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- 小泉今日子#1 50代からを私らしくよりよく生きる
16歳で歌手デビューし、俳優としても活躍してきた小泉今日子さん。50歳で会社を設立して以来、プロデューサーとしても奮闘。2023年7月、構想10年以上となる舞台「ピエタ」がついに上演されます。舞台にかける思い、そして50歳からの生き方とは?
50歳で動く、そう5年前から言い続けて
小泉今日子さんが自分の会社を立ち上げたのは2015年、50歳のときでした。
「『50歳になったら動く』って、45歳くらいからインタビューでよく言っていたんですね。普通に考えると、60歳とか65歳が定年という節目だったりしますが、新しいことを始めて少なくとも10年、アクティブに攻めの姿勢で生きるには、もっと体が元気なうちでないと思うようにできないかもしれないなって。
人に言っておかないと怠けるだろうから、『50歳になったら動く』とわざと宣言して、自分で自分を追い込んでいきました。ここで有言実行しないとカッコ悪いことになるじゃん、と(笑)」
こうして誕生したのが株式会社「明後日(あさって)」。半世紀を生きて「残された時間の中で何ができるのか?」を考えた小泉さんは、舞台、映像、音楽などのプロデュースに取り組みます。
実は会社を設立した当初から、ずっと切望していたのが、大島真寿美さんの小説『ピエタ』(ポプラ社刊)の舞台化でした。
わぁーっと泣きながら読んだ「よりよく生きよ」の言葉
小泉さんが『ピエタ』と出合ったのは、会社を立ち上げる4年前でした。
「主人公が45歳で、当時の私と同世代だったんですね。彼女をはじめ、出自や立場の違う女性たちが、それぞれに心の傷や不安を抱えていて、だけど誇りを忘れずに生きていく姿に強く心を惹かれました」
物語の舞台は、18世紀のヴェネツィアに実在した孤児院ピエタ。そこでは音楽教育が盛んで、作曲家のヴィヴァルディが少女たちを指導していました。45年前に孤児院に捨てられた主人公、エミーリアも教え子の一人。
ヴィヴァルディの死後、エミーリアは子どもの頃に音楽教育を一緒に受けた貴族のヴェロニカから「昔、ヴィヴァルディ先生の楽譜の裏に詩を書いたことがある。すごく大事なことを書いた気がするから、その楽譜を探してほしい」と頼まれます。
「楽譜を探す過程で主人公は大きな出会いと別れを経験します。そして最後に見つけた詩が、本当にささやかで、でも人生にとても大切なことで……。『むすめたち、よりよく生きよ。よりよく生きよ』という一節を、わぁーって泣きながら読みました。
年を重ねて不安になったとき、少女だった頃の思い出だとか、出合った音楽、人にかけられた言葉……そういう過去の記憶、過去の自分が支えになったり、助けになったりすることって確かにあると思ったんですね」
「変わり者」と言われても、自分を見失わなかった理由
小泉さんは自身を振り返って、「デビューする前の15年間に家族の中で形成された私がいて、その過去の自分にずっと守られてきた感覚がある」と話します。
「私は5人家族で3姉妹の末っ子でした。両親とも、人として道を外れなければ好きなことをしなさいという感じで、勉強しろと言われたことはほぼなかったですね。その代わり母から、近所の子が腕を骨折しちゃったりすると『毎朝、迎えに行ってカバンを持ってあげなさい』とか、転校生が来ると『学校に行きづらいだろうから、一緒に連れていってあげなさい』とか、そういうことばかり言われていました」
今思えば、母に言われたことを訳もわからずやっているうちに、自然と大事なことが身に付いていった気がすると話します。
「両親も姉たちも、自分のことは自分でジャッジする強さがあって、私もそういうふうに育てられたんですね。だからデビュー後も芸能界のルールに疑問を感じたりして、自分が正しいと思うことを貫くところがあって、『変わり者』って言われていました。でも、そのおかげで自分を見失わないでいられたのかもしれない。きっとこれから先もっと年を取っても、過去の自分はいつも横にいて、私を支えてくれる気がするんです」
構想から10年以上、今がベストなタイミング
さて、『ピエタ』に心を動かされ、読んでいる最中から舞台化したいと思ったという小泉さん。自分の会社を立ち上げてすぐ動き出しますが……。
「一緒にやろうとしていた脚本家の方が残念なことにご病気で亡くなったり、2020年にようやく上演が決まったらコロナで断念せざるを得なくなったり……何度も何度も頓挫しました。でも意外と悲観的な気持ちにはならなくて、いつかベストなタイミングがくるだろうなと思っていたんです」
そしてついに今年。2023年の夏、満を持して舞台が実現することに。小泉さんはプロデューサーとして指揮を執ると同時に、主人公エミーリアを演じます。
「構想から10年以上温めてきて、今やることがベストなんだと思います。例えば、『ヴェネツィアの貴族が政治をしなくなり、私利私欲でお金を稼ぐ商人のようになってしまった。そこから腐敗が始まっているのよ』というようなセリフがあって、それこそ今に通じるなと思ったり。なんだか作品の方がこのタイミングを選んだ気がしています」
台本を作るにあたっては、長い小説のどこを掘り下げ、どこを削るか、脚本家と時間をかけて話し合い、実際にセリフを声に出して、音にしたときの感覚も細かく確認したそう。
「セリフだけでなく、小説の中にたくさん登場する美しい音楽も、舞台では実際に聴かせることができます。見る人に、ピエタの世界を立体的に伝えたいですね」
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次回は、小泉今日子さんの女性としての生き方、そしてピエタにも通じる経験をしたという、昨年冬、自宅で母を看取った経験について語っていただきます。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部) 撮影=中西裕人 ヘアメイク=石田あゆみ スタイリング=藤谷のりこ 構成=長倉志乃(ハルメク365編集部)
<Information>舞台「ピエタ」
Story
18世紀、爛熟期を迎えた水の都ヴェネツィア。「四季」の作曲家ヴィヴァルディは、孤児を養育するピエタ慈善院で〈合奏・合唱の娘たち〉を指導していた。時は経ち、かつての教え子エミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。そして一枚の楽譜の謎に、ヴィヴァルディに縁のある女性たちが導かれていく――。ピエタで育ちピエタで働くエミーリア、貴族の娘ヴェロニカ、高級娼婦のクラウディア……清廉で高潔な魂を持った女性たちの、身分や立場を超えた交流と絆を描く。運命に弄ばれながらも、ささやかな幸せを探し続ける女性たちの物語。
原作:大島真寿美『ピエタ』(ポプラ社)
脚本・演出:ペヤンヌマキ
音楽監督:向島ゆり子
プロデューサー:小泉今日子
出演:小泉今日子、石田ひかり、峯村リエ/広岡由里子、伊勢志摩、橋本朗子、高野ゆらこ/向島ゆり子、会田桃子、江藤直子
7月27日〜8月6日の東京公演を皮切りに、愛知、富山、岐阜公演もあり。
「公演およびチケット等の詳細はこちらから」
小泉今日子さんの不定期連載スタート!相談募集中です
ハルメク365では、小泉今日子さんの不定期連載「ときどき、こんにちは」を8月よりスタートします。50代からの気になるあんなこと、こんなことを深堀りします。その中の一つが「人生相談コーナー」。連載スタートにあたり、小泉さんへの相談内容を募集します。
下記応募フォームに、50代からの生き方、人間関係や仕事のこと、お金や介護、恋愛、体調や美容の悩みなど、相談したい内容を書いてお送りください。
小泉今日子さんのプロフィール
1966年、神奈川県生まれ。1982年に芸能界デビュー。2001年の「風花」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を、「陰陽師」で同賞優秀助演女優賞を受賞。俳優として映画や舞台に多数出演し歌手、執筆家としても活躍。2015年より株式会社明後日を立ち上げ、舞台・映像・音楽・出版など、ジャンルを問わず様々なエンターテイメント作品をプロデュース。
衣装:ロングスリーブニット1万5400円、インナーのタンクトップ2万2000円、パンツ3万6300円/ともに RHODOLIRION(ネペンテス ウーマン トウキョウ 03-5962-7721) ピアス 右耳4万5100円、左耳1万7600円/ともに e.m.(イー・エム アオヤマ 03-6712-6797)
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仕事に関して 今現在異業種に挑戦中です。 実は悩んでいて、経験のある介護職の夢を見たり、街を歩いていたりすると(交通機関に乗ったりしてる時も)高齢者に視線が行ったり、また、夢を見る内容も、昔の思い出(何年か勤めていた時の)が頭に残っている感があります。これまで、知人にも相談しましたが、介護職は教育とかもいい加減だし、経験あるのは、いいけど、上手くいかないんじゃない?と言われました。(そう言われると、確かにそうかもとか不安になってしまいます …。)でも、やるのは、決めるのは自分自身だと思うので、思い切って進めようと密かに考えてます。今の異業種の会社もそこまで悪い会社ではありませんが、先輩社員達の愚痴ではありませんが、聞いていていい気持ちにはなりません。あと給与に関しても、案外低く(先輩達も凄く愚痴はその事が大半)幸先不安です。ただ上司やリーダーさん達は悪い人ではなく、関係もまずまずかなってとこです。自分としては、自分の人生、やっておけば良かったと後悔、未練は残したくはありません。なので、この度、思い切ってご相談しました。ある意味、人生の分岐点だと思うので、ズバッとどうしたいか決めたいです。アドバイス何卒宜しくお願い申し上げます。 ※OKWAVEより補足:「ハルメク365( 生きるヒント)」についての質問です。
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