菅沼薫さんに聞く、今の自分に合う美容法

ボリュームダウン、ツヤ、白髪、大人の髪悩み対策

公開日:2019.06.12

更新日:2024.06.11

年を重ねて、髪のボリュームとツヤが減ったと感じていませんか? その悩みは、ドライヤーの風の当て方とヘアケア剤の使い方で解消できます。今回は大人の髪悩みであるボリューム不足、ツヤ不足の解消法を菅沼薫さんに教えてもらいます。

髪のボリュームを出すドライヤーの使い方

前回まで4回にわたり抜け毛のケアについてお話ししてきました。

髪の洗い方を見直したり、ヘッドマッサージを続けていけば、きっと効果が現れるはず。でもペタンとボリュームダウンして薄くなってしまった髪は、できれば今すぐどうにかしたいですよね。その悩みは、実はドライヤーのあて方で解消できます。

もともと髪は、頭皮から斜めに生えています。この生え方に沿うように髪の上からドライヤーの風をあてると、髪はペタンと寝てしまいます。ボリュームを出したいなら、生えている流れとは逆に、髪の内側からドライヤーの風を当てましょう。

ドライヤーの当て方

 

ドライヤーの当て方の正解
撮影=山下コウ太

シャンプー後、髪が生えている流れとは逆に手ぐしを入れて、髪を持ち上げて風をあてます。そうすれば、頭皮をしっかり乾かせる上にボリュームを出すことができます。

髪の生え方に沿って分け目を固定してしまうと、どうしてもペタンとしやすいので、分け目を変えるのもボリュームを出すコツです。また、ポニーテールやまとめ髪などを続けると、毛根にテンションがかかり、頭皮も引っ張ってしまうので注意しましょう。髪をまとめるときはギュッと縛らずに、引っ張られない程度のゆるさをもたせてください。

ツヤ不足はキューティクルをコーティングしてカバー

毛髪の細胞の作り

髪のボリュームだけでなく、ツヤがなくなるのも年齢髪の悩み。ツヤがなくなっていく原因はいろいろありますが、これには毛髪の構造が関係しています。

上の図のように、髪はのり巻きのようになっています。ご飯の部分にあるのが、タンパク質などで構成されたコルテックス。髪の柔軟性や太さに影響する部分で、髪の色を決めるメラニンも、ここにあります。中心にあるのがメディラと呼ばれるタンパク質で、これは髪が細い場合ない人もいます。

外側の‟のり”の部分がキューティクル。こののり巻きは、日本人は円になっていて直毛であることが多く、欧米人は楕円の形をしている人が多いようです。

ツヤのないキューティクルの状態

キューティクルは、瓦やウロコのように根元から毛先に向かって成長し、6〜8枚が重なっています。健やかな髪は、重なり合ったキューティクルの表面がなめらかです。紫外線や摩擦、パーマやカラーリングなどダメージを受けたり、髪が伸びて毛先がダメージを受けると、キューティクルの表面がめくれ上がったり、重なりが少なくなっていきます。また加齢によってキューティクルの長さが短くなったり、浮き上がったりしやすくもなります。

重なりの層が少なくなると、水分や油分を保つ力も減ってしまい、ツヤがなくなる原因に。また、めくれ上がった箇所から髪が切れることもあり、その切れたところから枝毛になってしまいます。

キューティクルをケアしてツヤを出すためには、トリートメントをするほか、キューティクルをコーティングするヘアケア剤をつければカバーできます。ハルメク世代だと椿油を使っている人が多いようですが、根元につけないよう気をつけて。毛先5cmくらいを目安につけてください。椿油はべたつかないのに伸びや滑りがよく、使いやすい商品です。基本的には酸化しにくく固まりにくいのもですが、酸化すると刺激物になるので古いものを使い続けている人は、注意してください。

今は化粧品の配合技術が進歩していて、ベタつきがなく使いやすい商品が増えていますので、いろんなものを試してみるのもいいかもしれませんね。ですが、根本的な改善策は頭皮環境を整えて健やかな髪を育てるケアをすることだけでなく、ダメージを与えないようにすることが大切です。

人気のグレイヘア!なぜ髪は白くなるの?

日本のマダム、美しいグレイヘア女性
ハルメクWEB「かっこいいグレイヘアスタイルカタログ」より。撮影=中村彰男

最近は、グレイヘアが人気のようです。毛染めなどから解放される上、髪の傷みも減らすことができ、年相応なナチュラル感できれいと好評で、グレイヘアにする人はこれからますます増えてくるのではないでしょうか。

ただし、美しいグレイヘアを保つには、髪のツヤの維持が大事。小まめなヘアカットやトリートメントなどのケアが必要ということを忘れないでくださいね。

ところで、長年不明だった白髪のメカニズム「毛根部のどの部分に白髪になる鍵があるのか」が、近年の研究で解明されました。

髪の色はコルテックス内のメラニン色素の量によって決まります。メラニン色素をつくる色素幹細胞は毛包の根元から少し離れたバルジ領域と呼ばれる部位にあることが、日本の研究者によって発見されました。何らかの原因によって、その部位がはたらかなくなった結果、髪は色を失い白髪になってしまうそうです。

ですが、判明したのはここまで。はたらかなくなった原因や、はたらかせるための有効性分はまだ研究中で、その成果が待たれるところです。

抜け毛やボリューム不足など、年齢を重ねると髪の悩みも増えてきます。でも、正しいケアを続けることで、予防と改善は可能です。

5回に渡ってお話ししたケアをぜひ取り入れてみてくださいね。抜け毛を防ぎ、健やかな髪を維持するためには、ヘアケアだけでなく生活習慣も大事。バランスの良い食事、適度な運動、良質な睡眠は、健やかな体をつくるための基本です。また、心身の過度なストレスも美容・健康には大敵です。

これからの季節は、太陽などの刺激で肌だけでなく、頭頂部も刺激を受けやすくなります。帽子を被るだけでも頭皮を守ることができるので、日頃の小さな心がけも忘れずに!

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取材・文=田中優子■参考資料
ホーユー「加齢によりキューティクルの長さが21%減少 ホーユーの新技法により毛髪のキューティクル層の構造解析に成功」

東京医科歯科大学『Bloom! 医科歯科大 No.12』「白髪や脱毛の用意となる幹細胞を探る

 

菅沼 薫

ビューティ&ライフ サイエンティスト、武庫川女子大学客員教授、sukai美科学研究所代表。日本顔学会会長をはじめ、化粧品成分検定協会理事、日本香粧品学会学術委員などを務める。美容雑誌「VOCE」における化粧品比較実験を長年手掛ける。化粧品と肌のスペシャリストとしてメディアでも活躍中。

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