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- 大都市なのにおおらか。シドニーの日常を感じた2日間
2016年、C型肝炎を克服してわずか21日後に脳出血になったharumatiさん。リハビリを重ね、2019年12月から約2か月間のクルーズ旅行に挑戦してきました。今回は、オーストラリア・シドニーの市街地を観光した2日間をお届けします。
ニュージーランドへの夢は破れたけれど…禍転じて福?
振り返ってみれば、奇跡のような出来事だったなとつくづく思います。
もし、出発が、12月22日より10日遅かったとしたら……?
ニュージーランドへ行かないと発表された時、ニュージーランド港湾当局の検査が何日間掛かるとしても絶対行きたい……というムードが船内にあふれていました。もしその道が選択されていたとしたら……?
もしかしたら、第103回ピースボートは、コロナウィルス騒ぎの影響を受けずに、予定通り帰国できた最後のクルーズ船だったのかも知れないと、その幸運さをかみしめています。と同時にニュージーランドへの夢は諦めきれず、不自由でも楽しめるように、ニュージーランドの研究を進め、体力をつけ、コロナ禍が収束する頃には、飛行機とレンタ―カーを使って行けるまでになっていたいなと、早くも夢を膨らませている私です。
期待通りのシドニー入港
船旅ならではの醍醐味が味わえる場所として、ニュージーランドのミルフォード・サウンドに次いで楽しみにしていたのが、世界遺産オペラハウスとハーバーブリッジを見ながら入港するシドニー。
2020年1月20日昼前、見えてきましたシドニー港、そしてオーストラリア最大の都市らしいビル群。海側から見る世界遺産オペラハウスとハーバーブリッジを見逃すまいと、多くの乗客が甲板から身を乗り出すようにして、カメラを構えます。
オペラハウスが少しずつ見えてきました。船が近づくにつれ、写真で見た通りのオペラハウスが、その全容を現しました。カメラのシャッターを何度も押しながら見とれていると、続いて姿を現したのはハーバーブリッジ。周のビル群や古い倉庫のような石造りの建物も含めて、期待通りの景色です。
ようやく着岸できたのは、昼過ぎ。シドニー中心部まで出かけるのは、翌日の楽しみに取っておいて、その日は着岸地から歩けるだけ歩いてみようと、アパートが建ち並ぶ近くの住宅街まで歩きました。ちょうど、仕事を終え、自転車で家路をたどる人々が増え始める頃でした。帰宅すると早速ジョギングを始める人、広い公園で犬を遊ばせる人等、あまり日本では見掛けない光景があちこちで見られます。
公園で、2匹の犬を遊ばせている若い女性がいたので、「犬を2匹飼っているんですか」と声を掛けてみると、「こちらの大きいのが私の犬、小さい方は友達の犬よ」とのこと。「それじゃあ、犬も友達同士なんですね」「ええ、そのとおり」と、短い会話を交わしました。
現地の人々の生活を垣間見るのが結構好きなのです。
翌日の市街地観光に備えて、早めに船に戻り、のんびりと夕陽を眺め、その日はすぐベッドに入りました。
最大の都市といえども、おおらかで、優しさいっぱい
シドニー2日目。朝から歩く気満々。2日目なので何の手続きもなしにすぐ街に出られます。港から市街地までは、乗り合いのタクシーです(6人乗りバン)。旅も後半になると、誰からともなく声を掛け合って、同じ方面へ行く人同士乗り合わせます。私は、そんなに歩ける自信はないので、どうしても行きたい所にまず行こうと、オペラハウスまでタクシーで行きました。
入り口はどこだろうとうろうろしているうちに、どんどん建物の中に入ってしまいます。全くセキュリティがない上に、観劇などをしない限り、どこへでも自由に無料で入ることができるのです。ヨーロッパでもアメリカでも、辟易するほどのセキュリティを経験してきたので、このおおらかさには本当にびっくりです。
まずは失礼してトイレへ。美しい!外観の曲線に合わせて、廊下やトイレの壁も全て曲線。ゆったりとしたソファが置かれたロビーでは、大勢の人がくつろいでいます。壁面には、この建物が出来上がっていく様子の映像が、静かに流れています。横のカウンターには、水が入ったピッチャーと紙コップが置かれ、自由に飲めるようになっています。ウォタークーラーではなく、ガラスのピッチャーという非効率的なものにあえてこだわっているところがとても気に入りました。
そこへ突然ヒーローの登場。子どもたちに声を掛けていきます。世界遺産でありながら、ここが市民のくつろぎの場として機能していることに感銘を受けました。
シドニーらしさを感じながら歩く
オペラハウス周辺の新しいショップ、映画館、テラスのあるカフェなどを見ながら、電車の駅もあるサーキュラーキーまで歩きました。大道芸なども行われていて、やはり親子連れ(2人乗りのベビーカーともう1人)が多く、泣いている子ども叱っている親という、日本では定番ともいえる構図は、オーストラリアにいる間中見ませんでした。
ストリートパフォーマーを通しても、お国柄を感じました。ヨーロッパでは、いかにも演劇の訓練といった感じで、子どもが声を掛けても触っても微動だにしないというパフォーマーを多く見かけました。ニューヨークでは、子どもたちが触ると手を振り上げて怒り出す姿を見ました。そしてここでは……子どもたちが近づくと、手招きして呼び寄せ、何と! アメを手渡すのです。
さて、この辺りで私の歩行も限界。幸い至る所にベンチがあるので、座って休みながら次に行きたかったシドニー最古の旧市街地「ロックス」まで歩けるかどうか考えました。1788年初めて英国船が上陸したシドニー発祥の地「ロックス」、1843年から24年の歳月を掛けて、囚人たちがノミとハンマーだけで岩を砕き他の地域との行き来ができるようにしたという「アーガイルカット」――がんばって歩くことにしました。
がんばった褒美に、ランチは有名なパンケーキ専門店へ。歴史を感じさせる建物の中で、またもや多くて、甘いパンケーキをゆっくりと楽しみながら休憩し、最後に「アーガイルカット」を見て、ヘロヘロになりながらタクシーを探して帰船しました。
この日の歩行距離は、17930歩。船室の窓から、ネオンがつき始めたオペラハウスを見ながら、1泊2日停泊したシドニーとの別れを惜しみつつ、船はタスマニアに向かって出港しました。
次回は、南太平洋の島々での珍しい出来事と、そこで出会ったチャーミングな人々のことを書きたいと思います。
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