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- 生きることを愛した女優、マリリン・モンロー
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、女優「マリリン・モンロー」さんです。山本さんのお父様が敬愛し、自身も身近に感じていた女優から感じた「生きる」とは……。
好きな先輩「マリリン・モンロー」さん
1926-1962年 女優
米カリフォルニア生まれ。幼少期は里親や孤児院を転々とする。モデルを経て47年に映画デビュー。「ナイアガラ」「紳士は金髪がお好き」などで人気に。62年、自宅で睡眠薬の多量摂取により死亡。享年36。
父が敬愛した「マリリン・モンロー」という女優
マリリン・モンローをわたしは叔母のように思っています……。
こんなことを書いたら笑われてしまいそうですが、ほんとうです。
2014年3月、父が身罷(みまか)ったあと、書斎に入ると、戸棚のなかでマリリン・モンローが微笑んでいました。
「父がそちらにまいりました」
こんな報告をしないではいられないほど、父はマリリン・モンローを愛していました。「ひととの関係において、もっとも大事なのは尊敬の念である」というのが父の口癖でした。
マリリン・モンローに対しても、敬愛(この場合、尊敬よりこのことばがよりふさわしいかと思います)の情を捧げていたのです。
うつくしくセクシーで、ひとを惹きつけずにはおかない存在であり、そのイメージには「ちょっと足りないブロンド女」がつき纏うことも、子どもごころに知っていました。
父親の顔を知らず、母親も人生にいろいろな問題を抱えているという環境に生まれたノーマ・ジーンは、生後12日で里子に出され、その後孤児院生活も経験しています。
やがて少女はマリリン・モンローとなり、ハリウッドスターの座にのぼりつめます。
大女優となり、栄光と苦悩をごちゃ混ぜに経験したのち、いまなお疑惑のささやかれる孤独な死によって36年の人生の幕を……。
というはなしも、彼(か)のひとの評判、結婚や離婚、死の真相について、父は一切語りませんでした。淡々と写真集を眺めたり、あるときは記念金貨なるものを購入して周囲を驚かせたり。母も父の傍らでマリリン・モンローを受け容れていましたね。
こういうわけで、だんだんわたしにとっても大切なひとになってゆき、とうとう叔母的存在になったのでした。
「ひとは見えているだけの存在ではない」ということ
マリリン・モンローはわたしにとって、〈ひとは見えているだけの存在ではない〉ことの象徴です。向学心に燃えて大学の授業を受けることもあったという、読書を愛してやまなかったという、進歩したい、成長したいとの希(ねが)いを宿したあのひと。
女優としての成功と家庭味を求め、犬や子どもを可愛がり、いつまでも月を眺め、友人と語り合うことの好きなあのひと。マリリン・モンローは生きることを愛するひとでした。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2018年1月号を再編集し、掲載しています。
>>「マリリン・モンロー」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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