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- 落語自由自在⑨~桂文珍大東京独演会(上)~
落語が大好きなさいとうさんの落語体験記をお届けします。古き良き日本文化である落語を聴いて楽しく笑うことで、身も心も元気になりますよ。今回は桂文珍師匠の独演会のお話。今回は前編ですよ。
毎年楽しみな「桂文珍大東京独演会」
今年も春の風物詩「桂文珍大東京独演会」に行ってきました。この会は3日間昼夜6公演ですが、今回はあらかじめゲストの発表がありましたので、大好きな三遊亭兼好師匠が出られるこの日を選びました。
「ネタのオートクチュール・リクエスト寄席」ですので、入場早々演目61席の中から、文珍師匠に本日演じていただきたい演目を3席投票し、開演を待ちます。国立劇場小ホールいっぱいのお客様の投票で、さてどんなネタが選ばれるやら期待が高まります。
さっそく万雷の拍手で文珍師匠の登場です。なんと浴衣姿に、会場から「えっ?浴衣?」の声が起こります。
「もっと暖かいと思っていましたが、寒くて驚きました。浴衣は失敗でした」と文珍師匠。
「早速、リクエスト結果の発表です。アシスタントはおなじみの、カルロス・ゴーンさんです」で、お弟子さんの楽珍さん登場。
大阪ではゴーンさんに似ていると評判だそうですが、ご本人は嫌がっていました。そりゃそうですね。
投票結果発表
第1位 「地獄八景亡者戯」
第2位 「憧れの養老院」
第3位 「老婆の休日」
毎年来ている私にとっては納得のラインナップです。というかいつもベスト3は、ほぼ同じです。
文珍師匠が「老婆になって養老院に入り、地獄へ行くんですか?」と笑わせてから「このどれか1席と、他におすすめの演目をご紹介しましょう」と追加で3席、別のメニューが出てきます。
まずは追加で出てきた3席の中から拍手で「スマホでイタコ」が決まりました。
次に、
「同じ宿に泊まっている方に、ゆうべ声をかけられました。『明日も行きますが、なかなかリクエストには答えてもらえませんね』『一体、何をリクエストされたんですか?』と伺うと、住吉駕籠(すみよしかご)だそうです。群馬からご夫妻で泊りがけでいらしていて、ありがたいです。住吉駕籠やりましょうか?」と文珍師匠が提案しました。
これに拍手が沸き起こって2本目が決まりました。
「では、もう一席は『憧れの養老院』にします」と文珍師匠が言うと、会場から「去年もやったよ」の声が。確かにそうなんです。
「では、何がいいですかね?」
会場から手が挙がります。「栴檀の森(せんだんのもり)!」
「あれ、あなた昨日も手を挙げて、そう言っていましたね」と文珍師匠。
皆さんすごいですね、連チャンなんですね。
「それでは、栴檀の森にしましょう」
これでようやく3席が決まりました。さあ、いよいよ演目の始まりです!
「延陽伯(えんようはく)」 桂文五郎
文珍師匠の4番目のお弟子さん文五郎さんの演目は「たらちね」でした。大家さんの紹介で妻にした女性が、あまりにも丁寧な言葉遣いで、四苦八苦するというお馴染の江戸落語です。
終演後発表されたタイトルが「延陽伯(えんようはく)」となっていて驚きました。あとで調べましたら、大阪では「延陽伯」という題で演じられるのだそうです。前座噺として頻繁に演じられる噺ですが、上方落語として聞くのは初めてで新鮮でした。
「住吉駕籠(すみよしかご)」 桂文珍
東京では「蜘蛛駕籠(くもかご)」という題で演じられますが、上方は「住吉駕籠」と呼ばれております。
元々は、上方落語で住吉大社が舞台です。お客がなかなかつかない駕籠屋が巻き起こす騒動を、面白おかしく語ります。すぐ目の前の茶店の主人に駕籠をすすめたり、酔っぱらいに声をかけてしまい、同じ話を何度もされて困ったりで、「うどんや」という噺と重なったりして楽しかったです。
「蜘蛛駕籠」は文治師匠のものが抜群に面白いですが、「住吉駕籠」はやはり文珍師匠ですね。
「権助魚(ごんすけざかな)」 三遊亭兼好
「前座の頃、楽屋仕事の合間に、舞台袖で師匠方の噺を聞いていると、戻って仕事をしなさいと先輩に叱られたものですが、文珍師匠の高座だけは、『皆さん勉強になるから聞いていなさい』と言ってくれたものです。そんな憧れの師匠にゲストとして呼んで頂き、本当にうれしくやる気が出ます」
と、なかなかいい話からマクラが始まります。
「やる気といえば、うちの師匠好楽(笑点でピンクの着物を着ています)がやる気をなくした話です。岩手での仕事でした。皆さん開演2時間前位には、並んでくださっていて、楽屋口がないところでしたので、皆さんを追い越して入るようになっていてまさに入り口に入ろうとした時でした。声をかけられたので、(後ろ姿でも気づいていただいたありがたい)と振り返りましたら、『皆並んでるんだ、勝手に割り込むな』って怒られたんです」
ここでどっと笑いがおきます。
「(あっ、ピンクの着物着てないからわからないんだ)と思い、かぶっていた帽子を取ったら『笑ってごまかすな』って、更に叱られました。すると受付の女性が飛んできて、『申し訳ございません、後に並んでください』って。とうとう出演者だってことに気づかれなかったんです。好楽師匠すっかりやる気をなくしてしまいました」
この様に二重三重に仕掛けて落とす、このあたりが兼好師匠の上手なところです。
「権助魚」はいつもとサゲを変えていました。同じ噺でも常に工夫されていて、兼好師匠からは目が離せません。
独演会は続くのですが、続きは「桂文珍大東京独演会(下)」でお伝え致します。
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