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- 深い悲しみと生きた女優オードリー・ヘップバーン
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、女優の「オードリー・ヘップバーン」さん。華やかな女優としての生き方と、ユニセフでの活動を続けた彼女の悲しい魂のつぶやきとは……。
好きな先輩「オードリー・ヘップバーン」さん
1929-1993年 女優
ベルギー生まれ。両親が離婚し、10歳で母とオランダへ。51年ブロードウェイ公演「ジジ」で主演。これを見たウィリアム・ワイラーにより「ローマの休日」の主役に抜擢される。主演作に「麗しのサブリナ」「昼下りの情事」「シャレード」など。
深い悲しみが含まれる魂のつぶやき
久しぶりに映画「パリの恋人」を観ました。ええ、オードリー・ヘップバーンがフレッド・アステアと共演した映画です。
のびやかに踊るオードリーの姿は、「そうだ、するべきことをしよう!」という気持ちにさせてくれます。
第二次世界大戦中、少女時代を過ごしたオランダのアルンヘムの街にドイツ軍が侵攻してきた日の恐怖。食糧が手に入らない、平和と自由のない日々の記憶。ある日家を出て行った父がこころに残した未解決の問題。
これらは少女が女優の道を選び、後年ユニセフの活動をするに至る、動機となっているように思われます。
あなたは、オードリー・ヘップバーンのどの映画作品がお気に入りでしょうか。近年どの作品を観ても、彼女の魂の呟き(つぶやき)が聞こえてくるような気がしてなりません。
魂の呟き、そこには深い悲しみが含まれている……。
素晴らしい映画作品を残し、いくつかの厳しいめぐりあわせを乗り越えながらも佳(よ)き人生を送ったオードリーの悲しみとは、何か。
自分のするべきことをしよう!
1988年ユニセフの親善大使となり、エチオピアに旅立ったとき、根源的な悲しみと対面します。
世界中の、とくにアフリカの荒廃した地域を訪れ、死にかけている子どもたち、魂を閉ざしてしまった子どもたち、孤独に苦しむ子どもたちに、オードリーはそれはそれはたくさん出会いました。
出会って、苦悩しながら、自らの生命の尽きるまで活動をつづけたのです。
そんな子どもたちのために何もしないでいるわたしも、オードリーを悲しませていたのだといまごろになって、気づかされています。
長男ショーン・ヘップバーン・フェラー(彼女にはふたりの息子があります)の著書『AUDREY HEPBURN 母、オードリーのこと』(竹書房刊)にこんなくだりがあります。
最後に庭を散歩していたときのこと。庭師がやってきて、こう云ったそうです。
「『奥様、よくおなりになったら枝を刈りこんだり花を植えたりするのを手伝ってくださいまし』。母はにっこり笑って答えました。『お手伝いするわ……でも、これまでとはちがうやり方でね』」
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2019年1月号を再編集し、掲載しています。
>>「オードリー・ヘップバーン」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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