50代以上の女性は要注意の生活習慣病をひもとく

【医師解説】高血圧とは? 原因や対策、治療と予防法

笠木伸平先生
監修者
みなと元町内科クリニック 院長
笠木伸平

公開日:2021.01.13

更新日:2023.04.04

50歳を過ぎて「高血圧」が気になり始めたという方もいるのでは? 実は日本人の約3分の1が高血圧だといわれています。そこで高血圧の定義や高血圧の基準値、症状、血圧が上がる原因などを解説します。高血圧の治療・対策についてもご紹介します。

高血圧とは
【医師解説】高血圧とは? 原因や対策、治療と予防法

高血圧とは

厚生労働省が発表した「平成30年国民健康・栄養調査」の結果では、50代女性で高血圧だった人の割合は27.0%、4人に1人以上いることになり、さらに60代女性では35.2%、約3人に1人でした。こうなると、もう他人事ではありません。

はじめに「高血圧」とは、どういう状態を指すのでしょうか。ここでは、高血圧の定義、高血圧の基準値について解説していきます。
参照:厚生労働省「平成30年国民健康・栄養調査」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/h30-houkoku_00001.html

高血圧の定義

まず、血圧とは、血液が心臓から送り出され、全身をめぐるときに、血管の壁を押す圧力のことをいいます。

この血圧には、「上の血圧(収縮期血圧)」と「下の血圧(拡張期血圧)」があります。上の血圧(収縮期血圧)は、心臓が収縮して血管に最も強い圧力がかかるときの数値のことです。一方、下の血圧(拡張期血圧)は、心臓が拡張しているときに血管にかかる圧力のことです。

高血圧の基準値は?

 

高血圧と判断する基準はどのくらいの血圧値なのでしょうか。日本高血圧学会が示す「高血圧治療ガイドライン2019」によると、
・上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上
または、
・下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上
または、両方の数値である場合に高血圧と診断されます。

血圧は、激しい運動をしたり、温度差のあるところに行ったり、お酒を飲んだり緊張したりすることで一時的に上がりますが、このような場合での血圧の上昇は、高血圧とはいいません。高血圧は、安静な状態で血圧測定をした際に、上記の血圧値以上の状態のことを指します。

ちなみに、日本高血圧学会では、上の血圧が120mmHg未満、下の血圧が80mmHgを、正常血圧(病院で測定する診察室血圧の場合)としています。

どうして血圧が上昇するのか?

高血圧とは

 次に、血圧上昇につながる主な理由を4つ、ご紹介していきます。

全身の血液量が増える

人間の体は、血液を心臓から全身に循環させています。通常の血液量は一定ですが、塩分を取り過ぎたり、腎臓の不調などにより、血液中の水分が増えてしまうことがあります。血液中の水分が増えるということは、血液量が増えることです。そうなると、血管に負担がかかり血圧上昇につながります。

心臓からの血管へ送られる血液量が多くなる

心臓の収縮で送り出される血液量が増えることでも、血圧が上昇します。多くの血液が一気に流れるので、血圧が上がってしまうのです。この原因となるのは、塩分の過剰摂取や激しい運動などです。

血液が流れるときの抵抗

血管が狭くなったり、収縮したりして血液の流れが滞る(末梢血管抵抗)ことがあります。血管の中で抵抗が起こり、血液がうまく流れないと、血管の壁を押す圧力(血圧)が上がってしまいます。

血液の粘り気が強い

血液の状態によっても血圧が上昇します。さらさらの血液は血管内をスムーズに流れますが、ドロドロとした血液だとうまく流れづらいため、血圧を上げて血液を流そうとします。それが、高血圧の一因となります。

高血圧になる原因は?

高血圧になる理由として、どのようなことが考えられるのでしょうか。その原因について解説していきます。

高血圧の原因には、「本態性高血圧」と「二次性高血圧」があります。本態性高血圧は、生活習慣や遺伝などさまざまなことが要因として考えられるもののことです。ほとんどの高血圧の原因は、この本態性高血圧です。一方の「二次性高血圧」は、病気など特定の原因によるものを指します。

ここではまず、「本態性高血圧」の原因を説明します。

高血圧になる原因1:塩分過多の食事

塩分が多い食事をとると、血中のナトリウム量が増えます。ナトリウムが増えると、体は血液中のバランスを調整するために水分を多く取り込み、全身の血液量が増えてしまいます。その結果、血管に負担がかかって血圧が上がってしまうのです。

高血圧になる原因2:肥満

肥満の人には、内臓脂肪がたっぷりとついています。この内臓脂肪が、血管を硬くしたり、血管の弾力性を奪ってしまうため、血圧が上がってしまいます。また、内臓脂肪が増えると、血液中に糖分が増えて血糖値も高くなります。血糖値が高くなると、血圧も一緒に高くなってしまうのです。
肥満は高血圧の他にも、糖尿病や脂質異常症、肝障害、腎障害などを引き起こす原因にもなるので注意が必要です。

高血圧になる原因3:運動不足

あまり運動をしない生活をしていると、血行が悪くなります。血行不良になると、体は血液量を増やして血液を全身に届けようとしますが、このとき血管に圧がかかってしまい、高血圧を起こすのです。

高血圧になる原因4: 更年期

高血圧は、更年期を迎えた女性に特に起こりやすくなります。その理由は、血管を広げる作用のある女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が減ってしまうためです。エストロゲンの分泌が減ると血管が狭くなるため、心臓から血液を全身にめぐらせるために、高い圧力をかけて血液を送り出さなければならなくなります。そのため更年期以降の女性は高血圧が起こりやすくなってしまうのです。

高血圧になる原因5:アルコールの飲み過ぎ

アルコールの飲み過ぎによっても血圧が上昇します。適量を超えてアルコールを多量に摂取すると、興奮状態になってしまうことが血圧が上がる原因です。

高血圧になる原因6:ストレスが多い生活

精神的なストレスは、自律神経に影響をもたらします。自律神経には、血圧をコントロールする働きがあり、それが乱れると血圧が上がってしまうのです。また、冬場の寒さや体の冷え、睡眠不足などによる肉体的なストレスも、血圧を上昇させてしまいます。

高血圧になる原因7:喫煙

タバコに含まれるニコチンも血圧を上げる原因の一つ。ニコチンにより血管が収縮され、血圧が上がり、脈拍も増えます。また、喫煙により血管に負担がかかり続けると、動脈硬化の原因にも。

 

病気が原因で起きる高血圧(二次性高血圧)

ある特定の病気により高血圧になることを「二次性高血圧」といいます。その原因となる主な病気2つについて解説します。

腎血管性高血圧

「腎血管性高血圧」は、腎臓につながっている血管が狭くなり、全身に血がめぐりにくくなってしまうため、血液の循環を高めようと高血圧が起きます。この高血圧は、若い女性や中高年に起きやすいとされています。若い人に起きると、大動脈や大きめの動脈に炎症が起きて血管が細くなったり、閉塞したりする「大動脈炎症候群(高安動脈炎)」を併発することもあります。

睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)

睡眠中に呼吸が停止したり浅くなったりする睡眠時無呼吸症候群が原因で、高血圧のリスクが高まるといわれています。その理由は、無呼吸状態から呼吸を再開するときに脳が起きた状態になり、睡眠が中断され、交感神経が亢進(こうしん)することで血圧が上がるからです。

 

高血圧が引き起こす疾患


 
高血圧は、ほとんどの場合、自覚症状がないのが特徴です。それだけに、放っておくとさまざまな病気を引き起こすことがあります。心臓血管系の病気になりやすいとも、死亡率が高くなるともいわれています。どんな疾患があるのかご紹介していきましょう。

動脈硬化

高血圧になると、血管に圧がかかり続けるため、血管が傷つきやすくなります。人の体にはそれを修復する機能が備わっているのですが、修復すると血管の壁が厚くなってしまい、柔軟性も失い、血管が細く、固くなるのです。この状態が「動脈硬化」で、高血圧の人がかかりやすい疾患といえます。

脳出血

高血圧による動脈硬化が体のさまざまな部位で起こり、それによりさらなる合併症が起こります。例えば脳の血管で動脈硬化が起こると、脳卒中や脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などを招くこともあります。

心疾患

高血圧によって引き起こされる疾患に、心筋梗塞や狭心症、心不全などの心疾患もあります。心筋梗塞は高血圧により、冠動脈に動脈硬化が起きることで発生します。また、狭心症は冠動脈の内側にコレステロールがたまることで血管が狭くなり、心臓に十分な酸素が供給できなくなる状態です。いずれも命にかかわる病気といえます。

高血圧の検査・診断

さて、では高血圧かどうかを、どう調べるのでしょうか。
高血圧の診断は、血圧の測定によって行われます。血圧の測定には、病院などで測る「診察室血圧」と、家庭で測る「家庭血圧」があります。

診察室血圧は、数回の測定結果をもとに判断し、上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上、もしくはいずれか一方で高血圧となります。

家庭血圧は、家庭用血圧計(指用、手首用、上腕用)を使って測定します。朝(薬を服用している人は服用前)と、できれば就寝前の2回測り、5〜7日間(あるいはそれ以上の期間)の平均値をもとに判断します。日本臨床内科医会によると、家庭血圧の場合は上の血圧(収縮期血圧)は135mmHg、下の血圧(拡張期血圧)は85mmHgを目安とします。

高血圧の治療・対策

高血圧はほとんど自覚症状がありません。ですので、日頃からの生活習慣に気を付けることが重要です。ここでは、高血圧にならないための対策や薬物療法についてご紹介します。

生活習慣の是正

高血圧は、生活習慣を是正することである程度防ぐことができます。その生活習慣には、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 減塩の食事をとる
  • 適度に運動する、体を動かす
  • 肥満を予防する
  • 節酒、禁煙する
  • ストレスをためない

また、自分で血圧を測る習慣をつけることも大切です。家庭用血圧計で朝と夜の2回、座った状態で測定し、血圧手帳などに記録しておきましょう。

薬物療法

病院では、高血圧には、降圧薬と呼ばれる血圧を下げる薬が処方されます。主な降圧薬は次の通りです。

  • カルシウム拮抗薬

血管を広げ、血圧を下げる薬です。

  • アンジオテンシン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬

血管を縮めさせる体内の物質をさえぎって、血圧を下げます。

  • 利尿剤

排尿を促し、食塩と水分を血管から抜いて血圧を下げます。

  • β遮断薬

心臓の過剰な働きを抑えて、血圧を下げる薬です。

これらの薬は、単独、または組み合わせて使われます。
サイレントキラーと呼ばれる高血圧。高血圧は症状がほとんどないため、自分ではなかなか気付くことができません。その上、怖い病気につながることもある生活習慣病です。普段から生活習慣を正し、毎日血圧を測る習慣をつけて、高血圧対策を行いましょう。

※記事中の情報は2021年1月時点ものです。
 

■教えてくれたのは…
みなと元町内科クリニック
院長 笠木伸平さん

かさぎ・しんぺい 神戸大学医学部卒業後、内科医師、膠原病リウマチ専門医として病院勤務。米国国立衛生研究所の特別研究員を経て神戸大学医学部付属病院検査部の副部長。2018年5月に兵庫県神戸市に「みなと元町内科クリニック」を開業。未病の段階で病気を予防し、薬に頼らない世界をつくることを目指し、日々患者さんを診ている。
 


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