パリ9区、70代のひとり暮らし!恋人との時間もひとりの時間も味わい尽くす

更新日:2025年02月24日 公開日:2025年02月13日

パリ9区、70代のひとり暮らし!恋人との時間もひとりの時間も味わい尽くす

素敵に年齢を重ねながら、パリで前向きに暮らす女性たちを紹介する企画、2人目は35年連れ添った夫と別れ、ひとり暮らしを始めたミュリエルさん。新しい恋人もでき「落ち込むこともあるけれど、私は自分の人生が好き」と語ります。その理由は?

ミュリエル・Mさん(元アパレル会社経営)

話をお聞きしたのは…ミュリエル・Mさん(元アパレル会社経営)
パソコンがある書斎の窓からは、パリ市内を見渡すことができる

30年間のアパレル会社経営で成功を収め、不景気前に会社を売却。その多忙を極めた生活の後、識字教育のボランティア活動や孫の世話、旅行などで余暇を満喫している。72歳(2024年取材当時)

元夫と決めた住居は自分たちで居心地よく改装して

元夫と決めた住居は自分たちで居心地よく改装して
白を基調に、壁にはお気に入りの絵を飾って。
階段の先の中2階は、ソファを置き、ゆっくりくつろげるリビングとなっている

モンマルトルの丘のふもと、パリ9区。大通り沿いの扉をくぐると、外の喧騒が嘘のような、緑に囲まれた静かな空間が広がります。

ミュリエルさんがこのアパルトマンへ元夫と越してきたのは約20年前。子どもが独立し、郊外の庭付き一軒家は大き過ぎると感じるようになったからです。

「2月の暗い日、あまり期待せずに物件訪問に来たの。悪天候でも大窓のおかげで明るく、眺めはどこも最高。住人共有の庭もあり、住みたいと思ったの」
 

元夫と決めた住居は自分たちで居心地よく改装して
深い色のアンティーク家具をふんだんに用いた寝室は、ところどころに色を添えてクラシックになり過ぎないように工夫。本物と見まごう猫のクッションが遊び心いっぱいの空間です


かつてはピカソも居を構えていたといわれる建物で、現在もアーティストのアトリエが入っているそう。

「前の住人の画家は60年間ずっと工事をしていなかったから、状態はよくなかった。でも自分たちで直すつもりだったから気にならなかった。一年の改装工事をし、メザニン(中2階)をつけてリビングにしたわ」

つらいときも寄り添ってくれる友とのつながりを大切に

つらいときも寄り添ってくれる友とのつながりを大切に
お気に入りのリビング。「お行儀が悪いけど、ひとりのときはキッチンじゃなくて、リビングのソファまでトレーで運んできて、
テレビの前でのんびり食べるのが好きなのよ」と笑う

ミュリエルさんは建物内の人間関係も素晴らしいと言います。

「少したってから上階が空くことを知り、50年来の友人に連絡したら、引っ越してきてくれたの! 他の隣人も友達付き合いができる人ばかりで、その後に35年一緒にいた夫との離婚で精神的に参っていたときも、すぐ近くでみんなが寄り添ってくれてとても救われた。

年を重ねると、人とのつながりがますます恋しくなるけれど、ここなら大丈夫よ」

 

つらいときも寄り添ってくれる友とのつながりを大切に
リビングから下を覗くと、そこがダイニングキッチン。半分は吹き抜けで開放感のあるつくりになっている。カラフルなグラスは、セカンドハウスのあるベル・イル島のガラス工芸店でサンプル品をまとめて買い取らせてもらい、デコレーションに

現在は恋人もでき、毎日のように会ったり電話したり。でも、時にはひとりで映画館や展覧会に出掛けて自分だけの時間にどっぷり浸り、平穏な気持ちを忘れないようにしていると言います。
 

つらいときも寄り添ってくれる友とのつながりを大切に
「友人たちとおしゃべりしながら料理して、飲んで食べるイメージでキッチンを広めに設計したわ。 ​​​集いの場にしたかったの!」

 

つらいときも寄り添ってくれる友とのつながりを大切に
大窓からはサクレクール寺院が見える。夕暮れに染まる姿や夜景はとてもロマンチックだそう

 そして、時を経て元夫やその恋人とも新しい家族のような関係を築けているのだそうです。

「去年の冬に心臓発作を起こして、明日はどうなるかわからない年齢になってきたから、『今』の大切さを身に沁みて感じているの。

ひとりの時間も必要だし、だからこそ誰かとの時間も愛おしく思う。私も普通の人間だから落ち込むことだってもちろんあるけど、そんな日もあって当たり前。それも含めて私は自分の人生が好きよ」と微笑むミュリエルさん。

そのやさしい眼差しからは、悔いのない人生を送る姿が見てとれました。

最終回では、夫と死別・離婚などさまざまな悲しみや苦労を経て、今こそ青春を謳歌しているという2人の女性を紹介します。


取材・文=内田ちはる、撮影=滝浦哲、構成=原田浩二(ハルメク編集部)

※この記事は、雑誌「ハルメク」2024年6月号を再編集しています

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