感が生じ、尿意を早く感じやすくなるのです。
また日頃から力んで排尿していると、お腹に力がかかったときに尿が出やすくなり、将来の腹圧性尿失禁にもつながってしまいます」
でも、ご安心を。「排尿習慣を改めるだけで尿トラブルが改善する人も多い」と二宮さん。まずは排尿の仕方など、セルフケアから始めましょう。
次回は、尿漏れ・頻尿を改善する習慣・トレーニング・ケアを紹介します。
取材・文=佐田節子、イラストレーション=藤原なおこ、構成=大矢詠美(ハルメク編集部)
※この記事は雑誌「ハルメク」2024年1月号を再編集しています
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