人生の先輩に学ぶ、生き方と暮らし方の流儀2
樹木希林さんの“さりげない気遣い”の格好よさ
樹木希林さんの“さりげない気遣い”の格好よさ
公開日:2020年02月25日
着物を通して30年来のお付き合い(石田節子さん)

着物スタイリストの石田節子さん。「お正月を写そう♪」でおなじみのフジカラーのCMで、樹木希林さんの衣装を担当していたのが石田さんです。
樹木希林さんと出会ったのは私が35歳の頃。ドラマの衣装のスタイリングと着付けを担当したのをきっかけに、希林さんのきものを仕立て替えるお仕事をさせていただきました。
希林さん自身、きもの好きな上、きものをいただくことも多く、ご自宅には二竿では収まらないくらい大量のきものがありました。でも増え過ぎて、どうしていいか困っていらして。
それを「着てあげたいのよ。くださった方も喜ぶから、日の目に当てたいのよ」って。それで、毎日ご自宅に通って、着る物、人にあげる物、きものとしては使えない物、と一枚一枚、仕分けました。
希林さんには「捨てる」なんて考えはこれっぽっちもなくて、常に「どう生かすか」です。だから、やみくもにあげるのではなく、似合うきものだけをあげる。物の最後まで考える方でした。
たくさんあったきものが片づくまで、2年ほどかかったでしょうか。希林さんは、その後も、傷んで着られない物を洋服にリメイクしたり、パッチワークの布団カバーにしたりして、はぎれ一枚も捨てませんでした。
気付かれるような気遣いはダメよ
希林さんは厳しい面もありましたが、実際はとことん情に厚く、気遣いにあふれた方で、最期まで、周りの人の身の振り方を気にかけていました。でも、その気遣いが実にさりげないんです。よく「気を使われると、倍返さなきゃいけないじゃない」と言っていました。気付かれるような気遣いはダメよ、と。きものの生かし方一つ、いただく電話一つとっても、そんな希林さんらしさを感じました。
私はひとまわり年下ですが、生き方を近くで学ばせていただいたとつくづく思います。今、年を重ねて踏み迷うとき、希林さんの生き抜いた姿がいつもお手本になっています。ためこまず、潔く、さりげなく――。出会ったときから、希林さんはいつも格好よかった。本当に。
■語ってくれた人

石田節子(いしだ・せつこ)さん。きものスタイリスト。多くのCMや雑誌などでスタイリングや着付けを手掛ける。石田節子流着付け教室を主宰するほか、講演会などでも活動中。
取材・文=長倉志乃、田渕あゆみ(ともにハルメク編集部) 写真=中西裕人
※この記事は、雑誌「ハルメク」2019年2月号を再掲載しています。
※雑誌「ハルメク」は書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。




