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- 気持ちに正直に生きた、社会運動家・平塚らいてうさん
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、随筆家「平塚らいてう」さんです。猛々しく奔放な一面ばかりが語られるけれど、実は違った!平塚さんの素顔とは……?
好きな先輩「平塚らいてう(ひらつか・らいてう)」さん
1886-1971年 社会運動家
東京生まれ。日本女子大卒業後、25歳で「青鞜」を創刊。画家と事実婚して2児を育て、国家による母性保護を訴えた。第一次世界大戦後、市川房枝らと新婦人協会を結成。第二次大戦後は反戦・平和運動に尽力した。
意識の革命の側面に見た上品で風雅なさま
女性解放運動。「元始、女性は太陽であった。真正の人であった」ということばとともに文芸誌「青鞜(せいとう)」を創刊。妻子ある作家との心中未遂事件。年下の画家との事実婚。
平塚らいてうという女の名を聞いて浮かぶこんなような事ごとは、わたしのなかに誤解を生じさせました。猛々しく奔放な人物、スキャンダラスな女(ひと)という……。
それに「らいてうって何?らいちょうと読むなら、そう書きゃいいのに」とも思っていましたっけ(本名は平塚明<はる>)。
ところが。ドキュメンタリー映画「元始、女性は太陽であった——平塚らいてうの生涯」(2001年)を観た日、それはすっかり変わりました。
おもしろかったのは、羽田澄子(はねだ・すみこ)監督自身がわたしと同じ誤解を前提に、映画を撮りはじめたという点です。
「だが、映画を撮っているうちに、ひとりの時間を愛し、禅を組み、生き方を自問しつづけた、静かな静かな女性の姿が浮かび上がってきた」(毎日新聞)
映画のなかに、こころをつかまれる場面がありました。お茶を一杯とっくりと飲んで、そうして線香を一本立てて焚き、静かに仕事に入ってゆく、らいてうの姿です。
このように雅やかなひとだったからこそ取り組まずにはいられなかった意識の革命の側面を思わずにはいられませんでした。
意識改革のさなか、母となったらいてうは、家庭生活にも大きな生きがいを見出します。このときの人間らしい流れには、目を見張らされます。自身の純粋な思いに正直で、なんと真面目で自然なひとだろうと、感心するのです。
何が起こっても落ち着いて…正直に…
雑誌「青鞜」の創刊は1911(明治44)年。これまた、ひとつの流れのなかで、15(大正4)年、編集権が伊藤野枝(いとう・のえ)に移ります。
らいてうとは対照的とも云(い)える悲劇の闘士・伊藤野枝についても、いつかこの欄で書けたなら、と夢見ています。ふたりのちがいが何であったにせよ、このひとたちの活動と思いを受けとめたいと希(ねが)ってのことです。
この15年あまり、わたしは平塚らいてうの真似をして、机上で一本の線香を焚くことから仕事をはじめてきました。何が起こっても落ちついていようという覚悟、自分のなかに何が芽生えようと正直でいようという決心を線香の香りとともにたしかめています。
「元始、女性は太陽であった——平塚らいてうの生涯」(2001年/企画・平塚らいてうの記録映画を作る会/製作・青木生子/演出・羽田澄子/岩波ホール配給)
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2018年3月号を再編集し、掲載しています。
>>「平塚らいてう」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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※ハルメク365では、雑誌「ハルメク」の電子版アーカイブを12か月分見ることができます。詳しくは電子版ハルメクのサイトをご確認ください。
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