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- 【NHKドラマ】老後の不安を切なく面白く描く
現代の問題を浮き彫りにすることが多いNHKの土曜ドラマ「一橋桐子の犯罪日記」(午後10:00~)は、人生の旅の面白さを味わえます。
あらすじ
家族もなし、身寄りもなし、お金もなし。
一橋桐子(松坂慶子)は、3年間同居した親友の知子(トモ・由紀さおり)を無くし、失意の底に。ニュースの中で「刑務所に入りたくて万引きした」と語る老人を見て、塀の中なら生きていけるかもと思いつき、娑婆(シャバ)に別れを告げることを決意する。
ムショ活は身につまされる話
桐子同様、私も安定したものを一つも持ってないので、本当に、身につまされる話です。刑務所は栄養バランスの良い食事を取れることは知っていましたが、弱った時は介護も受けられるとは初耳です。
介護人材は慢性的な人手不足。厚生労働省は、2025年には要介護者は600万人を超え、介護職が32万人不足すると予測していますので、誰が介護難民になってもおかしくない時代です。
刑務所の方が娑婆(シャバ)より良いという話に笑えない、日本の未来は暗い……と不安を抱えている人は多いのではないでしょうか。
桐子はパチンコ店で清掃のパートをこなしていますが、トモと同居した家の家賃を払えず、ボロアパートに転居せざる得なくなります。ついに、ムショに詳しいというパートリーダーの久遠(岩田剛典)に犯罪の手口を教えてもらい、実践。
しかし犯罪のターゲットとして定めた人は、個性的で、挫折や絶望を経験し、味わい深い人ばかり。
隠れヤミ金業者の寺田(宇崎竜童)も人が良く純粋で、同じような匂いのする桐子に共感してしまいます。スーパーで万引きした際に出会った、孤独を抱える高校生、雪菜(長澤 樹)も桐子を慕い友人関係に。
孤独だった桐子がムショ活、いわば人生を動かしたことで、図らずも桐子を応援する人が増えていきます。
細かい芸が巧み、キャラも濃い演者たち
配役も良いので見応えがあります。
俳句会仲間の三笠(草刈正雄)の婚約者、上品な薫子さんと怪しげなセミナー講師小池ゆかりは同一人物。2つの顔を持つ女性を、木村多江が声のトーンやら表情で演じ分け、どちらも魅力的。
また、セリフも登場時間も少ないのに、強い印象を残す、役者さんが多く登場します。
俳句会の講師に片桐はいり、アパートの住人に竹原芳子、お見合バスツアーの司会にエド・はるみなど。エド・はるみの司会ぶりは、さすが芸人さん!
シャバも悪くない
桐子がこうもムショに向かってがんばれるのは、親友トモとの約束があるから。その一途さが、人を動かします。また都度、その時の心情を一句にするのも面白い。
危なっかしいシーンもありますが、なぜか安心して見られます。この感じは何かというと、怖いとわかっていても、乗りたくなる遊園地のアトラクションを回っている感じ。
すでに4回目(10月29日)が終了してしまいましたが(全5話/最終回は11月5日放送)、日本の暗い未来をも吹き飛ばす、アトラクションを楽しめると思います。
※最近放送したエピソードはNHKオンライン、NHKプラスで視聴できます。
■作品詳細
- NHKドラマ「一橋桐子の犯罪日記」
- 【原作】 原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』
- 【脚本】 ふじきみつ彦
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